お知らせ

「2025 武田脳卒中 市民公開講座」を開催しました

康生会武田病院と十条武田リハビリテーション病院は20251019日、「2025 武田脳卒中 市民公開講座」を京都市下京区のしんらん交流館で開催しました。同講座は、脳卒中医療の向上および市民啓発を目的とした企画で、医師・看護師・薬剤師・セラピスト・管理栄養士・ソーシャルワーカーなど多様な職種が、脳卒中の治療や予防、在宅復帰の取り組みを分かりやすく解説するものです。集まった多くの参加者は講演に熱心に耳を傾け、次々と演者に質問するなど、白熱した内容となりました。

 

開会挨拶で康生会武田病院の滝和郎脳卒中センター長は、「脳卒中は急性期での治療が非常に重要です。当院は24時間体制でtPA治療・血栓回収治療が可能なPSC(一次脳卒中センター)コア施設に認定されており、万が一発症された場合はすぐに治療させていただきたい」と、専門施設による急性期治療の重要性を強調しました。

続いて、「脳卒中は1年間で15%ぐらいの方、5年で30%ぐらいの方が再発すると言われ、予防が非常に大切です。患者さんやご家族への相談窓口や患者会、脳卒中連携主治医の会や看護連携、緩和ケア、薬剤師連携など、多くの計画や取り組みが進んでおり、本日はこれらを網羅した講演内容となっております」と来場者にコンセプトを紹介しました。

 

講演1は、やまな脳神経クリニックの山名則和院長が座長を務め、康生会武田病院脳神経外科の定政信猛部長が「脳卒中の最新治療」と題し講演しました。

 定政部長は、外科治療から血管内治療が主流となってきている状況を説明。とくに巨大脳動脈瘤を取り上げ、「2年生存率が20%と治療が難しい病気です。コイル塞栓術での治療は再発も多く、血流を止めバイパスをつくる大変な手術(Trap&bypass)が必要だったのですが、フローダイバーターという新しい血管内治療が登場しました。これはステントの網目が非常に細かく、動脈瘤に流れる血流を遅くし、徐々に血栓化してしまう治療法で、動脈瘤に触れないのが大きな特徴です」とし、実際にフローダイバーターを血管内に留置し、半年後に動脈瘤が消えている様子を症例画像で解説しました。

 また定政部長は、「当院は今年の10月からSCU(脳卒中ケアユニット)を従来の6床から9床に拡大し、より多くの患者さんに対応できるようになりました。とくに再発が多い疾患ですので、回復期での治療が終わってからも、脳卒中に精通した医療機関を日頃から受診することが重要です」と会場に呼びかけました。

 講演2は、引き続き山名院長が座長を務め、康生会武田病院脳神経内科の仲嶋勝喜副部長が「脳血管障害と認知症」と題し講演しました。

 仲嶋副部長は、「発症してからの治療は困難なので予防が大切です」と、発症の危険因子を列挙。とりわけ高血圧について、「症状はほとんどありませんが、血圧が上がるにつれ動脈の壁は厚みと強度が増すので狭くなり、血液の流れを遅くしたり止めたりする恐れがあります」と脳卒中に加え、心臓発作や心不全のリスクがあることを強調し、食事や睡眠など生活面でのアドバイスをしました。

 質疑応答では、「脳卒中後、失語症・半身麻痺になり、本人が自身の状況を理解できているので悲観的になっている」との声に対し仲嶋副部長は、「こうした状況になることがあります。本人が状況を受け入れると前向きな気持ちになったりするのですが、どうしても時間がかかります」と、哲学的な考え方も含んだ希望を持てるサジェスチョンを親身になって示しました。

講演3は、青木医院の青木淳院長が座長を務め、十条武田リハビリテーション病院の久保洋昭副院長が「脳卒中後のリハビリテーション ~あなたは家に帰れるか~」と題し講演しました。

 久保副院長は、「回復期リハビリテーション病棟は100床(可動97床)で、理学療法士30名、作業療法士27名、言語聴覚士10名であたっています。在宅復帰率は92.2%で、基準が70%ですから高いものと思っています。一定の期間内にどれだけ良くなったかという実績指数は、基準40のところ47.7でクリアしています」と同院の体制・実績を紹介しました。

また久保副院長は、「自宅外退院となった要因として、認知機能の低下で失禁しているより、トイレに乗り移れていないことの方が多い」とし、同院での52の退院例では、移乗が難しい重度介助のケースは自宅退院では42例中3例のみであったのに対し、自宅外退院では10例中8例にものぼったと説明しました。そこで重要となる『訓練の効果』について、「『意欲が低く訓練に参加がみられない』と介助量が多いままに留まりました。認知症でも自発的に動く人はいるので、認知機能とは別問題なのです。意欲があれば訓練を行い介助量が減るので、帰りたいと思える人は『ほぼ』帰れるのです」と力強く語りました。

講演4は、十条武田リハビリテーション病院の久保洋昭副院長が座長を務め、康生会武田病院の竹上恵里香作業療法士が「脳卒中になったその日から始まるリハビリ」と題し講演しました。

