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すこやか健康相談 宇治武田病院 院長 金 郁喆 「イリザロフ法による脚延長術」

2017/03/08 インフォメーション 武田病院グループ

※医師やスタッフの肩書き/氏名は放送時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。


イリザロフ法による脚延長術

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宇治武田病院 院長 金 郁喆



イリザロフ法による脚延長術とはどういう方法ですか?

従来の脚延長術は骨を切ってそこに骨盤や腓骨という自分の骨を移植して一期に足を伸ばしていました。しかし、一期に伸ばすと筋肉などの骨以外の組織が突っ張ってなかなか伸びません。また、無理に伸ばすと神経麻痺がおこりました。そのため、足の延長は約3cmが限界といわれてきました。イリザロフ法はロシアのイリザロフが始めた治療法で、骨を骨折させて、骨折を修復しようとする自己修復能を利用した延長法です。創外固定器という特殊な器具を用いて骨がひっつこうとするのをだましだまし伸ばしていく方法です。1日1mm程度伸ばすので、筋肉や神経、血管も問題なく延長できます。 3cm以上のばしても神経麻痺はおこりません。

どんな患者さんを治療していますか?

生まれつき足が短かったり、曲がったりしている子供さん、交通事故で片方の足が曲がったり、短くなったりした患者さん、骨の悪性腫瘍や骨髄炎で骨を切除した患者さん、神経麻痺で足が変形した患者さんを治療しています。片方の足が3cm以上短いと腰痛や股関節、足関節に障害がでてきます。3cm以上足の長さが違う患者さんは必ず治療が必要です。また、足の差がなくても140cm以下の低身長の方には両足を延長します。いままで最高で合計27cm延長したことがあります。

治療期間はどのくらいかかりますか?

延長量や変形量によってかわりますが、一般的には延長した期間の三倍ぐらいの時間を必要とします。 足を3cm伸ばすとしますと延長期間は30日ですが、いい骨になるまでまたなくてはなりません。その期間が約90日必要です。しかし、その間入院する必要はなく、手術後約1か月程度で退院し、それ以降は2週間に1回程度の通院で治療を継続します。創外固定器をつけていると何かと不自由ですが、体重をかけることができるので。通学や仕事をしながら治療を継続できます。

費用はどれくらいかかりますか?

健康保険が認められているので、特に高額医療となることはありません。創外固定器は患者さんが購入できないほど高額なので、機器を備えている施設で治療を行えば機器に関する特別な費用は必要ありません。

治療中の痛みはありませんか?

手術後数日は骨折による痛みはでますが、鎮痛剤で我慢できる程度です。手術翌日からリハビリを行い歩く練習を開始します。延長中も1日1mm延長ですが4回に分けて延長するので問題ありません。しかし、延長が3cm以上になると痛みがでることがありますが、そういう場合には2-3日延長を休めるとまた延長を再開できます。骨にピンがささっているので見た目はいたそうですが、本人は痛くありません。ピンが感染すると炎症をおこし痛むことがあるので、毎日シャワーと消毒を継続して、ピン周囲をいつも清潔に保ってもらいます。

イリザロフ法で何か合併症がおこることはありませんか?

脚長差や変形がもどることで患者さんに大変喜ばれますが、骨のでき具合には個人差があり、創外固定器を外す時期が問題です。早くはずして延長した骨の部分で骨折をおこしたり、変形したりすることがあります。また、感染しやすい体質の患者さんではピンのところで感染して骨髄炎になることもまれにあります。ピンの位置を変えたり抜去するとなおりますが、再手術が必要です。