記事一覧へ戻る

【京都新聞朝刊 医療のページ】「腎代替療法」(宇治武田病院 透析センター長 乾 恵美)

メディア

納得の治療へ 相談は早めに

Q.腎臓の役割は。

血液をろ過し、余分な水分と老廃物を尿として排出します。体内の電解質、ミネラル、pH(水素イオン指数)などの調整のほか、造血を助ける役割もあります。糖尿病や高血圧などによって腎臓の機能が低下すると、体内に水分や尿毒素がたまり、むくみや吐き気、貧血といった症状が出ます。末期腎不全に至ると改善することは難しく、命をつなぐため腎代替療法が必要となります。

Q.腎代替療法とは。

患者さんの腎臓に代わって不要な老廃物や水分を排せつする治療法です。血液透析、腹膜透析、腎移植の選択肢があり、導入の目安は残存腎機能が10%以下です。
血液透析は血液を体外に取り出し、ダイアライザー(人工腎臓)を用いて浄化します。一般的に1回4時間、週3回の通院を要しますが、最も実績があります。腹膜透析は患者さんご自身の腹膜を利用し、血液中の老廃物や水分を取り除きます。在宅で治療でき、自由度が高いのが利点ですが、透析全体の約3%に過ぎません。ドナーから腎臓の提供を受ける腎移植は、拒絶反応を防ぐ免疫抑制剤の服用が必須ですが、透析に頼らず通常に近い生活が送れます。
腎代替療法を選択されない場合、保存的腎臓療法を行います。腎不全に伴う貧血や吐き気といった症状を薬などで和らげる治療となります。

Q. 治療法をどう選ぶのか。

年齢や合併症、生活の質(QOL)などを検討するだけでなく、患者さんの価値観や希望も重視します。各治療法のメリット・デメリット、患者さんの生命予後や生活状況、家族の意向も踏まえ共同意思決定の手法で選択します。治療法を理解し、納得できる選択には十分な時間と信頼関係が不可欠です。腎代替療法が必要になるぎりぎりではなく、早めに専門機関にご相談ください。

 

宇治武田病院

透析センター長 乾 恵美

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。

新着記事