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たけだ通信 No.102 (6月発行)

武田病院グループ会長 武田隆男

医療現場にとってのエネルギー危機

photo_kaicho.jpg【エッセー】
武田病院グループ 会長
 武田 隆男

■医療現場にとってのエネルギー危機

自民党、公明党が政権に復帰し、安倍晋三首相が2度目の総理総裁となって5カ月あまりになりました。
デフレからの脱却など、アベノミクス(安倍経済戦略)が功を奏しています。円安、株高は目を見張るばかりです。

日本固有の領土尖閣諸島など、東アジア海域での中国の覇権主義は、時代錯誤もいいところです。もう一つの隣国も又、領土問題や色々な事を引き起しています。両国とも日本の科学技術等や絶頂的に援助も与えているのです。

北方領土についても、又、北朝鮮の核保有問題等々、我国にとっては、将来の事を含めて、重大な問題があります。このためもあって、同盟国アメリカを中心とした国際間の強い絆と、友好関係の構築を安部首相は、緊急の課題として頑張っています。 
しかし、いずれの課題とも一歩でも執るべき手段と道を誤れば、国の存立をさえ脅かす重要なものばかりです。

その一つ、安倍首相が参加を表明しているTPP(環太平洋連携協定)については、日本の農業危機ばかりがクローズアップされていますが、私たちの医療界にも大きな関わりがあることを無視するわけにはまいりません。

確かに現時点では、TPPが高いハードルとして設定している「例外なき関税撤廃」の最大の狙いは農産物の市場開放にあるのでしょう。ただ、いずれは医療分野にも触手を伸ばしてくる可能性は高いと思われます。
病院運営について、ある程度は認めてゆかざるを得ないかもしれない「混合(自由)診療の解禁」がまず考えられます。そのほか、医療への企業参入の促進や、医療機器・医薬品、人材登用の自由化などが取り沙汰されていますが、何より、私的な医療保険の拡大は、(米国の私的保険は医療を支配している)日本が誇る国民皆保険制度を根底から揺るがす危険性をはらむことになりかねません。しっかり対応していかねばなりません。

私ども医療機関は、診療報酬体系のもとで、公的費用として医療収入を得ています。その中で、数多くの医療従事者が医療を支えて、しかるべき賃金を支援した後の余剰金で設備投資や学術研究費用等を捻出しているのも現実です。TPP参加表明を機に政治に任せきりではなく、医療従事者も真剣な論議を重ねる必要があるものと考える次第です。

二つ目は、11・3・11の東日本大震災による福島第一原発爆発事故に端を発したエネルギー問題です。人工呼吸器、人工透析、緊急手術など、医療機関が直面している電力不足や停電といった"事件"への不安、それに代わる代替電力への投資と負担は大変なものがあります。重症の筋萎縮性側索硬化症患者さんにとっては、直接、生命に関わるだけに、医療機関の責任は深刻です。

「脱原発」「原発再稼働反対」「原発ゼロ」を掲げることが先進的・革新的理論で、「国民総意でもある」とも喧伝されていますが、使い放題であったエネルギーが本当に原発ゼロ?になった時に、国民総意での耐乏生活は可能なのでしょうか。「原発の代替は再生可能エネルギー」との主張についても、CO2(二酸化炭素)や、近未来での枯渇が指摘される化石燃料などの問題も踏まえて論議を尽くしていただきたいものです。人類が得た原子力の技術を発展させる事が大切であると思います。事故の起こらない原発に発展させる事が人類の使命でしょう。次世代のため、ずっと後世のこと、地球も、人類の存亡にかかることです。人類が発見し、作ってきた知恵を更に深めていかなければなりません。

私どもグループ病院でも、節電対策として、各施設に常用発電機(天然ガスコージェネレーションCGS)など自家発電に取り組んでいますが、それとて一時的なもので長期にわたるエネルギー対応は不可能と言わざるを得ません。多くの人命をお預かりし、今後もお預かりし続けねばならない医療従事者としまして、自身で補えるエネルギーづくりに懸命に取り組む覚悟だけはしてまいる所存です。

医療を取り巻く環境は、上記の諸問題だけでなく、挙げればキリがありませんが、武田病院グループでは、今年4月1日に開設しました「武田病院脳卒中センター」のセンター長として三重大学脳神経外科教授だった滝和郎先生をはじめ、グループ全体で新しい医師51名と研修生12名、看護師、セラピストなど170人を超える新人採用者を迎えることができました。ひとえに医療者をはじめ、グループ職員の一致団結した運営努力のおかげであると感謝しております。

辞令交付式でも述べましたが、21世紀は医療の高度化やiPS(万能細胞)といった新しい発見や優れた技術が進歩して、我々の予想を超えた先進的な医療が行われるようになってきており、病院医療の仕組みや医療そのものについての考え方の再構築が迫られています。しかし、病院にとっては、マンパワー無くして一歩たりとも前進できないのも事実です。一人一人の患者さんに対して愛、仁、慈愛といった、思いやりのある温かく優しい心と、気配りの心をもつ人材に育っていただくことを期待し、武田病院グループのさらなる発展にご尽力をお願いいたします。

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