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外来

2015年10月 KBSラジオ すこやか健康相談「くも膜下出血と脳動脈瘤」

2015年10月に放送されました、KBS放送の森谷威夫様の番組「すこやか健康相談」でお話しした内容を掲載いたします。皆様のご参考になれば幸いです。

脳卒中センター長 滝 和郎

くも膜下出血と脳動脈瘤

くも膜下出血は生命にかかわる怖い病気だということはよく聞くのですが、脳の動脈瘤との関係はどうなっているのでしょう?

はい、簡単にご説明します。頭の中がどのような構造になっているか考えてみましょう。まず頭の皮膚の下に頭蓋骨があります。頭蓋骨の中に脳が収まっているのですが、頭蓋骨と脳との間に隙間があります。この隙間の頭蓋骨側全体に、骨に密着して、くも膜という、蜘蛛の巣のような膜があります。このくも膜と脳との隙間のことを、くも膜下腔といいます。このくも膜下腔に、何らかの原因で出血がおこりますと、くも膜下出血となります。くも膜下腔には、いろいろな血管がありますが、このうち動脈、動脈の壁の一部が弱くなって、こぶのように膨れ上がってきますと、動脈のこぶ、これを瘤といいますが、脳動脈瘤ができます。脳動脈瘤が次第に大きくなって、破裂しますと、出血がくも膜下腔にひろがって、くも膜下出血となります。

なるほど、脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血を起こすのですね。では脳動脈瘤がまだ破裂していなければどんな症状を起こすのでしょうか。

脳動脈瘤は、その大きさが、5mmを超えてきますと、破れやすくなってきますが、破れていないものは、mm単位の大きさですから、脳の大きさに比べると、たいへん小さいものです。通常、脳神経の症状はおこりません。未破裂では、ほとんどの場合、無症状です。ただ、まれには破れないで15mmや20mmなどの、大きさになるものもあります。大きくなった場合で、たまたま動脈瘤の周囲に、神経がある場合には、神経を圧迫して、症状が出ます。たとえば物が二重になって、ずれて見えるとか、視野が欠けるとか、目の奥に痛みを感じる、などで目に関する症状が多いです。

なるほど通常は周囲の神経を圧迫するほど、大きくならないうちに破裂するのですね。では破裂しないうちに、脳動脈瘤があるかないかどのように診断するのですか?

いくつかの診断方法がありますが、MRAで診断することが最も多いようです。まあ、頭のけが、外傷の際にMRIやMRAをおこなったら、偶然、脳動脈瘤が見つかったとか、などで診断されることもありますが、一般的な診断場所としては脳ドックでのMRAです。

では脳動脈瘤が破裂して、くも膜下出血になった時の症状はどんなものでしょう

くも膜下出血の、典型的な症状は、急におこる、激しい、強い頭痛、まあ、後ろ頭を殴られた、というような、表現がよくつかわれますが、強い頭痛です。また出血の程度がひどいと、脳の中の圧力が高くなって、意識を失ってしまうこともありますし、場合によっては呼吸が止まってしまうこともあります。このような場合には、ご本人はもちろん、周囲の方も、患者さんの症状に気がつかれますので、救急車を呼ばれ、すぐに入院ということになります。

急激な激しい頭痛が特徴とお聞きしましたが、いつもこのような症状なのでしょうか?

大変重要なご質問です。本日お伝えしておきたい、重要な点です。くも膜下出血がほんの少量の出血ですと、頭痛が軽い場合があります。痛みがあまり強くない場合、まあ、おさまるまでしばらく様子をみようか、とか、あるいは風邪かなと思って、放置する患者さんがいらっしゃいます。一度破裂した脳動脈瘤は再破裂する危険性がとても高いので、頭痛が軽いからと言って、放置しますと再破裂して生命にかかわります。それほど強い頭痛でなくても、今まで経験したことのない頭痛が、急におこって、持続するようであれば、脳卒中センターや脳神経外科を、必ず、また救急で構いませんので、受診してください。また家族の方が、急に、いままでに経験したことがないような頭痛を訴えておられたら、くも膜下出血を疑って、すぐに受診させてください。

どれぐらいの頻度で再破裂するのですか?

破裂した動脈瘤は再破裂することが多いのですが、その時期は、最初の破裂から2週間以内が多く、また6か月以内に50%が再破裂します。再破裂しますと大変症状が重くなり、50%が死亡します。また幸い命はとりとめても、多くは重度の後遺症がのこります。最初の出血を見逃さないで、すみやかに入院して、再破裂予防の治療をうけることが重要ですし、また未破裂のうちに診断をうけ、場合によって予防治療しておくことも大切です。

脳ドックで脳動脈瘤があるといわれました。どうすればいいのでしょう。

はやめに脳卒中センターや脳神経外科を受診してください。先ほどお話ししましたが、一度破裂した脳動脈瘤の再破裂は高頻度ですが、今まで破裂していない、未破裂の、脳動脈瘤の、破裂頻度はそれほど高くありません。5mm以下のものですと1年間の破裂率は0.5%程度です。大きさ以外にも、いくつかの破裂しやすい危険因子がありますので、専門医とご相談ください。ただ動脈瘤が小さいからといって、放置することは大変危険です。予防的な治療もよくおこなわれていますので、専門医での詳しい説明をうけて、ご家族ともよくご相談のうえ、最善と思われる方法を選択してください。