顔の見える連携を強化し、地域医療のさらなる向上を目指す
2025年3月8日、特徴的な症例の検討や最新知見の共有を目的とした「第60回特別講演会」(共催:伏見医師会、医仁会武田総合病院、第一三共株式会社)が、ホテルグランヴィア京都にて5年ぶりに開催されました。3部構成の会場聴講方式で行われ、南部地域でご活躍される開業医や医療従事者の皆様が多数ご参集くださり、活発な質疑応答が繰り広げられるなど、貴重な情報交換の場となりました。
講演に先立って、伏見医師会の西村康孝会長が、「武田総合病院は、地域の救急医療、病診連携・病病連携において多大なる貢献をされています。私自身も、開業当初から20年間、患者さんをご紹介すると必ずご入院いただくなど、大変安心して診療を続けてまいりました。また、窓口となる患者サポートセンターの職員の皆様には、日頃より我々の依頼に尽力いただき、幅広いご対応を賜っております」と感謝の意を述べられ、本日の講演内容を紹介し「最後までご聴講いただき、今後も武田総合病院の先生方と伏見医師会との連携が、さらに深まることを心より願っております」と挨拶されました。
講演①では、澤井泰志院長(さわい整形外科内科クリニック)を座長に武田総合病院脳神経外科の田中秀一低侵襲外科部長が「脊椎脊髄疾患 mimics ― 診断のpitfall」と題して講演しました。
脊椎疾患の症状は多岐にわたり、類似した症候から鑑別診断に難渋することがあると述べ、91歳女性の排尿後のふらつきによる転倒から心肺停止に至る経過の症例を紹介しました。
「3日後の頭部CT(最尾側画像)にて、C1/2レベルの不整像を放射線科医が指摘し、上位頸椎損傷によるCPAと診断しました」と報告。高齢者の頸椎損傷における鑑別の重要性を強調しました。「特に高齢のCPAでは、頸椎損傷の可能性を念頭に置き、全身CTの施行が潜在的な外傷の検索に有用である」と考察を述べました。
また、骨盤脆弱性骨折、非安定型大腿骨骨折、末梢動脈閉塞症、リウマチ性多発筋痛症など多岐にわたる症例について詳細に解説しました。
続く講演②では、木村文明院長(木村医院)を座長に武田総合病院糖尿病センターの細田公則センター長が「糖尿病と肥満症の診療の著明な進捗と地域連携 ― 治療薬、心血管腎合併症精査・悪化予防、持続血糖モニタリング、多職種連携のチーム医療」と題して講演しました。
糖尿病・肥満症に対する新薬の作用機序や代謝への影響、治療効果について詳細に解説しました。
地域医療連携については「血糖コントロール不良や高度肥満など、治療が難しい患者さんに対応しています。」と述べ地域の先生方との連携を大切にし、積極的な逆紹介を推進していることを強調しました。
造影剤を使用しない単純心臓CTによる「冠動脈石灰化スコア」を紹介し「リスクを可視化することで、患者さんの治療への意欲が高まり、血糖値も著しく改善することが多いです」と述べ、会場からは笑いと共感の声が上がりました。
教育入院でのチーム医療体制についても紹介し、運動療法には健康運動指導士、理学療法士、看護師が関わり、また精神科医、認知症看護特定認定看護師、薬剤師、社会福祉士、管理栄養士によるリエゾンチームが心理面から患者さんを支えています」と説明。
特別講演では、辻光院長(辻医院)を座長に武田総合病院内分泌センターの成瀬光栄センター長が「内分泌疾患診療を通じた地域連携の推進:20年の経験から学ぶ」と題して講演しました。
東京から京都医療センターに赴任した当初を振り返り、「紹介元の先生方に叱られることもあり悩みましたが、伏見医師会の坂東一彦会長(当時)からのご支援を受け、“内分泌代謝病診連携ネットワーク”を翌年に立ち上げることができました」と述べ、その成果として「直接お会いし話すことで信頼関係が深まり、クリニックと病院の距離感も縮まりました。結果として紹介患者数も増加し、地域医療の水準と患者満足度の向上につながりました」と述べました。
原発性アルドステロン症の診療について、今後はMR拮抗薬の適応がさらに広がる見込みとして、低年齢高血圧の多くがPAではないかという意見も国際的に広がっていると紹介しました。
最後に伏見医師会歴代会長の紹介を通じて感謝の意を表明し講演を締めくくりました。
閉会挨拶では、武田総合病院の一山智院長が登壇し当院の紹介患者数、新規入院患者数、救急搬入件数、手術件数などのデータをスライドで紹介。コロナ禍で一時は低下した数値も急速に回復している状況を報告、軽症患者さんについては逆紹介を推進し、地域医療との連携を強化する意義を強調しました。
そして、「救急および高度医療を担う急性期病院として、引き続き努力してまいりますので、変わらぬご協力をお願い申し上げます」と締めくくりました。