医学・看護教育を支える企業 ~従業員が元気で長く勤められる環境づくり~
株式会社京都科学様は、医学・看護教育を支えるシミュレータや実習モデルの分野で、国内外に広く知られるリーディングカンパニーです。一方で、従業員の健康や働きやすい環境づくりにも力を入れており、「平均残業時間5.5時間」「入社3年後の新卒定着率90%以上」「パート従業員を含めた健診費用の全額補助」など、さまざまな取り組みを実践されています。そこには、「従業員には健康で長く働いてほしい」という同社の思いがあります。今回は武田病院健診センター営業部の藤岡課長が同社を訪問し、総務部総務課係長の笹部義之様、主任の重藤真美様、佐々木葉子様に、従業員を大切にする同社の環境づくりについてお話を伺いました。

「健康で長く働いてほしい」正規・非正規を問わず人間ドックを全額補助
藤岡 京都科学様と言えば、シミュレータや実習モデルがとくに有名ですね。我々武田病院グループも、資格取得やスキルアップの面で日頃からお世話になっています。また、京都の病院グループとして、ここ“京都”を代表するものづくり企業が、医療教育の分野でリーディングカンパニーとして活躍されていることに、私自身も誇りを感じています。
笹部 過分なご評価をいただきありがとうございます。仰っていただいているように、医療の安全と技術を“モノづくり”の力で支えること、そして医療者の方々が安心して技術を磨ける環境をつくることが、我々の使命だと考え、日々努力しているところです。
藤岡 医療者は、技術を高めることが不可欠ですが、もちろん実際の患者様を相手に練習するわけにはいきませんし、本番で失敗することも許されません。その意味でも、シミュレータやファントムは、医療者の技術向上や医療安全に欠かせないものだと思います。
笹部 そう言っていただけると嬉しいです。医師や看護師をはじめとする医療者の方が、繰り返しトレーニングできる環境をつくることで、能力向上はもとより医療事故の防止につなげること。そして、それによって「患者様が安心して医療を受けられる環境づくり」に寄与することを、一番の目標としています。
藤岡 まさに、医療の安全を支える重要な役割ですね。そうした製品やサービスを生み出す京都科学様を支えているのが、そこで働く従業員の皆さまなのだと思います。では、その従業員の心身の健康維持については、どのようにお考えでしょうか。また、どのような取り組みをされていますでしょうか。
笹部 従業員には健康で長く働いていただきたいので武田病院さんに健診をお願いするようになってからずっと35歳以上の従業員には「人間ドック」の受診を推奨しています。人間ドックの胃部検査では、胃カメラを選択できるようにもしています。
藤岡 人間ドックについても会社で費用をご負担されるのは、素晴らしい取り組みだと思います。人間ドック対象の方の婦人科健診の費用負担も実施されておられますよね。
佐々木 ここ数年で、女性従業員数名が婦人科系の病気に罹患するケースがありました。これを受け、婦人科系の健診についても費用を会社が補助することで、皆が受診できるよう推進しています。それだけでなく、インフルエンザの予防接種についても全額補助し、就業時間内に接種してもらえる環境も整えています。
藤岡 人間ドックの補助や婦人科健診の費用負担について、正社員だけでなく、パート社員にも同様に行われているのですよね。
笹部 はい。正社員・パート(正規雇用・非正規雇用)に関係なく、会社が費用の100%を負担しています。
藤岡 パート従業員の人間ドック費用まで企業でご負担されるケースは珍しいので、初めてお聞きしたときは「皆様ですか?!」と驚きました。
笹部 そうだったのですね。従業員でいると、それが当たり前のようになってしまいますので、驚かれることを意外に感じてしまいます。
藤岡 健診への取り組みからも、他にはないほど従業員を大切にされている企業だと感じており、ぜひこの“Voice”で広くご紹介したいと思っていました。今回、ようやくその思いが叶って良かったです。
「健康経営」は目的ではなく、従業員を大切にするための結果

藤岡 驚くのは健診だけではありません。「平均残業時間5.5時間」「入社3年後の新卒定着率90%以上」「有給休暇取得率90%以上」「産休・育休取得率100%」と物凄い数値を示されています。
笹部 ありがとうございます。これまでの様々な取り組みが評価され、今年は「健康経営優良法人」に認定されました。外部評価は嬉しいものですが、認定自体が目的ではありませんので、これからも従業員の健康を支えられるよう本質を見据えた環境づくりを行っていきたいと考えています。
藤岡 外部評価が目標ではないということですね。
笹部 実のところ社内では、評価基準をみて「これはもう達成している」という感覚で申請しています。長く健康に勤めていただくのが根本的な当社の考え方なので、極端な例ですが昔は“定年”がなくずっと働いてもらっていました。それが、法整備によって定年が発生することになるなど、何かの基準が出来て、それを後から意識するということが往々にしてあるのです。
藤岡 従業員を大切にする活動が先にあり、様々な認定は、プラスアルファとして行っているとの印象ですね。
笹部 概ね仰る通りです。基準を見て「これは取得できそう」「これは既に達成している」といったことをしています。この例外となるのが残業時間の短縮で、「2023年度:7.6時間」「2024年度:6.5時間」「2025年度:5.5時間」と近年、急速に進んできています。
藤岡 何か他の企業にない特別な取り組みをされたのでしょうか?
