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令和3年8月28日(土)『心不全地域連携クリニカルカンファレンス』を開催しました。

2021/09/08 イベント 武田病院

急増する心不全の予後・QOLのさらなる改善に向け
心不全地域連携クリニカルカンファレンスを開催

急増する心不全疾患の対応を地域の医療機関が検討する「心不全地域連携クリニカルカンファレンス」が8月28日、WEB配信方式で開催されました(康生会武田病院、下京西部医師会、小野薬品工業株式会社、アストラゼネカ株式会社:共催)。

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 第一部は康生会武田病院循環器センターの立石周平医長が「心不全治療への取り組み」と題しオープニングレクチャーを行いました。
立石医長は、「ご承知の通り心不全は再発することで予後を悪化させます。症状改善だけでなく、いかに心不全を再発させないかが重要です」とし、この対応として康生会武田病院で2021年4月に心不全センターを開設し、チーム医療による包括的な心不全管理を行っていることを紹介しました。
また立石医長は、「予後の改善・QOL向上のためには、疾患の治療のみならず、患者さん自身のセルフケアの実践、心理的支援・社会的サポートが不可欠です」と強調し、とくに在宅療養の取り組みとして、ASVの在宅利用で心不全の悪化を防いでいること、地域との連携や社会的支援を患者サポートセンターが調整していることを説明。89歳女性の症例を挙げ、各職種の具体的な介入時期や内容について解説しました。
   



第二部は、康生会武田病院の木下法之循環器センター長・心不全センター長が座長となり、3名の医師が登壇しディスカッションを行いました。
 ふじた医院の藤田祝子院長は、「在宅での末期心不全の看取りの症例」と題し講演しました。藤田院長は、「心不全末期は急性増悪と改善を繰り返しながら徐々に悪化するため、救急対応で改善するのか、それとも最期を迎える時なのかの判断が困難です。切羽詰まった症状になり、病院での治療を希望されるケースが多く、在宅で看取るには、本人やご家族の強い希望があるなど、多くの条件を整える必要あります」とし、拡張型心筋症・慢性心房細動・心不全の82歳の女性の症例を紹介しました。
また藤田院長は在宅看取りで患者さんのQOLが向上する例について説明し、「この地域は在宅医療の資源が充実しているので、住み慣れた家に帰りたいという慢性心不全の方の希望があれば、在宅看取りは可能です。病院の先生方はご本人やご家族の背中を押してあげてください」と訴えかけました。

 梶山内科クリニックの梶山靜夫院長は「心不全を予防する為の糖尿病患者の心筋虚血の早期発見」と題し講演しました。梶山院長は冒頭、「糖尿病の方は狭心症になっても症状を感じない無症候性心筋虚血が多く、なかなか診断が難しい。しかも心筋梗塞になっても傷みがない無痛性心筋梗塞の方がかなりおられます。これをいかに早期発見するかが大きな課題です」と問題定義しました。
この対応として梶山院長は、「当院では頸動脈エコーを導入し、IMTの中等度以上の肥厚、そしてプラークの数に注目し、4個以上ある場合は病院に紹介し冠動脈エコーを受診していただいています。経験上、おおよそお8割は一致しており、この頸動脈エコーはかなり有用な武器になると考えています」と独自の基準を披露しました。
また梶山先生は具体的な症例として、胸部症状のない58歳男性(2型糖尿病・脂質異常症)の症例をあげ、「冠動脈CTを木下先生にお願いしたところ、左前下行枝に100%の狭窄(閉塞)が確認され、PCIでこれを0%に改善できました。糖尿病の罹病歴が長い方、血糖コントロールが不良な方など、ハイリスク症例については冠動脈CTを検討して欲しい」と語りました。

