処方のガイドラインや新たなデバイスを用いた症例など幅広いテーマで意見交換を行う「循環器領域 地域連携セミナー」が2026年5月28日、下京区のTKPガーデンシティ京都タワーホテルで開催されました(康生会武田病院、下京西部医師会、ノバルティスファーマ株式会社、大塚製薬株式会社:共催)。セミナーは2部構成で、いずれも高宮内科クリニックの高宮充孝院長が座長を務め、闊達(かったつ)なディスカッションが行われました。

LectureⅠでは、康生会武田病院循環器センターの瀧上雅雄医長が登壇し「両側の散在性石灰化病変に対し様々なアプローチ、デバイス、技法を駆使して治療を行った1例」と題し講演しました。
瀧上医長は、まず両側の大腿動脈の石灰化病変に対し、橈骨動脈からアプローチして拡張する『R2P』を紹介。続いてシビアな石灰化病変の症例を紹介し、「バルーンで拡張したのですが高度石灰化のため拡張不良でありました。ここで『フラッキングテクニック』を行いました。これは元来、石油や天然ガス等を採掘する際、岩を水圧で砕く手法で、この原理で応用し血管内の石灰化を砕く治療法です。通常のバルーンの開存率が1年で74%、これに対しフラッキングテクニックは94%。3年後も88%と成績が良く、注目されている手法です」と解説しました。
質疑応答では、フラッキングテクニックについて、『血管の壁を破る危険性』や『エンドアテレクトミーの選択』などの質問がなされ、これに対し瀧上医長は「当院の第1選択はエンドアテレクトミーであり、実際に提案したのですが患者さんが低侵襲治療を希望されました。フラッキングテクニックの特徴として、ある程度出血することがありますので、あらかじめバルーンを広げた上で行うと、破片が壁となり止血されるので、大きな出血をすることなく安全に治療できます」と丁寧に説明しました。
LectureⅡでは、同院の木下法之循環器センター長・心不全センター長が登壇し、「心不全診療ガイドラインに沿った心不全予防と地域連携」と題し講演しました。
木下センター長は冒頭、心不全に関わる多様な疫学情報を紹介。降圧剤の処方率の地域差について取り上げ、「京都は女性が最下位の47位、男性は42位と驚くべきデータとなっています。京都は医師数が非常に多いと言われているにも関わらず、降圧剤の処方率が低い。発症率が京都だけ低いわけではないと思いますので、やはり、治療がまだまだ不十分な方がいらっしゃるのではないかと思います」と考えを語りました。
続いて単剤での使用のガイドラインについて、「G1の段階として、やはりCa拮抗薬、ARB/ACE阻害剤、サイアザイド系利尿剤、β遮断薬がファーストラインになります。それでも効かない方がG2という次の段階になり、ここでARNIの処方が出てまいります。やはり降圧剤でしっかりと治療することが、ひいては心不全のステージA、ステージBの治療につながると思います」とし説明しました。
また木下センター長は、「BNPかNT-proBNPの数値をご覧になり、『ちょっと上がっているけど大丈夫』と思われる開業医の先生も多いと思うのですが、そうした方の中に心疾患が隠れている可能性があります。例えば心電図、心エコー等を行っていただくことも良いですし、循環器内科に御紹介いただくのがガイドラインでも推奨されています。一度、チェックさせていただくのが大切ではないかと思います」と会場に連携を呼びかけました。

質疑応答では、「今のガイドラインではフルドーズがトレンドとなっていますが、無症候で血圧がコントロールできているケースでは非常に迷います」との声に対し木下センター長は、「例えば高血圧の方でARBをARNIに変えることはしています。例えば、症状もなく心肥大だけというような方もいらっしゃいますが、そこからステージCに移行するリスクもあります。そうした心不全薬をあらかじめ考えていくことが大切であると思っています」と考えを語りました。
