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たけだ通信 発行号

武田病院グループ会長 武田隆男

東日本大震災の復興へ一歩 〜医療者としてできることを着実に〜

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武田病院グループ 会長
 武田 隆男

■東日本大震災の復興へ一歩 〜医療者としてできることを着実に〜

東日本大震災の発生から1年近くが経ちました。国を挙げての復興復旧が急務であるはずですが、本格的な復興実践への槌音は、一向に聞こえてまいりません。それよりも、先の大戦からの目覚ましい復活ぶりに合体させるかのように、世界中から注視された、その情熱と愛国的な当初の行動力は影をひそめ、ボランティアを中心とした活動情報さえも途絶えてしまったようです。

もはや、遠い国の出来事か、他人の世話にいつまでもかかずらっておられないといった、"風化"のうわささえささやかれ始めています。旧ソ連、ウクライナ共和国でのチェルノブイリ原発爆発事故では、発生から25年後の現在でも、半径30キロ圏内は人の立ち入りが禁止され、その他、半径350キロ以内でも、放射性物質により高濃度に汚染されたホットスポットと呼ばれる地域においては、数十万人が移転をよぎなくされているのが現状です。

われわれ世代ならまだしも、心配されるのは、次代を担う子供たちへの影響です。ウクライナでは、1990年代に子供の甲状腺がんが急増し、1995年代からは減少傾向にあると言われています。しかし、それは子供が成長し、免疫力が高くなって抑えられているためで、成人に達した時からのがん発症への不安は消えたわけではないのです。

医療者のひとりとして、継続的にグループ病院や施設での義援金活動を行うとともに、被災者の医療行為希望者の積極的な受け入れは今後も実施してまいります。また、医師を含めた職員の皆さんにも、ボランティア活動への参加について積極的に呼びかけ、支援の手を差し伸べるつもりでおります。1日も早く、東北各県の皆さんが安心・安全・平安の日常を取り戻されることを祈念いたします。

さて、日本が置かれている世界での立場は、年々、脆弱さの一途をたどり、原発問題や経済・財政の危機的な状況とともに、国際的な信用は地に落ちた感じです。とりわけ日本では、自民党の安倍晋三首相から民主党の野田佳彦首相まで、この5年間で6人の首相が1年刻みで交代しました。

「日本の借金」の数字は毎年増え続け、現在800兆円を突破しました。企業でいえば、とうの昔に破産宣告を受けています。勤勉な国民の貯蓄に頼るのが唯一の道らしいのですが、国民一人当たりの負担額が683万1955円ということですから、とても払いきれる額ではなく、結局、未来世代へ積み残しとなるのは目に見えています。その他、超高齢社会到来による年金制度破たん、北方領土・竹島・尖閣諸島や拉致問題、東シナ海資源開発問題、沖縄基地問題など難問は山積しており、これらの解決への道筋を見つけるには、現政権の強力なリーダーシップが期待されてはいるのですが、果たして可能かどうか不透明きわまりない感じです。

医療界に目を向けて、来年は6年に1度の診療報酬・介護報酬の同時改定が予定されています。厚生労働相は、「今の財源の状況で大幅というのは無理だが、少しでも上乗せしたい」と述べ、首相も、「基本的にはマイナスはない」と発言しています。ただ、東日本大震災復興という高いハードルがある以上、改定先送り(日医見解)が妥当でしょうが、何としてもプラス改定が望まれます。また、消費税にかかわる医療機関の損税も解決しなければ医療危機につながるのです。

医療界を取り巻く環境は大変厳しいものがありますが、武田病院グループでは、今年度は新しい医療事業の展開は少ないものの、着実な前進を遂げています。それもこれも、職員の皆さんのたゆまない努力と、医療業務への献身的な日常の積み重ねがあるからにほかなりません。

来年の干支は「辰」です。中国では「龍」は、「虎躍龍騰」とあるように、空を飛び、世の水と火を支配し、一吹きで大地に豪雨を注がせ、一息で大地を凍りつかせる神秘の力を持った存在にたとえられています。武田病院グループの広報誌『たけだ通信』も、今号で99号、創刊1982年以来、来年には100号を迎え、一層の充実を図ってまいります。最後に、敗戦後の奇跡の復興の再現とともに、職員の皆さんの安寧を心より願っております。

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