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診療科・部門

乳腺センター

概要

乳腺センターイメージ

稲本 俊

乳腺センター センター長

稲本 俊

医仁会武田総合病院が中心となり
関係施設と連携しながら乳腺の個別治療を行っています

武田病院グループでは、グループ各施設が相互に連携し乳がんの適切な検査・診断・治療をご提供しています。とくに治療面では、医仁会武田総合病院・乳腺センターが中心となって個別治療に取り組んでおり、必要なケースでは緩和ケアにも対応しています。
近年、高齢の乳がん患者さんが急増しており、他の疾患の治療が必要なケースが増加しており、地域の先生方をはじめ、グループ内外の診療科のご協力のもと、適切な対応させていただいております。また、在宅復帰に向けては医療ソーシャルワーカーが調整を行い、患者さんのご事情にあわせたご支援を在宅サービス部門が行っています。地域の先生方におかれましては、是非、お気軽にご相談ください。

医仁会武田総合病院WEB講座「乳がんの検診」(Youtube)

 新藏 信彦

乳腺センター 部長

新藏 信彦

できるだけ“元通り”に
ご自身の組織で整容を保つ優しい医療を追求

近年、乳がん医療は飛躍的な進化を遂げ、薬物療法においてはホルモン受容体、HER2タンパクによるタイプ別アプローチが中心となり、有効な分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬も次々と登場しています。また、検査においては機器の発展に伴い、より早期の小さな病変まで見つけられるようになりました。当グループでは高い技術を持った専門職がこれら機器を駆使し、病態を正確に掴むことはもちろんのこと、できるだけ患者さんに寄り添う医療に努めています。

とりわけ手術療法においては、切除するだけでなく、できるだけ“元通り”に近づける。それもなるべくご自身の組織で整容性を保つなど、患者さんに優しい治療を追求しています。

外来診療表

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乳がんの疫学と検診情報

乳がんの疫学

国立がんセンターがん対策情報センターの推計によると、一生涯のうちに何らかのがんになる割合は、男性で49%、女性で37%とされており、日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんになることになります。その中で女性の乳がんの罹患数の増加は著しく、2015年〜2019年の乳がんの罹患数の推計値が9万3千人である対して、20年後の2035年〜2039年には145千人になると推計されています。

この乳がん罹患数の増加の高齢者の乳がん罹患数の増加によるもので、特に75歳以上の後期高齢者では、2015年〜2019年の乳がんの罹患数の推計値が2万1千人である対して、20年後の2035年〜2039年の推計値は5万2千人以上になります(図1)。

(図1)年齢階級別乳がん罹患数【年齢調整罹患率推計値】(女性)
出典:国立がん研究センターがん情報サービス※1

乳がん検診の重要性

乳がんは早期発見、早期治療ができれば治癒率の高い病気です。早期発見のためには、自己検診が重要です。自己検診で異常がなくても、定期的な乳がん検診を受けてください。残念ながら日本の乳がん検診の2022年の受診率は36%に留まっています(図2)。特に2022年の京都府の乳がん検診率は33%です。検診対象者の3分の2が未受診者となっているのは大きな問題と言えます。

乳がん検診の目的は乳がんで亡くなる人を減らすこと(死亡率減少効果)です。現在、この乳がん死亡率減少効果が明らかな検査方法は検診マンモグラフィだけです。日本では40歳以上の女性に対して検診マンモグラフィが推奨されています。過去3年間に乳がん検診等で乳房の異常を指摘され、医仁会武田総合病院を受信した患者さんは148人の中で乳がんと診断されたのは13人(9%)で、がんの病期0期(非浸潤がん)が4人、I期が5人、Ⅱ期が4人で、進行した癌はありませんでした。また、この148人中75歳以上が13名で、その中の3名が乳がんと診断されました。既に述べたように、今後、高齢者の乳がんの罹患率が増加すると推定されていますので、高齢者の方の乳がんの検診によりよく対応できるように関連施設との連携を図っていきます。

(図2)がん検診種別の受診率(2022年)
出典:がん情報サービス
    • 公益財団法人日本対がん協会サイトより

      乳がん検診の実際

      乳がん検診では、どれくらいの人に乳がんが発見されるのでしょうか。日本対がん協会が2017年に全国の支部で行った乳がん検診の結果は受診者数が1261551人。このうち精密検査が必要と判定された人(要精検者)は56438人(要精検率4.47%)、精密検査を実際に受診した人(精検受診者)は51356人(精検受診率91.00%)でした。

