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【京都新聞朝刊 医療のページ】「身近な副腎の病気」(武田総合病院 内分泌センター長 成瀬 光栄)

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高血圧と同じ症状、注意を

Q.副腎の役割は。

副腎は、腎臓の上に左右一つずつある小さな臓器です。さまざまな体の働きを調節する、ホルモンを分泌する内分泌器官の一つで、3層の皮質が髄質を覆っています。最も外側の皮質で作られるアルドステロンは、主に血圧を上昇させ、電解質(カリウム)を減らす作用があります。2層目から分泌されるコルチゾールが血圧や糖・脂質代謝を調節するなど、部位ごとに異なるホルモンを産生します。

Q.副腎の病気とは。

副腎に腫瘍ができると、ホルモンの分泌が多すぎたり不足したりして、体に変調を来し、命に関わる場合もあります。アルドステロンが過剰に分泌される原発性アルドステロン症もその一つで、高血圧と血液中のカリウム低下が特徴です。近年、世界的にスクリーニング(ふるい分け)が進み、高血圧症全体の10~15%を占めることが分かり、注目されています。治療が遅れると、脳や心臓、腎臓を傷める恐れがあります。

Q. 検査、治療法は。

この病気の症状は通常の高血圧症と同じであるため、血液検査でホルモンの比率を測定しない限り区別できません。通常の降圧薬では改善しない、若くても血圧が高いという場合は疑わしく、早期検査をお勧めします。片方の副腎の良性腫瘍が原因なら、腹腔(ふくくう)鏡手術やロボット支援手術で副腎を摘出すると完治可能です。両方の副腎に異常がある場合は、アルドステロン拮抗(きっこう)薬を服用する特異的治療で過剰なアルドステロンの作用をブロックします。  その他の副腎の病気よりホルモンが過剰になると高血圧、糖尿病、高脂血症などさまざまな疾患を引き起こします。ただ、痛みなどの自覚症状がないため見逃されがちです。何か気になることがあれば、内分泌内科にご相談ください。

 

武田総合病院

内分泌センター長 成瀬 光栄

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。

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