20.こむら返りに 便秘薬(酸化マグネシウム)は効く? 効かない? ―足がつる―

■体験談

夜中や明け方に突然おそってくる例の足の激痛、こむら返りのお話しです。私が子供の頃、冬の夜、祖母がよく足をつって苦しみだすことがありました。熱いお湯をいれたバケツに浸したタオルで、つった足を温めて筋肉を引っ張ると著効(※)したのを覚えています。私自身も学生時代から睡眠不足後に激しいスポーツをすると必ずつり、応急処置にこの蒸しタオルを使っていました。
※よく効くこと

■速攻で効く方法は?

今も、もちろん蒸しタオルは有効ですが、よく起こる人は、医療機関から漢方薬『68番、芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)』を処方してもらうのがよいです。攣ったらこれを 口に含み(できれば一口分のお水と一緒に)、飲まずに、口の中でぶくぶくします。良薬口に苦し(実はまずく甘い)ですが、舌下吸収・口腔粘膜吸収され“秒殺”で効くはずです。そのまま飲んでもらっても構いません。

■副作用に注意!

このように激痛がおこった時は、“シャクヤクカンゾウトウぶくぶく”一択なのですが、なかには再発の恐怖から予防的に毎日飲む方がおられます。ただ甘草を含む漢方薬を大量に常用すると、ナトリウムがたまって血圧が上がったり、カリウムが下がりすぎて力が抜けたり意識が悪くなったりする副作用(偽アルドステロン症)がおこる事がありますので、充分な注意が必要です。

■こむら返りはなぜ起こる?

そもそも、こむら返りはどうしておこるのか、完全にはわかっていません。様々な原因が合わさっているのですが、その一つに“マグネシウムの不足”ということがいわれています。

■酸化マグネシウムは効くのか?

前置きが長くなりましたが、マグネシウムといえば、あの便秘薬で有名な酸化マグネシウム(カマグ、カマ、マグミット)を連想するかもしれませんね。酸化マグネシウムは昔からある古典的な薬で大きな副作用もありません。ならば、こむら返りで苦しむ患者さんに『予防的』に投与したらいいのではないか、という考えが浮かびます。20年以上前から“酸化マグネシウムのこむら返りの効果”を調べる研究が行われているのですが、妊婦さん以外の健常成人で有効性が証明された研究はありませんでした。なかでも2017年にイスラエルで行われた偽薬との二重盲検で『偽薬を上回る効果なし』として発表され(文献JAMA)、『なーんだ、プラセーボ(偽薬)効果やったのか』となりました。ただしこの調査は研究に参加した半数近くの人が途中で調査をやめていたり、4週間と比較的短期間での調査であったたため、2021年にウクライナ(文献Nutr J)でもう一度調査が行われました。これは60日間服薬し調査したものですが、結果は1週間当たりのこむら返りの頻度を偽薬の半分位に抑えることができるというもので、はじめて酸化マグネシウムの効果が証明されました。

■どれくらいの酸化マグネシウムを飲めばよいか

この調査で服薬した酸化マグネシウムは226mgですので、一般の便秘薬(マグミット330mgなど)の2/3くらいの量で、60日間の服薬期間です。
夜中に足がつってしょうがないという人で、便秘ぎみの方、酸化マグネシウムを飲み続けても下痢しない方は、予防的に飲むと頻度を減らすことができます。
それでもおこってしまったら、ブクブクですね。

文献
JAMA Inter Med 2017;177:617-23
Nutr J 2021 20:90

脳神経外科 川西 昌浩