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イベント 2024/03/23

令和6年2月8日(木)「心不全地域連携セミナー」を開催しました

心不全地域連携セミナーを開催
「ただの高血圧を先に進ませない!」

 「心不全地域連携セミナー」が2月8日に開催されました(康生会武田病院、下京西部医師会、ノバルティスファーマ株式会社、大塚製薬株式会社:共催/TKPガーデンシティ京都タワーホテル)。
セミナーは3部構成で、再び拡大している新型コロナウイルスの感染対策のため会場とオンラインによるハイブリッド形式で行われました。 

 冒頭挨拶で康生会武田病院の武田純院長は、オミクロン株以降のコロナウイルス感染症が心筋細胞に長く留まるとの理化学研究所の調査に触れながら、「虚血性あるいは糖尿病による代謝変化、微小循環変化、あるいは高血圧のような変化などのリスクが加わることで、感受性の高い方は急性発症して多くが亡くなったとの推論がなされています。
研究はまだまだこれからですが、このようなアップデートを日々重ねることが実臨床においても重要です」と説明。
続いて本セミナーの演題・演者を紹介しながら、「非常に示唆に富んだ内容と思います。是非ともこの機会に理解を深めていただければ」とセミナーの意義を強調しました。

   武田院長20240208.jpg

 セッション1では、東寺やまだクリニックの山田武彦院長が座長を務め、康生会武田病院の朴昌禧副院長・心臓血管外科部長が、「当院心臓血管外科における大動脈疾患への取り組み ―周術期合併症削減を目指してー」と題し講演しました。
 朴副院長は冒頭、胸部大動脈疾患の手術症例が増加傾向にあることをデータで示しながら、「その中でも大動脈解離は死亡率が高く緊急手術が必要です。病院着前死亡とあわせると、93%が24時間以内に死亡しています」と解説しました。
 大動脈解離の症状については「もの凄く多彩で共通項は『突然』ということです。胸部や背部、腹部、下肢の痛み、そして意識障害など。これらに隠れている大動脈解離を見逃すと、亡くなることにつながります」と説明。診断にあたっては、「特異度の一番高いマーカーはD-dimer(凝固マーカー)ですが時間がかかってしまいます。
この点、胸腹部造影CTを撮影すれば診断が容易です」と疑いがあれば造影CTをすることの重要性を強調しました。
また治療においては、臓器保護や出血制御のためオープンステント(FET)を導入していることを、術後の3D-CT画像を交えながら説明しました。

 質疑応答では、血管造影による腎臓への負荷について会場から尋ねられると、朴副院長は「メリット・デメリットを比較すると、造影するメリットの方が大きいと思います。
大動脈解離を診断するのではなく、大動脈解離をまず否定するという考え方で、当院では造影CTを行うことを推奨しています」と答えました。

  座長_山田武彦先生20240208.jpg     朴先生20240208.jpg

 セッション2では、康生会武田病院の木下法之循環器センター長・心不全センター長が座長を務め、埼玉医科大学総合医療センター心臓内科の重城健太郎教授が、「高血圧パンデミック2024」と題し講演しました。
重城教授は冒頭、様々なデータを披露しながら「血圧を下げることが心不全リスクを減らせる」ことを紹介。なかでも積極降圧群と標準治療群を比較した2021年のスプリントリサーチを挙げ、「心不全発症と心血管死が大幅に減少しており、主要評価項目で厳格降圧治療群が好ましいことを導きました」と説明しました。
さらに、介入終了後は、積極降圧群が標準治療群の2・3倍も心不全が増加しているとし、「可能な人には可能な限り長く積極的な降圧治療をすべきです」と語りました。

 続いて有用な薬物治療としてARNIを紹介。ARB(オルメサルタン)とARNIの24時間の平均収縮期血圧の比較データを示しながら、「とくに夜間もしっかりと血圧を下げられているので、将来のイベントリスクを減らすことにつながります」と説明しました。
 処方のタイミングについては、「ファンタスティック4と呼ばれる4種類のなかではARNIを最初に使うべき」とし、器質的疾患のないステージAからの処方を薦めながら、「キャッチコピーは『ただの高血圧を先に進ませない!』です」と、講演を締めくくりました。

 質疑応答で木下座長はARNIの有用性を振り返りつつ、ARBをARNIに変えるタイミングについて尋ねると、重城教授は「初手はカルシウム拮抗薬の長期間作用型で良いと思います。2手目はARBが多いと思いますが、そこでARNIを使うのが今の立ち位置ではベストと思っています。大事なことはまず血圧を下げること、そしてそれをずっと続けることです」と笑顔で答えました。

   木下先生20240208.jpg     重城健太郎先生20240208.jpg