08. めまいに対する自主訓練―たてたてよこよこまるかいてちょん―

外来診療で『めまい』や『ふらふらする感じ』という症状は、非常に多い訴えのひとつです。その原因は、血圧の薬が効きすぎている場合や時に小脳などに脳梗塞などが生じていることもありますが、MRI検査などをしても異常が見つからないことも多く、こういった場合はめまいに関係する神経の調子が悪いことがほとんどです。このように、検査をしたものの異常が見つからない場合のめまいに対する訓練についてお話します。

めまいが起きる原因とは?

フィギュアスケートの選手の素晴らしい回転演技を見て、よく目が回らないものだと思ったことはありませんか。たとえば遊園地でコーヒーカップに乗るなど、回転する椅子に座って彼らの回転のまねをすると、激しいめまいが起こります。そもそも我々の耳は音を聞くということ以外に、体の動きを感知して脳に伝え、それを目に伝えてぶれを補正するということを行なっています。激しく回転するなどしてこの『ぶれ補正機能』を超えた動きをすると、目がついていけなくなり、我々はめまいを感じます。フィギュアスケートの選手は、子どもの頃から来る日も来る日も訓練を続けて、このぶれ補正機能を鍛えてあげているのです。

めまいが起こりやすい人とは?

めまいがよく起きる人は、何らかの原因(不明のことが多いですが)で、このぶれ補正機能の調子が悪くなっていると言えます。ただ、このぶれ補正機能は、自分で訓練によって元に戻すことが可能です。

めまいに対する自主訓練とは?

最初は、椅子などに座ってテレビや壁にかけた絵、カレンダーなど何か一点を見つめたまま、いやいやをするように首を横に振ります。次に首を上下にうなずくように動かします。次に、頭や首の動きは止めて、自分の手の親指を目の前に掲げ指を見つめながら、上下左右に動かすのです。どの練習でも、見つめているものから目をそらさないことが大切です。『たてたてよこよこまるかいてちょん』という遊びがありますが、この言葉の通り自分の眼球を縦方向、横方向に動かすことが大切です。

練習は、裏切らない

一流のアスリートなどが『練習は、裏切らない』とよく引用しますが、めまいの自主訓練にも同じことが言えます。年齢とともに、めまいの神経(ぶれ補正機能)も弱っていきますので、健康な方でも普段からの訓練は大切です。
私の父は戦前、航空兵として様々な訓練を受けたのですが、その中に、人が一人立ったまま入ることができるくらいの鉄籠状の大玉の中で手足をくくりつけられ、その球を坂の上から転がすという訓練があったそうです。最初はもちろん激しいめまいが起きて一日何にも食べられないくらいになったようですが、慣れてくるとめまいが起きなくなり、仲間とレースを楽しんだとか。
現代ではここまでする必要はもちろんありませんが(笑)、たてたてよこよこまるかいてちょんは、ぜひ行なっていただきたいものです。

 

脳神経外科 川西 昌浩

 

 

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