      そして、その中でがんを発見された人の数は3043人、その割合は0.24でした。この結果から、乳がん検診を1万が受診すると447人が「異常あり」と判定され、精密検査(二次検診)を受けるように勧められます。そして精密検査を受けた人は407となります。この407人の中から24人に乳がんが発見されたという割合になります。

なぜ乳がん検診を受けないのか

内閣府が実施しているがん対策に関する世論調査では、として、「受ける時間がない」「健康状態に自信があり必要性を感じない」「心配な時は医療機関を受診できる」などの回答が多かったことから、がん検診についてその重要性や正しい知識が定着していないと考えられます(図3)また、「経済的負担」を上げている人も多くみられたので、市町村のがん検診は安価で受診することが出来ることについて知られていない可能性があります。

がんや検診について正しい知識や情報を持っていただくようにする必要があります。また、女性は「検査に伴う苦痛に不安がある」の回答も多かったことから、検診の必要性を十分理解して受診してもらう必要があります。

(図3)平成28年度がん対策に関する世論調査
出典:内閣府世論調査「がん対策に関する世論調査報告書」(https://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-gantaisaku/)

京都市の乳がん検診

京都市では子宮頸がん、乳がん、肺がん、大腸がん、胃がん、前立腺がんの検診が行われています(表1)京都市の乳がん検診の対象者は、40歳以上の女性の市民の方で、2年に1回受診することができ、受診料金は1回1,300円です。受診料金が免除される制度もありますので、詳細は京都市の乳がん検診ページをご覧ください。

京都市乳がん検診

検査方法は、マンモグラフィ(乳房エックス線撮影)をすることです。視触診はありません。京都市がん検診の実施場所は、指定医療機関で行うものと、一定の時期に各区役所・支所保健福祉センター等に検診車が巡回して行うものがあります。指定医療機関は京都市内の30施設です。医仁会武田総合病院、康生会武田病院、百万遍クリニックでも行なっています。

【注意】 妊娠中又は妊娠の可能性がある方、心臓ペースメーカー又は脳室-腹腔シャント、中心静脈ポートを装着されている方、乳房形成をされている方は、マンモグラフィの検診を受けることができません。

表1 京都市のがん検診
がん検診 対象者 受診料金
子宮頸がん検診 20歳以上の女性の市民/2年に1回 1,000円
乳がん検診 40歳以上の女性の市民/2年に1回 1,300円
肺がん検診 40歳以上の市民/1年に1回 無料
大腸がん検診 40歳以上の市民/1年に1回 300円
胃がんリスク層別化検診 40・45・50・55・60・65歳の市民 500円
胃がん検診 播種性血管内凝固症候群 胃内視鏡(胃カメラ)検査:3,000円
胃部エックス線(バリウム)検査:1,000円
前立腺がん検診 50歳以上の男性の市民/2年に1回 1,500円

乳がん以外に取りあつかう主な疾患

良性疾患

乳房の腫瘤(しこり)が全て乳がんという訳ではなく、乳がんと関係のない良性の病変であるケースも少なくありません。20211月から20246月までに本院の乳腺外来を受信された初診患者さんは2211人おられ、その内、乳房のしこりを自覚として受診した方が230人おられましたが、その中で乳がんと診断された方は126人でした。ちなみに、無症状の方1533人では乳がんと診断された方は53人、乳房痛で受診された方255人では乳がんと診断された方は7人でした。

