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メディカルアドバイス

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2012.04.01 不整脈診断の難しさ ~「自己検脈」のすすめ~/たけだ通信100号より

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医仁会武田総合病院 不整脈科 部長 江里 正弘



約2年間康生会武田病院不整脈治療センター全栄和先生のもと、カテーテル手技を中心とした不整脈治療を学び、2010年11月より医仁会武田総合病院不整脈科に赴任後、はや1年以上が経とうとしています。院内スタッフのサポートもあり、おかげさまでこの1年間で100名以上の患者さんに対してカテーテル治療を行うことができ、今後適応がある患者さんに対して不整脈薬の服用では決して成し遂げることができない「根治」治療をより充実させていきたいと思います。

カテーテルを含めた不整脈治療を行うにあたり、適応を含めどのような不整脈が起こっているか、診断する必要があります。
しかしながら、この診断が思った以上に難しく、スムーズに診療が行かないことが少なくありません。私が以前勤めていたドイツ・ライプチヒハートセンターでは外来紹介患者さんのほとんど(全員と言ってもいいかもしれません)が不整脈発作時の心電図がすでに記録できており、心電図を拝見しただけでカテーテル治療の適応、ならびにカテーテル治療成功率の高い不整脈か、否かが瞬時に判断できます。しかしながら他院からご紹介いただく方も含め、当院外来へ来られる患者さんの多くは心臓の鼓動を感じる動悸、胸の痛み、息切れ、倦怠感といった症状があるものの、不整脈発作時、自覚症状出現時の心電図が捉えられていない状況です。診断することによって初めて診療方針が決まる実臨床現場において、不整脈発作が捉えられていない状況での治療は極めて難しいと言わざるを得ません。不整脈発作を捉える方法としてはホルター心電図と呼ばれる長時間(24時間)心電図を使用するのが一般的で、外来で簡単に装着・取り外しができ、入院の必要もなく、患者さんへの負担も少なくてすみます。しかしながら24時間という短い時間内での記録・解析のため、不整脈発作が頻回に見られる患者さんでも装着している間、たまたま1度も不整脈発作が起こらなければ検査上は正常と判断してしまいます。そこでお勧めしたいのがご自身で脈を計測する「自己検脈」です。方法はいたってシンプルで手のひら側の手首、首筋にもう片側の3本の指を脈の触れる箇所に当てる、というものです。症状がある方は症状出現時に測定いただければ結構です。患者さんの中にご自宅の血圧計で脈拍数が高かった、とのことでご相談に来られる方がいらっしゃいます。その際、お勧めしている方法でもあります。血圧測定器での脈拍は不整脈の種類によっては(例:心房細動、心房性・心室性期外収縮)正確に表示できないことがあるためです。自己検脈を行うにあたり、大切な点は

症状があるときの脈拍数は何もないときと同じか。また触れる間隔はどうか(規則正しいか、ばらばらか)。
ばらばらであれば常にばらばらか、ほんの一瞬だけ乱れて、その後はもとの規則正しい脈に戻るか。
1分以上持続している場合は10秒間の触れる脈拍数はいくらか。(6倍すれば1分間の脈拍数になる)
脈の結滞(脈が触れるべきタイミングで触れない)がないか。
突然早い脈で出現するか、徐々に早くなる脈で出現するか
です。これだけでも不整脈の診断にはかなり役に立ちます。脈の乱れ、動悸等を感じておられる方で他施設で心電図がないと 判断できないと言われた方は是非ご自身で検脈を行うことをお勧めします。

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