脳卒中・認知症予防外来
概要
当外来では、以下に示すような「脳卒中・認知症の発症予防」に関する外来指導と、その危険因子の治療を行います。
外来診療表
脳卒中とは
脳卒中は脳血管が詰まって出現する脳梗塞と、脳血管が破れて起こる脳出血およびくも膜下出血に分かれます。
脳出血は、脳内の穿通枝の破綻による脳実質内出血、くも膜下出血は動脈瘤の破裂により出現します。
脳梗塞は、心臓や径の大きな動脈硬化病巣からの血栓が飛来して脳血管を閉塞する脳塞栓症、主として脳血管が動脈硬化を基盤として血栓が形成され閉塞してしまう血栓症、穿通枝が閉塞して起こる小梗塞として出現します。
その他、脳動脈解離や凝固異常などの機序で生じる脳血管障害もあります。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の比率は、大まかに70対20対10%の比率で出現します。脳出血の70~80%はいわゆる高血圧性脳出血であり男性に多く、一方、くも膜下出血はその70~80%は破裂動脈瘤により出現し女性に多く出現します。
脳梗塞は、全体の70~80%は高血圧・糖尿病・高脂血症・飲酒・喫煙などのリスクを有する成人発症型であり、そのうち40%はラクナ、30%は血栓性、20%は塞栓性脳梗塞で、その他が10%を占めます。
塞栓性脳梗塞の代表である心房細動による心原性脳塞栓は、高齢者に多く、不整脈(心房細動)による心臓内の壁在血栓が脳に飛んで起こります。大梗塞になりやすく、片麻痺や失語症を好発するので、不整脈治療と血栓形成を予防するための投薬が必要です。
アテローム血栓性梗塞は、30~40歳代から出現します。多リスク(高血圧症・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙・過度の飲酒・ストレス)では、より若年から発症します。小梗塞は高血圧性小血管病を機序とするラクナ梗塞や、アテローム硬化や糖尿病をリスクとする分枝アテローム病、多発脳塞栓やアミロイド血管症を機序とする微小梗塞に分けて診断することが、特に再発予防の治療法選択の上で重要です。
認知症とは
認知症全般に対しては、中年期の生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満)が重要です。生活習慣病は予防・介入可能で、これらのアルツハイマー病(以下AD)発症への寄与率は50%を超えるとされ、すでに欧米では中年期の生活習慣病対策が功を奏し、AD・血管性認知症が確実に減少し始めています。
ADの危険因子は加齢や遺伝・分子生物学的要因(アミロイドβ、タウ、アポリポ蛋白E4など)です。一方、高齢者では虚弱・フレイルや低体重(低筋肉量:サルコペニア)が発症リスクとなりやすく、今後は高齢者の虚弱予防が大切です。実際、運動習慣・地中海式食事、日常・社会活動、デイケア導入が認知症の予防治療に有用とする報告が増えているので、今後その初期診断後の介入研究・予防実践が必要です。
なお、中年と高齢者では認知症の危険因子が異なります。中年では生活習慣病対策、高齢では虚弱・生活習慣(ライフスタイル)対策が必要です。
では、どの様に認知症を診療し、食い止めるか。以下にまとめを示します。
生活習慣(病)対策
- 動く・交わる・頭を使う。
食事酒対策・たばこはだめ。 - 虚弱(フレイル)対策=筋・骨・内臓を強化する。
若いときは肥満防止、高齢ではやせ防止。
筋関節老化(サルコペニア・ロコモ)に注意する。
口腔・腸老化対策は大切に。 - 高血圧=血管性認知症発症と関連する。
糖尿病=アルツハイマー病発症と特に関連する。
脂質異常=動脈硬化症へ進展する。 - 抗うつ薬・抗不安薬(少量屯用)=うつ・不安による記憶障害が少なくない。
日常活動対策
活動 | 具体例 | 対策 |
---|---|---|
運動 | 速歩、水泳、ストレッチ、筋トレ、ジム | 通所リハビリの早期導入も検討する |
個人活動 | 絵画、音楽、文芸、旅行、血圧日記、メモリーノートやメモリーブックの活用 | 家事、店、畑、ペットなど、これまでの活動を持続する |
集団活動 | 社交ダンス、ゲートボール、カラオケ、囲碁 | デイサービスも有用である |
非常勤医師紹介
秋口 一郎