乳房にしこりを自覚、あるいは乳房の腫瘤と診断されるがん以外の疾患には、①乳腺線維腺腫、②葉状腫瘍、③過誤腫、④うっ滞乳腺炎、⑤乳腺症などがあります。

  • ①乳腺線維腺腫
    乳腺線維腺腫は乳房の代表的な良性腫瘍で、間質結合織成分と上皮性成分(腺の成分)が共同増殖する良性腫瘍です。15〜35歳の間の女性に最も多く認められます。しこりはコロコロとしており、触るとよく動くのが特徴です。多くは大きさが径2〜3cmになると増殖が止まり、その後自然退縮しますが、5%程度はさらに増大します。大きくなった場合は手術で摘出することもあります。上皮性成分ががん化することは極めて稀です。
  • ②葉状腫瘍
    葉状腫瘍は乳腺線維腺腫と同様に間質結合織成分と上皮性成分からなる腫瘍ですが、間質結合織成分が細胞成分に富み、悪性化することがあります。その程度により、良性、境界病変、悪性の3種に区分されています。急速に大きくなるのが特徴で、原則、手術による摘出を行います。大きな腫瘍では乳房全切除が必要となります。
  • ③過誤腫
    過誤腫は一般的に腫瘍性増殖性病変ではなく、形成異常と考えられており、組織構築は正常乳腺に類似しますが、各組織成分の割合は著しく正常を異なり、その割合より様々な像を呈します。乳房内に周囲との境界が明瞭な被膜を有する腫瘤を形成します。良性疾患であり、原則として経過を観察します。
  • ④うっ滞乳腺炎
    うっ滞乳腺炎は乳汁のうっ滞で起こる乳房の炎症で、化膿性乳腺炎は細菌感染によって起こる乳房の炎症です。乳房が赤く腫れたり、痛み、しこりなどの症状があります。乳輪下膿瘍は、化膿性乳腺炎の結果として乳輪の下に膿瘍(膿のたまり)ができるもので、乳頭や乳輪にできた瘻孔から膿が出てくることがあります。うっ滞性の場合は、乳房マッサージや搾乳で乳汁分泌促進を図ります。細菌感染をともなう場合は抗生物質の投与、乳輪下の膿瘍の場合は、膿瘍を切開し、膿を出し、洗浄し、抗生物質の投与を行います。肉芽腫性乳腺炎は比較的若年で、出産、授乳後2〜3年して発症することの多い乳腺炎で、境界不明瞭な硬い腫瘤として触れます。膿瘍を形成し、皮膚に自壊して瘻孔を形成することもあります。原因は不明で、消炎鎮痛剤やステロイドによる治療が第一選択とされています。
  • ⑤乳腺症
    乳腺症は、乳房の腫瘤、硬結、疼痛または乳頭分泌などの諸症状を主訴とする乳腺良性疾患群と捉えられています。乳腺症の原因は女性ホルモンや黄体ホルモンの不均衡により乳腺の増殖、化生、退行などの変化が生じることで、それにより様々な病態を呈します。その中でも乳管が袋状に変形した嚢胞は大きくなるとしこりとして触れることがあります。乳頭分泌は、水のような透明な分泌や、乳汁のような白色の分泌が乳頭の複数の孔から見られます。分泌液の色が褐色や赤色の場合は乳管内の腫瘍の存在が疑われます。異型乳管過形成は、乳管上皮に異型をともなう病変で、前癌病変と考えられており、生検で診断された場合は厳密な経過観察が必要となります。
    ※参考資料:「乳腺腫瘍学第3版」金原出版、「乳癌取扱い規約第18版」金原出版

検査

検査イメージ

乳がんを適切に診断し治療していくためには、高い技能と豊かな経験を持った医師・看護師・検査技師・薬剤師など多職種のスタッフが必要です。武田病院グループでは、グループ全体でこれら多くのスタッフを取り揃え、診断・治療にあたっています。

ここでは乳がんの診断に欠かせない各種の検査についてご説明させていただきます。

    • マンモグラフィ検査

      マンモグラフィ検査

      乳腺はX線撮影で白く映る性質があり、単に乳房を撮影しても白く映るがんや石灰化病変などを見落としてしまう可能性があります。マンモグラフィは乳房を二枚の板で挟み、薄く伸ばして乳腺の重なりを減らすことで病変をより発見しやすくし、初期症状である微細な石灰化や触診ではわかりにくい小さなしこりを画像として捉えることができます。当グループの検査では多くの女性技師が活躍しています。

    • 超音波検査

      超音波検査

      超音波検査(エコー検査)では、病変の有無やしこりがある場合は大きさ、リンパ節への転移を把握します。また生検を行うにもエコーで正確に病巣を把握することが欠かせません。ここで重要となるのが機器の性能と術者の技量です。例えば5~8mmの初期の乳がんを見つけるのは相応の技量が必要となります。

    • MRI検査

      MRI検査

      乳がんと診断された方に対し、どこまで病変が広がっているか、マンモグラフィや乳腺エコーで見えなかった病変は無いか、反対側の乳腺には異常はないかなどを正確に診断し、確実な手術方法を決定します。とくに温存療法では、MRI画像を元に切除範囲を決めるなど、MRI撮影は乳がん治療において大変、重要な検査となります。

    • 生検

      左:吸引式乳房組織生検(VAB)/右:ア針生検(CNB)

