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たけだ通信 No.99 (11月発行)

武田病院グループ副理事長 武田道子

医療崩壊

photo_fukurijicho.jpg【エッセー】
武田病院グループ 副理事長
康生会武田病院 名誉院長
社会福祉法人 青谷福祉会 理事長
 武田 道子

■医療崩壊

安心安全の医療は果たして実現されるのでしょうか。最近では、地域医療の崩壊が話題となり、産科、小児科、救急医療の危機が叫ばれるようになりました。

超高齢社会の到来で、これからの医療はどうなって行くのでしょうか。我国の医療は、平均寿命では世界一であり、死亡率は最低となり、これだけを見れば世界のトップクラスにあります。

一方で、医療費に於ては世界で最も安価でありながらも、それなりの高い成果をあげて居ります。国民皆保険をかかげる我国ですが、近年は自己負担額があがって来ているので、窓口で支払う額が高くなって、支払う皆さんには負担が大きくなったように思われていることと思います。

我国の医療では今、マンパワー不足と云う深刻な問題をかかえて居ります。
介護に至っては、更に深刻な状態です。

先ず看護師の不足や医師の不足があります。看護師は家庭に入ってしまっている人も多く、また、就労先が公的病院に集中していることも、我々民間病院や地方病院では大きな問題となって居りま
す。

政府は長年にわたり、医療費を過度に抑制してまいりましたので、我国の医療制度は今、ガタガタの状態になって来て居ります。

医療を守る為には、医療費とマンパワーが必要なのです。高齢化が進む中、医療費の総額が増大されるのは当然のこととなります。しかし、この医療費が増大されれば、病院で働く人も増え、病院のマンパワーが充実して来ることは間違いありません。が、我国の経済活力を伸ばす一方で、その増大する医療費を負担する財源がありません。誰でもどこでも安心して医療が受けられる方策が、今の政府には勿論ですが、国民も考えてみなければならない時期に来ているのではないでしょうか。

医療はサービス業と云われて居りますが、赤字経営では成り立ちません。日野原重明先生は常々、医療はアートであるとおっしゃって居ります。国民が元気でなければ、国は元気になりません。国民が元気である為には、医療は欠かせません。今や我国では、健康で長寿の方が増えて来たのは、やはり医学の勝利と云えるでしょう。企業社会も同じことです。

医療の質の向上に関しましては、専門医制度がとり入れられ、生涯教育の時代となりました。しかし、医師の分布はなかなかうまく行っていないのが実状なのです。即ち、都市集中型で偏在しているのです。更にあまりに専門に特化して行くことも無理が生じます。今ここに来て、家庭医、総合内科医などの存在が必要だと云われるようになりました。個々の御家庭の状況をよく知って居られる先生方が、先ず相談にのって下されば、無駄な救急も少なくなることと思います。専門医の必要があれば、そこから紹介して下さることが最もスムーズに行く方策なのではないでしょうか。

t-tsushin99.huku1.jpg医師は、患者さんのお話をよく聞き、治療方針をたて、説明するのが元来の診察でした。しかし今、いきなり病院へ来られても、じっくりお話しが出来ないのが実状です。電子カルテの時代になり、医師の説明もなく、場合によっては充分顔も見ないでお薬が処方されると云う苦情もよく聞きます。これでは患者さんの満足度が得られません。私など昔の医療を経験した医者は今、患者さんの顔を見てお話しをしながら診察出来る方法は無いものかと思って居ります。

コミュニケーションが、心を開いて下さる最良の方法と思いますが、現代医療ではむづかしいようです。このまま先進医療はどんどん進んで行くのでしょう。

今、介護の世界では、少し違った感を受けています。やはり云葉をかけ、人の手のぬくもりを感じて頂け、コミュニケーションがとれていると思います。

歯科医師の先生方の間では、患者さんを個人として尊重し、良好なコミュニケーションがとれる人間性が求められていると云う文章を目にしました。やはり医療も介護も、コミュニケーションが大切だと思って居ります。

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