 高宮内科クリニックの高宮充孝院長は「循環器専門医からみた心不全診療の課題について」と題し講演しました。高宮院長は独居高齢者や老々介護など高齢夫婦では、難聴や認知機能の低下によって、症状や生活環境、食事内容などを把握することが難しいケースが多い」と問題点を指摘。誤解による意図的休薬や内服アドヒアランスの不良、血圧や体重測定の記録ができないなどの例を挙げながら「こうしたケースでは、一度悪くなると元の状態に戻るのがなかなか難しくなることが多いです。早期に入院し一度コントロール下に置き、コミュニケーションを改善していくと、結果、入院期間の短縮や入院によるADL低下を回避できるケースも少なくないと思います」と教育目的での入院の効果を強調。康生会武田病院の心不全センター開設を頼りに感じるとし、「我々開業医は、こうした意図で入院をお願いするケースも多くあると思いますので、間口を広く敷居を広く受け入れていただければ大変ありがたい」と期待を寄せました。

 座長の木下センター長はディスカッションの総括として、「梶山先生には糖尿病内科の専門医として、心不全予防にどのように介入されているかを教えていただきました、高宮先生は多くの循環器疾患を診ておられるなか、京都心不全ネットワークを活用されながら、再入院をできるだけ減らす取り組みについて教えていただきました。藤田先生は、末期の緩和ケアということでご苦労されている課題について教えて頂きました。末期対応にあたっては、『がんモデル』と異なり『心不全モデル』は難しい取り組みだと思います。これからも先生方と一緒に地域の心不全治療に対し貢献していきたいと思います」と語りました。

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06的場先生2.jpg 第三部は、木下センター長が引き続き座長を務め、京都府立医科大学大学院医学研究科の的場聖明教授(循環器内科学・腎臓内科学)が登壇し、「SGLT2阻害薬による心不全診療~フォシーガへの期待~」と題し特別講演を行いました。
 的場教授は、心不全治療はエジェクションフラクションに応じた対応になってきているとし、「HFrEFが40%以下の収縮力が低下した心不全に対しては最近、多くの薬剤が認可され、その効果が認められつつあります。中でもACE阻害薬やARBに代わる薬剤としてARNI、そしてSGLT2阻害薬が注目されています。心不全になった時は、最初に『βブロッカー』と『SGLT2阻害薬』、そして量を増やしていく『ARNI』、『MRA』を投与するように大きく変わってきており、この4剤から、ファンタスティックフォーと呼ばれています」と説明しました。
 続いて、左室駆出率の低下した心不全患者4744例(うち日本人集団343例)に対し、SGLT2阻害薬であるダパグリフロジン(フォシーガ)を投与した国際共同第Ⅲ相試験(DAPA-HF試験)を紹介。「心不全の標準治療にダパグリフロジンを上乗せ投与することで、糖尿病の有無に関わらず、ほぼ同等に標準評価項目を良くすることが示されました。QOLも有意に改善しています。これは日本人患者のサブグループ解析においても同様の効果が示され、ARNIの投与の有無に関わらず、心血管インシデントを改善させました。禁忌でない限りは、これを使った方が良いと考えています」と語りました。



07朴先生2.jpg 閉会挨拶で康生会武田病院心臓血管外科の朴昌禧副院長は、「今回、ご紹介頂いたフォシーガの試験は、期待できる結果だとあらためて感じました。もちろん心不全の治療は処方して終わりではありません。心臓の病態はもちろん、原因となる糖尿病・腎機能障害・貧血などに治療介入し、リハビリ、栄養指導、服薬指導が必要です。さらには認知機能の問題 睡眠障害の問題など多くの課題があり、様々な職種がそれぞれの思いを持ち、工夫して関わることでようやく実を結ぶ治療だと思います」と多施設・多職種での治療の重要性を強調しました。
そのうえで、「こうしたなか、当院では4月に心不全センターを立ち上げました。まだまだ緒に就いたばかりではありますが、心不全の患者さんの予後、そしてQOLをなんとかして改善していこうと努力しています。皆様のご協力なしには心不全の治療はままなりません。今後もお力添えをどうぞ宜しくお願いします」と締めくくりました。