      生検

      病理診断が必要な病変がみられた場合、CNB(コア針生検)もしくはVAB(吸引式乳房組織生検)を行います。
      CNBはバネ式の小型キットで、VABは乳腺エコーを行いながら正確に吸引を行う生検装置です。VABはこれまで切除生検が必要であった病変も5mm程の切開で組織を採取することができるようになりました。さらにDCIS(非浸潤性乳管がん)と呼ばれるほとんど転移しない早期のがんも多数見つかるようになりました。

    • PET検査

      微細な早期乳がんの画像(左からマンモグラフィ、超音波、MRI)

      PET検査

      乳がんと診断された方に対し、放射性同位元素を用いてリンパ節転移や遠隔転移がないかを診断する検査です。この検査の結果も踏まえてステージを決定し、適切な治療方針を選択します。また乳がん術後の経過中に再発はないかなどの診断や、再発された方の治療に対する効果の評価にも威力を発揮します。また乳がんとは関連のない別な悪性疾患が偶然見つかることもあります。

遺伝子検査

がんに対する様々な遺伝子検査が効果を発揮しています。乳腺治療においては主に、①がん組織中の遺伝子を調べる検査、②患者さんが親から受け継いでいる遺伝子を調べる検査があります。
そのなかでも、効果的な薬剤を選択するために1つの遺伝子を調べる検査、逆に多くの遺伝子をまとめて調べる「遺伝子パネル検査」などが行われています。
今後、目的に応じ、様々な遺伝子検査が発展・増加していくことが考えられます。

OncotypeDX(遺伝子検査)による治療法の選択

Oncotype DXは、手術時に切除した乳がん組織のホルマリン固定標本を用いて21の遺伝子の発現を測定し、それをスコア化したものです。低・中・高リスクに分類し、例えば低リスクであれば抗がん薬治療は行わなくてもよいとする根拠に利用します。スコアによって化学療法やホルモン療法の効果など予後の予測が行えます。

2023年91日から保険収載されました。435000円ですので3割負担の患者さんは13万円相当になります。

BRCA1/2遺伝子検査

PARP阻害薬のオラパリブ(商品名:リムパーザ)が抗がん薬治療歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの治療、および再発高リスク患者の術後補助療法に対し適用となりました。これに伴いコンパニオン診断(オラパリブの適応があるかどうかを調べる検査)としてのBRCA1/2遺伝子検査が保険適用となりました。この検査は親から受け継いだ遺伝子の変異を調べる検査です。
また若干乳がん、両側乳がん、濃厚な乳がんや卵巣がんの家族歴がある患者さんに尚、薬を選ぶ目的ではなく「患者さんが遺伝性乳がんかどうか」を調べるためにBRCA1、BRCA2遺伝子の検査を行う場合は現状では健康保険の適用対象になっていません

遺伝子パネル検査

遺伝子検査の技術向上で、がん組織を用いてがんにかかわる複数の遺伝子の変異の有無を同時に測定することができるようになりました。これを遺伝子パネル検査といいます。
遺伝子パネル検査の登場で、一人ひとりの乳がんには様々な遺伝子の変異があり、その違いでそれぞれ細かくグループ分けできる可能性が出てきました。
さらに異なるがん種でも同じ遺伝子に変異がある場合や、同じ分子標的治療薬が有効な場合があることが最近わかってきました。今後も最新の情報をご提供させていただきます。

乳がんの治療

乳がんの治療イメージ

当院では、乳がんの進行度はどうか、どのようなタイプの乳がんか、遺伝的要素は関係していないかなどを調べたうえで、患者さん一人ひとりに一番適した治療法を一緒に相談していきます。

    • 手術療法

      手術療法

      乳がんの手術方法としては胸筋合併乳房切除術、胸筋温存乳房全切除術、および乳房部分切除術(乳房温存手術)などがあります。この中でも現在では胸筋温存乳房全切除術に代わって乳房部分切除術が増えています。病変の大きさや広がりなどによって制約がありますが、病変が大きくても術前化学療法を行ったうえで乳房部分切除術が可能になる場合もあります。乳房部分切除術の場合、切除のみでは組織の欠損によって乳房の変形をきたしますので、当院では周囲の乳腺組織や脂肪組織をうまく使ってなるべく乳房が変形しないようにしています。また皮膚の切開線もなるべく目立たないように乳房の外側や乳輪部分から手術します。

      乳房手術・腋窩手術・乳房再建・乳房の形成について

       

  • 放射線療法

    トモセラピー ラディザクト(宇治武田病院)

    放射線療法

    当グループではIMRT(強度変調放射線治療)「トモセラピーラディザクト」を導入しています。がん病巣を正確に把握する撮影機能に加え、360度全方位から複数のがん病巣へ放射線の照射治療を行うことができます。

