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【京都新聞朝刊 医療のページ】「不整脈のPFA治療」(武田病院 不整脈治療センター長 垣田 謙)

メディア

心筋細胞をより安全に死滅

Q.パルスフィールドアブレーション(PFA)とは。

心房細動の新しい治療法として注目されています。遺伝子工学で使われていたエレクトロポレーション(電気穿孔(せんこう)法)という技術を応用した、カテーテルアブレーションの新たな手法です。 不整脈を引き起こす異常な電気興奮が発生しやすい、肺静脈からの電気の流れを遮断するため、電界(パルスフィ―ルド)をカテーテルから発生させることで細胞膜に小さな穴を開け、心筋細胞だけを自然死させます。海外では既に多くの実績があり、日本でも昨年、薬事承認を得て保険適用され、本格的に導入されつつあります。従来の高周波電流や冷凍凝固バルーンといった熱エネルギーで心筋組織を壊死(えし)させるアブレーション治療は、急速にPFAへ置き換わるとみています。

Q.メリット、デメリットは。

最大のメリットは安全性の高さです。熱エネルギーによる治療と異なり、標的となる心筋組織だけを細胞死させる特長があり、心臓に近い食道や神経などを熱で傷つける合併症リスクをほぼなくせます。技術的にも簡便で、治療時間を短縮できます。一方、重大な報告例は少ないものの、赤血球が壊れる溶血が起きることがあるとされ、注意が必要です。さらに細やかな治療を要する再発症例への適用なども課題といえそうです。

Q. どんな治療か。

足の付け根の大腿(だいたい)静脈から細い管(カテーテル)を心臓内に入れて行う従来のアブレーション治療と同じで、カテーテルの装置が替わるだけです。大がかりな手術ではないので体への負担が少なく、根治を目指せる治療法です。費用は高額療養費制度を利用すれば、従来の治療法と大差はなく、患者さんにより優しく、効果的な治療としてお勧めします。

 

武田病院

不整脈治療センター長 垣田 謙

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。

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