05. 本当にその薬必要ですか?
―アスピリンの話―

アスピリンとは?

脳梗塞の再発防止薬として 血液がサラサラになる薬には大きく分けて2種類(抗血小板剤、抗凝固剤)あるのですが、抗血小板剤の代表がアスピリンです。アスピリンを主成分とする頭痛薬がドラッグストアなどで市販されているため、ご存知の方も多いかもしれません。アスピリンは、頭痛薬の3分の1くらいの量で、動脈側に原因がある脳梗塞の再発予防薬としても広く使われています。

脳梗塞予防薬としてのアスピリン

安価で古くからあり血がサラサラになるというイメージからでしょうか、無症状であるにもかかわらず、脳血管が狭くなっている方や脳梗塞の危険因子(糖尿病や高血圧など)を持つ方、無症状の高齢者にまで投薬されることがありました。

アスピリンに関する最近の研究結果

最近の大規模調査では、これまで脳梗塞や脳虚血発作を起こしたことがない方がアスピリンを服用しても、脳内出血や体の出血性疾患が増え、有効性が証明できませんでした。すなわち、これまで脳梗塞が生じたことがない方にとって、アスピリンの脳梗塞一次予防効果はないのです。

アスピリンの脳梗塞再発予防効果

脳梗塞や脳虚血発作(半身まひなど)を起こした方ではどうでしょうか。最近の調査では、脳梗塞を起こした急性期(90日以内)は抗血小板剤2剤(アスピリンとクロピドグレル)を併用し、慢性期には、アスピリン単剤を服薬するというのがよいということがわかっています。

アスピリンについてまとめると…

①これまで脳梗塞を起こしたことがない方は、服用するメリットがありません。
②脳梗塞や脳虚血発作が起きた方は、最初の3か月間は2剤の抗血小板剤を服薬し、3ヶ月を過ぎた後は、単剤(アスピリン)を服薬することが推奨されています。

 

【参考文献】
JAMA . 2014;312:2510-2520
N Engl J Med. 2018;379:1509-1518
N Engl J Med. 2018;379:215-225

 

脳神経外科 川西 昌浩

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