「CHF 地域医療連携Symposium」が2026年6月25日、下京区の京都テルサで開催されました(京都循環器医会、下京西部医師会、康生会武田病院、アストラゼネカ株式会社:共催)。セミナーは3つのセッションで構成。オンラインと会場によるハイブリッド方式で行われ、演者と参加者が闊達な意見交換を行いました。
開会にあたり十条武田リハビリテーション病院循環器センター・循環器内科の高橋衛センター長は、KCHF(Kyoto Congestive Heart Failure)レジストリーのデータを紹介しながら、「病院だけで診ている人は『再入院が多く』、病院と診療所で協力して診ている人の方が『再入院が少ない』との結果です。やはり診療所は、病院よりもっと細かいスパンで患者さんを診ていくことができるので、悪化を早く発見でき、早く手を打つことができるのでしょう。このデータは、病診連携の方が上手くいくことの現れなのかもしれません」と説明しました。

続いて本日の講演について、「ご苦労されたことを是非とも聞いてみたいです。また、参加の皆さん方も積極的に御発言いただければ幸いです」と呼びかけました。
セッション1は関医院の關透院長が座長を務め、康生会武田病院看護部の荒木有紀副看護師長(慢性心不全看護認定看護師)が「心不全手帳を活用した病棟と外来の院内連携」と題し講演しました。


荒木副看護師長は、心不全カンファレンスや心不全ワーキング会議、院内勉強会など活動に加えて入院中だけではなく外来でも療養指導を実施し院内連携を行っていると説明。とくに心不全手帳による管理の効果を取り上げ、「心不全手帳を継続されない方の再入院率は35.1%で継続されている方は16.1%です」と、再入院予防の効果を強調しました。さらに、「療養指導回数を重ねるほど心不全手帳の継続率が上昇し、再入院予防につながると考えます」と同院のデータを紹介しました。
一方、今後の課題としては、「ただ記録するだけになり、症状の認識や増悪へのメンテナンスにつながっていない患者さんもおられます。高齢で認知機能が低下していたり、独居でサポート体制が不足している方や経済的な要因で体重計や血圧計を購入できない方もおられるので、いかにフォローしていくかが重要です」と体制強化への思いを語りました。
セッション2も引き続き關院長が座長を務め、康生会武田病院薬剤部の糸島恵薬局長代理が「当院における心不全薬薬連携の現状と課題」と題し講演しました。

糸島薬局長代理は薬局の活動として、まず『HFrEFチェックシート』を入院中に活用していることを説明し、そのうえで退院後の対応について「保険薬局薬剤師と病院薬剤師による『薬薬連携』の一環として、当院オリジナルの『心不全フォローアップシート』を活用しています。3年3ヵ月間で79名(490枚)の退院患者さんをフォローしており、中には患者さんお一人で95回対応した症例もあります。これまで退院後の患者さんの経過を確認することはなかなか出来ませんでしたが、今は保険薬局と一緒にフォローする体制が構築できてきており、実際、緊急性の高いケースでは、保険薬局から直接、電話をいただけるようになりました」と連携体制の向上を強調しました。
講演の締めくくりに糸島薬局長代理は、「心不全治療には様々な職種が関わっており、我々は病院薬剤師として保険薬局の薬剤師と情報を共有し、切れ目のない医療の提供をめざします」と語りました。
セッション3は康生会武田病院循環器センター・心不全センターの木下法之センター長が座長を務め、スペシャルレクチャーとして、小倉記念病院循環器内科の磯谷彰宏部長が登壇。「心不全診療における多職種連携 情熱とシステム化と挑戦と継続と」と題し講演しました。


磯谷部長は、同院で心不全チームを立ち上げ、正式に院内組織に昇格するまでの10年間にわたる経緯と努力を説明。なかでも心不全回診について、「万難を排して必ず行くことを重視しました。緊急カテの要請が入ることもあるのですが、この回診は私にしかできませんが緊急カテは40数人いる医師の誰でも出来るものと考えて断りました。まず看護師に信頼を頂くことから取り組みを始めたのです」と、信頼から体制を築くことの重要性を説明しました。
また磯谷部長は、PICC挿入をカテ室で行っていることや、急性期管理を担う新体制としてACVC(Acute Cardio Vascular Care)チームの立ち上げ、ワーキンググループによる院内ツールの作成、そして看護師による心不全外来の実施など、同院での代表的な取り組みを丁寧に紹介。「これらは私たちの病院で困っていることの解決を目指した結果として現在の形になっています。取り組みを進めるうえで、私自身は『〇〇すべき』という発想が嫌いなので、『こうした方が楽になる』『こうした方がこんな良いことがある』など、できるだけポジティブな発想でのシステムづくりを心がけてきました」と笑顔で語ると、万雷の拍手が会場を包みました。
質疑応答で磯谷部長は、「抵抗する医師に対し、どのような対応をされたのか」との会場からの質問に対し、「わざわざ、その先生の近くでワイワイとカンファレンスを行いました。興味を持っていただけるように仕向けるのですね。気の長い活動になることもありますが、そうしていると『ちょっといいですか?』とその先生から話を聞いてくれるようになります。私はこれを『天岩戸作戦』と呼んでいます」と会場の笑いを誘い、ケース別の多様なテクニックを披露しました。
会場からは感心する声とともに、次々と質問が飛び交うなど、熱気を帯びたディスカッションタイムとなりました。