  • 薬物療法とタイプ別治療

    薬物療法とタイプ別治療

    薬物療法とタイプ別治療

    乳がんは、ホルモン療法が効くタイプと効かないタイプ、ハーセプチンという薬が効くタイプと効かないタイプ、リンパ節に転移がある場合と無い場合、閉経前と閉経後、浸潤がんと非浸潤がんなど様々に細分化され、その性質に一番効果のある治療を選択するのが基本です。
    当院では膨大な臨床試験に基づいた最新の日本乳癌学会のガイドラインやNCCNのガイドラインに沿って治療方法を患者さんと相談しながら決めていきます。

免疫チェックポイント阻害剤による治療

がん細胞の、免疫機能にブレーキをかける働きに注目し、これを阻害するお薬(分子標的薬の一つ)が「免疫チェックポイント阻害剤」です。
免疫は体の中の異物を除去するのに有効な仕組みです。ところが、がん細胞が出すタンパク質「PD-L1」が、がんを攻撃する免疫細胞のPD-1と結合すると、免疫細胞ががん細胞を攻撃できなくなることが知られています(※この機構は京都大学の本庶佑先生が解明して2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました)。
免疫チェックポイント阻害剤はこの「PD-1」あるいは「PD-L1」に結合することで免疫機能のブレーキを外し、弱まった免疫細胞の働きを強め、治療を行う治療です。

※手術不能進行・再発PD-L1陽性のトリプルネガティブ乳がんに対し、アルブミン懸濁型パクリタキセルにアテゾリズマブを併用することが強く推奨されています。
※手術不能進行・再発PD-L1陽性のトリプルネガティブ乳がんに対し、化学療法(アルブミン懸濁型パクリタキセル、パクリタキセル、カルボプラチン+ゲムシタビン)にペムブロリズマブを併用することが強く推奨されています
※高リスクのトリプルネガティブ乳がんの術前化学療法としてペンブロリズマブに化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル、その後エピルビシン+シクロフォスフォミド)を併用することが推奨されています。

  • ホルモン療法

    ホルモン療法

    乳がんの約7割は女性ホルモンに反応して増殖します。この性質を利用し、女性ホルモンが乳がんの細胞にくっつかないようにする、あるいは女性ホルモンを減少させることによって乳がんの再発を抑えるのがホルモン療法です。使われる薬剤は閉経前と閉経後の患者さんでやや異なります。

  • 化学療法

    化学療法

    手術を行うことが困難な進行乳がんに術前化学療法を実施して手術が可能になった症例

    化学療法

    乳がんの広がりに応じ化学療法(抗がん薬)は、①術前化学療法、②術後化学療法、③遠隔転移に対する化学療法に分けられます。

    術前化学療法は、しこりが大きいため乳房温存療法が行えない人が術前化学療法を行うことでしこりが小さくなった場合に乳房温存手術ができる可能性が出てくることや、手術での切除範囲が少なくて済むことで、より美容性の高い手術ができる可能性があるのが大きな特徴です。

    また、術前化学療法の効果によって術後の治療方針を選択できるメリットもあります。

 

緩和治療(緩和ケア)

緩和治療は、乳がんによる身体的な苦痛や気持ちのつらさを、少しでも和らげるためのケアをさします。患者さん本人はもちろんのこと、ご家族も含めた総合的なケアをご提供するものです。

緩和治療を受ける時期

緩和治療は「終末期」に受ける最後のケアと思われることが多いのですが、実際には、がんと診断された時点からいつでも受けることができます。緩和治療で心身のコンディションを整え、治癒をめざす治療を行うケースも珍しくありません。病期(病状)に応じた治療と並行し患者さんやご家族が希望する生活を保てるよう、様々な治療と支援を行います。

緩和治療で受けられるケア

抗がん剤やホルモン療法、放射線治療、また病気の進行によって「だるさ」「吐き気」「食欲不振」などが生じることがあります。さらに「咳」や「呼吸のつらさ」「便秘」「腹部の張り感」「上肢のリンパ浮腫」「皮膚の発赤(ほっせき)・滲出(しんしゅつ)(えき)」など、さまざまな症状が現れることがあります。このような症状に対し、様々な治療、そして援助を組み合わせご提供しています。

