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メディカルアドバイス

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2012.11.01 脳卒中の後遺症へ最先端リハビリ治療ボツリヌス療法/たけだ通信101号より

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徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
感覚情報医学講座 臨床神経科学分野(神経内科)教授
梶 龍兒 先生



■医仁会武田総合病院で臨床治療開始へ 武田病院グループでの拡充を目指す

脳卒中の後遺症による手足の麻痺や硬直に悩む患者さんに対して、今、硬直した筋肉の緊張を取り除いてリハビリ効果を高める治療法「ボツリヌス療法」が注目を浴びています。NHKのTV番組などで取り上げられ、武田病院グループでもまもなく治療を開始します。今回は、「ボツリヌス治療とリハビリ」について、徳島大学神経内科教授、梶龍兒先生にお話を伺いました。

■ボツリヌス療法とは

以前は目の斜視の治療が中心でしたが、その後、しわを伸ばす美容整形の分野、ジストニア(眼腱痙攣)や半側顔面痙攣、痙性斜頸などの治療に用いられていました。近年では、子供の脳性麻痺による歩行困難の治療にも応用されていましたが、2010年10月に、脳卒中の後遺症を含む痙縮への適応が認可されました。

1987年に、医師として滞在していたアメリカで、ジストニアに対するボツリヌス毒素治療が効果の高いことを知り、京都大学医学部に帰学後、「脳卒中分野にも役立つのではないか」と考え、初めて日本で臨床治療を開始することになりました。

kenko.medical.1211_2.jpg■脳卒中後のリハビリ6ヶ月の壁

脳卒中の患者数は280万人で、その多くが後遺症で悩んでおられます。脳卒中の発作は、心筋梗塞の6倍に上ると言われてい ます。いったん、発作に襲われると3分の1の人しか社会復帰は望めません。

発症後のリハビリとしては、最近は「闘うリハビリ」と言われ、急性期から懸命にリハビリに取り組んでおられます。しかし、6カ月ほどで効果が頭打ちになる「6カ月の壁」によって、リハビリ効果が少なくなってしまいます。

また医療保険でも、実際的には6カ月までしかリハビリが認められていません。壁に突き当たって、関節が固まってしまう「拘縮
状態」になってしまった患者さん もおられますが、ボツリヌス治療を用いれば、重度の患者さんでもスプーンや障害者用の箸が持てるようになるといった、すばらしい効果があることもわかっています。

この治療と専門的なリハビリを受けることによって、少しずつ治療効果が体感できることにより、患者さん自身の尊厳の維持と、未来への希望を持てるようになります。多くの方が表情も豊かになって、一層、リハビリに取り組まれ、また状態が良くなっていかれるのが大きな特徴です。

■専門治療施設

A型ボツリヌス毒素製剤(商品名ボトックス)を注射して、緊張している筋肉を麻痺させ、筋肉の緊張によって起こる痙性斜頸の症状を改善する治療方法です。
この薬は注射した筋肉とその周りにある筋肉にしか作用しません。つまりボツリヌス療法とは、筋肉にボツリヌス毒素を注射することによって、注射をした筋肉とその近くの筋肉だけの緊張を取り除き、効果を得る治療方法です。

ボツリヌス療法は注射による効果と考えられがちですが、そうではありません。リハビリをもう一度、発症後6カ月以前と同様に効果を出現させる機会を与えるということです。そのために、第1は、注射の直後からリハビリに移行し、通常では2~3日して効果が現れてきます。第2に、リハビリでは道具を用いて取り組みます。第3として、リハビリプログラムにゴールを決めていただきます。ゴールに向かって、それに合ったリハビリをしなければなりません。

専門的なリハビリを行えるシステムや人材の育成が大切で、その準備を武田病院グループで取り組んでいるところです。

■費用

上肢・下肢の大きな筋肉に対して効果を及ぼすためには、十分量のボツリヌス毒素を投与する必要があります。ボツリヌス毒素製 剤の薬価は、100単位製剤の場合約9万2000円ですから、下肢痙縮に対して1回投与量の上限(300単位)を投与した場合、薬価は約27万6000円です。健康保険で3割負担なら約8万3000円、1割負担なら2万7000円となります。また、今回の上肢・下肢痙縮に対する一連の治療としては、ボツリヌス療法と併せて行うリハビリテーション治療で、医仁会武田総合病院では1週間の入院治療で費用の概 算としては、3割負担なら約13万から19万円の負担が必要となります。

また、身体障害者手帳をお持ちの方の場合には1割、あるいは負担が不要の方もおられ、個人によって保険負担の割合等が異なる場合がございますので、詳しくは病院入退院窓口までお問い合わせ下さい。

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◆ 梶 龍兒先生のプロフィール ◆
 1979年 京都大学医学部卒業 
 1981年~1982年 京都大学大学院医学研究科博士課程(医学博士) 
 1986年 米国ペンシルバニア大学付属病院 客員教授 
 1987年 米国ルイジアナ州立大学メディカルセンター助教授
 1991年 京都大学医学部神経内科講師
 2000年 徳島大学医学部附属病院 高次脳神経診療部 教授
 2003年 徳島大学大学院医学研究科神経情報医学(臨床神経学)分野教授
 2007年から現職

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