笹部 それが、特別なことは何もやっていないのです。世間でもワーク・ライフ・バランスや働き方改革と言われることが多くなったからか定時に帰ろうと考える従業員が増えてきていて、それに“つられる”ように、社内の雰囲気が変化していった感じです。
藤岡 そうなのですね!時代の声に対応し、業務の効率化が進んでいったということなのでしょうか。
笹部 それもあるかも知れませんが、従業員の意識が全体に良い影響を与えてくれたものと感じています。
藤岡 笹部様は、採用のご担当もされておられるとのことで、今の時代に何が求められているのかを敏感に感じ、対応されているのではないかと思います。
「戻ってきてね」の言葉が支える、安心して育休を取れる職場
藤岡 先程ありました外部組織による認定と言えば、“子育てサポート”におけるリーディングカンパニーの証とも言える「プラチナくるみん」を取得されましたね。
重藤 これも先程の話と同様で、当社では男性だから、女性だからという区別なく、皆が長く勤められる環境づくりを行ってきたことが根本にあります。出産や育児、介護などがあっても休暇を取得することや時差出勤が出来るよう、時代を先取りして独自に行ってきました。それが、例えば2010年の「『京都モデル』ワーク・ライフ・バランス認証企業」(京都府)、2016年の「京都の子育て応援企業認証」(京都府)、2023年の「くるみん認定」(厚生労働省:次世代育成支援対策推進法)、2026年の「プラチナくるみん認定」(前同)につながったものと思っています。
藤岡 受賞の数も歴史も凄いですね。育児や介護とお仕事との両立は、これまで以上に重要なテーマとなっています。
笹部 まさに私も今、育児を行っておりますので、それを実感しているところです。当社は育児休暇、介護休暇はもちろん、時短勤務や時差出勤にも柔軟に対応しています。とくに時短勤務は「小学校6年生まで」選択できるようにしています。
藤岡 制度はあっても、実際には取得しにくい会社があるとの指摘もありますが、京都科学様は取得しやすいよう工夫されていそうですね。
重藤 もちろん誰かが抜けることによる“バタバタ感”は大なり小なりあるのですが、近年では従業員の出産が続いており、取得するのが普通になってきています。
藤岡まさに「お互いさま」という雰囲気があるのですね。近年は出産される方も増えているとのことで、職場全体で育児を支える文化が根付いていることが伝わります。
笹部 それとここ数年で大きく変化したのは「男性の育休」でしょうか。男性の育休は社内でも取得した人はいなかったのですが、5年ほど前に自身が取得できる立場になった時、くるみん取得のための実績作りというのを大義名分に取得しました。
藤岡 笹部様ご自身が率先して取得されたことが、後に続く皆さんにとっても大きかったのでしょうね。
笹部 自分だけで終わると本当に認定のためだけに取ったようになってしまうので、後進にも取得を進めていて、それからは皆が取得してくれています。結果、男女とも育休は100%の取得を達成しています。
重藤 私もこれまでに二度、育休を取得させていただきました。はじめての育休の申請時は「嫌な顔をされないか」心配もありましたが、皆快く受け入れてくれ、それだけでなく「戻ってきてね」という温かい言葉もいただきました。それがとても印象的で嬉しかったです。
藤岡 「戻ってきてね」と言ってもらえるのは、すごく心強いですね。制度として育休が認められているだけでなく、職場に戻ることまで含めて応援してもらえると、「ここで長く働きたい」と思えますよね。
重藤 制度があるだけでなく、理解のある環境なのだと実感し、2人目のときも安心して出産できました。本当に長く勤められる安心感があります。
藤岡 それは大きいですね。制度の有無だけではなく、「安心して使える」ということが大切なのだと感じます。京都科学様が従業員の方を大切にされていることが、こうしたエピソードからもよく分かります。
一人ひとりの健康を支える、健診とその先のサポート
藤岡 それでは、お一人おひとりの健康を支えるものとして、「健診」「人間ドック」について、あらためてお考えをお聞かせください。年2回、巡回健診をご利用いただいていますが、受診にあたっては、男性・女性をそれぞれまとめて受診できるよう手配されたり、健診後のフォローをされたりと、企業側でもさまざまなご対応があると思います。実際にはいかがでしょうか。
佐々木 本来、付随する業務は多いと思うのですが、武田病院健診センターさんのサポートに助けていただいています。例えば会場設営一つをとっても手際よくしていただけるので、こちらは準備することがないくらいです。
藤岡 そう言っていただけるのはありがたいです。佐々木様をはじめ、皆さまに事前の準備をしっかりしていただいているからこそ、スムーズに進められているのだと思います。
