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たけだ通信 No.110(8月発行)

武田病院グループ会長 武田隆男

読書

武田 隆男
武田病院グループ 会長

 武田 隆男

■読書

 齢を重ねると、書籍や新聞を隅々まで読むのが少しずつ億劫になってきましたが、公私的な役職をいただいている関係もあって、毎日、複数の新聞に目を通し、本屋さん廻りをしてそれなりの知識を得ておくのが習慣になってはいます。今号も、何を書こうか迷っていたところ、若い世代の活字離れのニュースを目にし、医療従事者の目線で考えてみました。

 2014年度の文化庁の「国語に関する世論調査」によりますと、雑誌などではない各種書物を1カ月間に1冊も読まない人が、ほぼ半数の47.5パーセントに上り、5年前に比べると1冊も読まない割合は1.4ポイント、さらに12年前に比較すると10ポイント近く増えているということです。

 私たちの年代では読書習慣は当たり前のことで、つん読ではないですが、机や寝床の周りには教科書やら学術書まで山積みになっていたものです。この調査では、本を読まなくなった年齢層が私と同じ世代らしく、全く読まない割合が70歳代以上では59.6パーセント、60歳代でも47.8パーセントもあったのには驚かされます。

 パソコンやインターネット、スマートフォン、またテレビなどからの視覚的な情報が簡単に得られることが活字離れの背景にあるのは確かでしょう。一々、紙媒体の書籍を引っ張り出して、ページをめくりながら時間をかけて読むよりも、細切れの情報でも短時間で入手できるのは事実ですが、積み重ねなければいけない本物の知識としてインプットできているのかどうか、疑問に思えてなりません。

 人間の脳の働きとしては、目で読み、手で書き、必要な情報を記憶に留めておくことによって知識となるようです。画面を通して得た膨大な情報を、瞬時に脳が選り分けて知識化することができるとは、どうしても思えないのです。物忘れが気になってきた昨今、実は、この原稿を情報機器に頼って書いている私自身が悩んでいるところです。

 悩みというわけではありませんが、2年毎の診療報酬改定が今年も行われましたが、外来報酬の柱とされる「認知症地域包括診療」の加算や、「質の高いリハビリテーション推進へのアウトカム評価」の導入など、病院にとってプラスのようで、マイナス改定であった点は否めせん。

 今、病院経営を取り巻く環境は大きく変わりつつあり、地域連携、病床機能再編といった変化が次々と押し寄せていますし、少子化や超高齢社会の到来となる2025年を見据えた病院機能再編に力を注いでいるところです。その一環としまして、今夏、康生会武田病院の一部に外来棟を増設し、悪性新生物(がん)に対する化学療法設備を整えたところです。2015年の全死亡者に占める割合を見れば、実に28.7パーセント、3.5人に1人ががんで亡くなっております。1981年以降に死因1位になって以来変わりません。人や物の流通の拠点、京都駅前の立地や24時間救急体制を維持する上からも、より一層、地域に根ざした医療の提供に努めて参りたいと考えております。

 ゲーム機器大手任天堂とアメリカの企業が開発した、スマートフォンの仮想現実ゲーム「ポケモンGO」が人気で、京都の神社仏閣やパワースポットへ幅広い年齢層の方が押し寄せ、ながら族による事故が起こり、JRなどがゲームのエリア対象から削除するよう企業側に申し入れていると聞きます。ゲームやライン、ツイッターといったインターネット依存症への対応も、医療界でぼちぼちささやかれてもいます。

 110_kaicho.jpg「読書は大脳のトレーニング」と言われるように、本の中の景色や音、臭いや味を想像するだけで心も脳も癒されます。自然の営みに触れ、音楽に聞き入る。中でも絵を描くことはいいそうです。絵を描き始めて30秒後には脳が活性化したという研究も発表されています。武田病院グループを支えていただいている全職員の皆さんも、仕事の合間を縫って、脳の活性のためにも活字に親しみ、趣味の幅を広げていただくことを願っております。

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