竹上作業療法士は、とくに急性期リハビリテーションについて、「一般に治療開始から10日~1ヵ月程度の期間をさし、当院では入院当日や手術翌日から行っています。発症後1ヵ月~3ヵ月頃まで改善が見られるためリハビリは1日でも早く、遅くとも3日以内に始めることが大切です。より症状の回復を実感できるため、リハビリへのモチベーション向上にもつながります」と早期リハビリの重要性を元気に解説しました。

講演5は、康生会武田病院脳神経外科の定政信猛部長が座長を務め、同院看護部の小原史也看護師長が「脳卒中意思決定支援 ~あなたの意思を支えます~」と題し講演しました。

小原師長は、「脳卒中は急に発症し、どんな人でも急に重篤化する可能性があります。そうなると意思が伝えられなくなってしまいます。検査や治療の大まかな流れはあるのですが、そこで医療者がチームとして関わる際、『どうしたいか』という患者さんの意思決定があるかどうかで、サポートが全く異なるものになってきます。ご家族がおられる方はご家族との対話、身寄りのない方はかかりつけの医療機関での会話などで、親しい人や信頼できる人に意思を発信しているかが重要です。そうした一言が、治療方針や今後の生活の場所をどうしていくかの判断につながります。『もしもを話せるのは元気な今だけかもしれない』と考えることが重要です」と訴えました。

講演6は、康生会武田病院患者サポートセンターの大島恭子副センター長が座長を務め、同センターの松田依都社会福祉士が「医療ソーシャルワーカーってなに? ~脳卒中患者・家族の生活と医療をつなぐ~」と題し講演しました。

松田社会福祉士は冒頭、「『医療ソーシャルワーカー(MSW)って?』とMSWの役割について取り上げ、医療機関の中にいる福祉の専門職であることを強調。退院支援や社会復帰援助など様々な役割について紹介しました。また、急性期病院への入院時や退院時、回復期リハビリテーション病院への面談・相談が実際にどのようなものかを動画を使って分かりやすく紹介しました。また松田社会福祉士は、「制度の説明や情報提供だけではなく、『生き辛さを少しでも無くす方法を一緒に考えていくこと』が私たち退院支援職員の相談支援です。当院は各病棟にMSWと退院支援看護師、外来にもMSWを配置しています。入院時に限らず、外来でも病後の生活やお仕事のことなど何でもお気軽にお声がけいただければ幸いです」と会場に呼びかけました。

講演7は、十条武田リハビリテーション病院栄養科の森田秀之係長が座長を務め、康生会武田病院栄養科の山本遥香副主任が「できることから始めませんか? 無理なく続ける中性脂肪・コレステロール対策」と題し講演しました。

山本副主任は、冒頭、中性脂肪、コレステロール、それぞれの働きについて説明し、「余分なコレステロールを肝臓に運ぶのがLDLコレステロール。肝臓からコレステロールを全身に運ぶのがHDLコレステロール。この両者のバランスが大切です」と語りました。

次に山本副主任は、『どういった食事内容が良いのか』というクイズを会場に投げかけると、参加者は、選択肢ごとに元気に手を挙げたり、悩んだ末に控えめに手を挙げるなど、一喜一憂しながら解答・解説を楽しみました。

山本副主任は、「習慣の改善は大変なことですが、すぐに結果は出なくても日々の積み重ねが大切です。気になることがありましたら『食事の話が聞きたい』とスタッフにお声がけいただければ」と優しく語りました。

講演8は、康生会武田病院薬局の林千麗薬局長が座長を務め、同薬局の紺谷智子副主任が「再発しないために! お薬の飲み方のコツ」と題し講演しました。

紺谷副主任は、「脳卒中の再発予防薬は大きく分けてニ種類あり、一つは血液をサラサラにして血栓を作らないようにするお薬(抗血小板薬・抗凝固薬)、もう一つは脳卒中再発のリスクとなる危険因子を管理するお薬(降圧薬・脂質異常治療薬・糖尿病治療薬など)です」と薬の種類を紹介し、それぞれ具体例を示し注意点も交えながら分かりやすく解説しました。

その後はタイトルとなっている『お薬の飲み方のコツ』について、「うっかり飲み忘れてしまうケースでは携帯電話等のアラーム機能を使ったり、どれを飲むか分からなくなる場合は、一包化しカレンダーにセッティングして飲んでいけば良いです」と、身近な道具を使う例や専用道具を活用する例など多彩なテクニックを披露しました。

閉会挨拶で滝センター長は、「長時間、ご静聴いただきありがとうございます。今日は脳卒中の急性期、回復期、生活期に至る治療とリハビリ、生活習慣、医療保険や介護保険など全般について最新情報をご提供できたと思います。この講演が皆さんのご参考になれば幸いです」と語り、「これから寒くなりますが、脳卒中にならないよう取り組んで下さい」と会場に呼びかけ講演を締めくくりました。

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