痛みが強いと体力を消耗し、QOLが落ちたり、治療がつらくなるものです。ところが、骨転移などによるこうした痛みの8090%は「適切な治療法」で改善できるといわれています。痛みの治療で使用される医療用麻薬(オピオイドなど)は、命を縮めることがないことが証明されています。むしろ痛みを十分に和らげることは、患者さんの生活を支えるうえでとても重要です。不安な気持ちや気分が落ち込んだ場合は、看護師による看護相談(緩和ケア外来)や臨床心理士によるカウンセリングを受けることができます。心身の緊張を和らげ、十分に睡眠をとれるよう、薬剤が処方されることもあります。

医仁会武田総合病院では、当院・他院を問わず、通院中のがんに罹患されている患者さん、およびそのご家族を対象とした「緩和ケア外来」も行っております。お悩みのある方は是非、ご利用ください。

緩和ケア外来

緩和治療を受けられる場所

緩和治療は「緩和ケア病棟」や「ホスピス」で受けるのが代表的です。実は、これ以外にも一般病棟や乳腺外来でも緩和治療を受けることが可能です。病棟では医師を中心に看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーらによる緩和ケアチームが対応し、適切な病状緩和に努めます。

当グループにおいては、医仁会武田総合病院で入院、外来での緩和ケアを行っているほか、緩和ケアを専門とする稲荷山武田病院で治療を継続することも可能です。このほか訪問看護ステーションと協力し、在宅での緩和ケアにも対応しています。

患者さん・ご家族のご希望により様々な治療・援助が可能ですので、是非、ご相談ください。

セカンドオピニオン

セカンドオピニオンとは、担当医の意見が「第一の意見」とし、他の医師の意見を「第二の意見」とするものです。
セカンドオピニオンは、担当医から提示された診療内容を信じないとか他の医療機関に移ることではありません。セカンドオピニオンには次のようなものがあります。

  • 乳がんという診断を確認したい
  • 初期治療を受ける際に「手術」「放射線療法」「術前化学療法」「術後化学療法」など、どのような選択肢があるかを知りたい
  • 再発・転移したときに治療法や使用できる薬剤の種類などを知りたい
  • 臨床試験について知りたい

当院のセカンドオピニオン外来

より良い地域医療連携へ

乳がんの好発年齢は45~49 歳、そして60~64歳です。高齢になればなるほど、様々な合併症をお持ちになります。そうした治療は開業医の先生(かかりつけの先生)にお願いし、乳がんについては我々専門医、専門の医療施設が診療・治療を行います。
乳がん治療は、臓器としては1つなのですが、実は発見~治療にあたって多くの専門職が関わる医療分野です。乳がんの専門医、かかりつけの先生、多くの専門職がチームとなって、お一人おひとりの患者さんを支えてまいります。

より良い医療がご提供できるよう、連携のシステムを構築していきたいと考えています。どうぞご協力をお願いいたします。

費用について

気になるのが治療費です。とくに手術・入院を伴う治療はそれなりの費用となります。
一例として「乳腺悪性腫瘍手術」をあげれば、腋窩部郭清の有無等で幅がありますが、7日間の入院でおよそ 70 90 万円となります。

これらは高額療養費制度の対象となるため、3割負担等で患者さんがご負担されることはほとんどありません。

【患者さんご負担費用の例】
70 歳未満」では、35,400 円~ 87,200 円(年収等により異なる)
70 歳以上」では、15,000 円~ 57,600 円(年収等により異なる)

高額療養費制度は、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が「払い戻し」される仕組みです。不明な点は、当院担当にお問い合わせください。

制度の詳細につきましては京都市のWebページをご確認ください。

京都市 高額療養費の支給について

費用の例

※あくまでモデル費用であり、実際には様々なケースがあります。

【入院期間を約7日間と想定した場合】

名称 点数 手術+検査金額 入院費
乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)+センチネルリンパ節生検 28210+5000 332,100円 700,000~800,000円
乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術(腋窩鎖骨下部郭清を伴うもの)・胸筋切除を併施しないもの 42350 423,500円 800,000~900,000円
乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)+センチネルリンパ節生検 22520+5000 275,200円 700,000~750,000円

 

※1死亡数・罹患数Long-Term Projections of Cancer Incidence and Mortality in Japan and Decomposition Analysis of Changes in Cancer Burden, 2020-2054: An Empirical Validation Approach.Cancers 2022; 14: 6076 有病数Cancer Prevalence Projections in Japan and Decomposition Analysis of Changes in Cancer Burden, 2020-2050: A Statistical Modeling Study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2023;32:1756–70

専門職によるチーム治療

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