佐々木 当日の準備や撤去だけでなく、受診漏れの管理や再検査についても柔軟にご対応いただいています。ただ、受診予定者の欠席や体調不良などについて、本人からの申請がないケースでは対応が遅れることもあり、そこは今後の課題だと感じています。それと、現在は婦人科系のがん検診のみ無料としていますが、男性についても何か無料で受診できるものを提供できないかと検討しています。そうすることで、より積極的に健診を受けてもらえるのではないかと考えています。
藤岡 それはぜひ一緒に考えさせていただきたいですね。従業員の皆さんに「受けてもらう」だけではなく、「受けたいと思ってもらう」ための環境づくりということですね。 また今回は、巡回健診でも健診アプリの「NOBORI」をご利用いただくことになりましたので、導入にあたって皆さまのお手間が増えるのではないかと少し心配していました。
佐々木 NOBORIアプリが巡回健診で必須となった際は、戸惑いや反発の声も多くなるかなと心配しましたが、意外と問題なく対応できたと思っています。
藤岡 それは本当に良かったです。最近はお店でも注文をQRコードから行うことが当たり前になってきていますので、そうしたこともあって、以前ほどデジタルサービスへの抵抗感がなくなってきたのかもしれませんね。実際にNOBORIを使ってみて、いかがでしょうか。
笹部 個人的には、すごく良かったと思っています。かかりつけの医療機関でも見せました。医師には、スマートフォンの画面は少し小さかったようですが。
藤岡 インターネットにつながるPCが医療機関にあれば、連携することで、NOBORIの情報を大きな画面に表示することもできます。
笹部 そうなのですね。また使い方を教えてください。
藤岡 はい、ぜひお願いします。これから皆さんの健診データが蓄積されていきますので、翌年、さらにその翌年と、過去の結果と経年比較できるようにもなります。長く健康に働いていただくためにも、ぜひ活用していただければと思います。
「見えないところで医療を支える」ものづくり。その魅力をもっと伝えたい
藤岡 こうした従業員を大切にする企業であることは、例えば採用の面で大きく影響するのではないでしょうか。入社3年後の新卒社員の定着率が90%以上という数値にも現れていると感じます。
笹部 ありがとうございます。実際、リクルートの場面では「福利厚生がすごいですね」と言って、話を聞いてくださることが多いです。ただ、それをきっかけに興味を持っていただけるのは嬉しい一方で、それだけを理由に入社を決めていただくのは、少し違うのかなという思いもあります。
藤岡 福利厚生の充実はあくまで入口であって、その先にある「どんな会社なのか」「ここで何をしたいのか」という部分を知ってもらいたい、ということですね。
笹部 そうですね。福利厚生は確かにすごいかもしれませんが、会社そのものの魅力を感じて入社してもらえたら、と感じています。
藤岡 なるほど。制度そのものだけではなく、そこに込められた「従業員に長く健康に働いてもらいたい」という会社の考え方こそが、京都科学様の魅力なのかもしれませんね。では、あらためてお聞きしたいのですが、御社の魅力を一言で表すとすれば、どのようなところでしょうか。
笹部 京都科学は一般にあまり名前が知られていない企業ではありますが、人の命を救う可能性を広げる企業です。私たちの製品は直接患者様の命を救うといった類のものではありませんが、命を救う医療従事者の手助けは出来ます。直接的ではないにしても、命を救う現場で役立っているというところが京都科学の魅力だと思っています。”一般に名前が知られていない”という部分は不本意なので(笑)、こういった機会で名前を知ってもらえると嬉しいです。
藤岡 そのお話を伺うと、まさに「人を通じて医療を支える」ものづくりなのだと感じます。医療を提供するのは「人」ですが、その技術を磨き、安全な医療につなげるために欠かせないのが教育やトレーニングです。京都科学様は、直接患者様と接することはなくても、その先にいる患者様の安心や命につながる、とても重要な役割を担っておられるのですね。
笹部 ありがとうございます。私共は2010年から「京都モデル」ワーク・ライフ・バランス認証企業として努力を重ねています。製造面においても、京都のものづくりを牽引していくような企業の一つになれたらと思っています。
藤岡 これだけ素晴らしい実績をお持ちなのに、とても謙虚にお話しされるところにも、京都らしさを感じました。本日は本当にありがとうございました。
※文中敬称略

株式会社京都科学
https://www.kyotokagaku.com/jp/
■所在地
京都市伏見区北寝小屋町15番地
■事業内容
医学・看護教育用シミュレータ、医療画像用ファントムの製造販売
■従業員数
約210人。うち約120名が正社員。90名がパート。
男女比は男性100名、女性110名。
※2026年9月1日現在
