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外来

患者さん・ご家族のために

脳梗塞に対する治療 ~すぐに治療できるかどうかが勝負の分かれ目~

急に手足が動かなくなった、しゃべれなくなった、顔の半分がゆがんでいる・・・そんな症状が認められたら、すぐ救急車を呼んで病院に来てください。
症状がすぐ良くなったとしても、脳梗塞の治療が必要な場合があります。

脳梗塞は脳の血管が詰まって起きる病気です。血管は脳細胞に酸素や栄養のもとになる血液を送っていますので、血管が詰まると脳細胞の機能が止まってしまい、時間が経つと死んでしまいます。こうなるといかなる治療をしても細胞は元には戻りません。
脳細胞が死ぬ前に、一分一秒でも早く病院で診断を受け、治療を行う必要があります。

症状が起きて4時間30分以内であれば、詰まっている血のかたまり(血栓)を溶かす薬(rt-PA; 組織プラスミノーゲンアクチベーター)が使用できます。しかし、この薬を用いても溶かせない血栓がある程度存在します。また、最近大きな手術をされたり、重篤な肝障害などがある場合はrt-PAを使うことができません。MRIや脳血管撮影などで太い血管が閉塞している場合には、脳血管内治療の出番になります。(CTやMRI検査で、すでに多くの脳細胞が死んでいると判断できる場合は、これらの治療は行うことができません。)
血管内治療では、金網に血栓を引っ掛けて取り除く方法と、大きめの管で吸引してしまう方法の一方を、あるいは組み合わせて血栓を取り除きます。血栓が回収でき、血管がもとの形になり、血液が流れるようになると、脳細胞のダメージを最小限にすることができます。意識が悪く、完全麻痺であった方が歩いて退院するといったことも決してまれではありません。

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右片麻痺、意識障害で救急搬送された方の脳血管撮影(左)で、左中大脳動脈が閉塞しています。吸引カテーテルを近づけ(中)、ステントで血栓を回収すると、完全再開通を認め(右)、患者さんの症状も改善しました。

治療後には集中治療室で少なくとも24時間の厳重な経過観察が必要です。当院は脳卒中に特化した集中治療室(ストロークケアユニット;SCU)を持っており、脳血管内治療の専門医が24時間365日対応可能です。
脳梗塞が残存してしまった場合、後遺症が残ってしまった場合には、リハビリテーションにより回復を促します。もちろんリハビリテーションにより症状が良くなることもありますが、まずはできるだけ早く病院で治療を受けることをしっかり覚えておきましょう。

また、人間ドックなどで「頚動脈が細い」と言われることがありますが、全く症状が出ていなかったとしても、一度脳神経外科など脳卒中の専門診療科への受診をお勧めします。頚動脈狭窄が徐々に進行すると、抗血栓薬などの内科的治療を行っても一定の確率で脳梗塞を起こす可能性があります。治療法としては、直接頚部ならびに頚動脈を切開し、狭窄している部分を摘出する「頚動脈内膜剥離術」と、血管の中から細い部分を金網で広げる「頚動脈ステント留置術」があります。それぞれに利点欠点がありますが、当院では脳卒中の外科指導医(2名)、脳血管内治療専門医(4名)が話し合うことで、患者さんに最も適した治療を行うことができます。これらの治療は今後の脳梗塞を予防するための手術ですので、患者さんは手術の効果と合併症を十分納得した上で治療を受けていただく必要がございます。
既に一度脳梗塞を起こした側に頚動脈の高度狭窄がある場合は、脳梗塞の予防効果が高いため上記の治療をお勧めしています。
他にも血流の足りていない脳に頭皮の血管をつないで脳の血流を増やす目的で「頭蓋外-頭蓋内血管バイパス術」(浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術)を行う場合がございます。

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一過性の麻痺症状を認めた頚動脈の高度狭窄(左)に対して、ステント留置術を行いました(中)。頚動脈は良好な拡張を得ています。合併症なく退院されました。

脳梗塞を予防するためには、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の改善が必須です。このため、降圧薬やスタチン(コレステロール降下薬)、糖尿病に対する薬は飲み続けて頂く必要がございます。また、動脈硬化による脳梗塞に対しては抗血小板薬、心臓の不整脈(多くは心房細動)によってできた血栓が脳血管に詰まってできた脳梗塞(脳塞栓といいます)に対しては抗凝固薬(ワルファリンやDOAC*)を内服していただきます。これ以外にも、禁煙の徹底や節酒などを入院中に指導しています。

脳梗塞が完成してしまってはもう手遅れです。普段から生活習慣の改善を心掛け、症状が出た時には救急車を呼んで、すぐにSCUなどの完備された病院に向かいましょう。

*DOAC: 直接経口抗凝固薬direct oral anticoagulantの略。以前はNOAC(novel/new oral anticoagulant)と呼ばれていた。非弁膜症性発作性心房細動に適応があり、脳梗塞発症を予防する。ワルファリンに比べて半減期が短く、重篤な出血を起こしにくい性質を持つ。

目次

  1. くも膜下出血 〜激しい頭痛はすぐ病院へ!〜
  2. 片側顔面痙攣 三叉神経痛
  3. 脳梗塞に対する治療~すぐに治療できるかどうかが勝負の分かれ目~