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アスニー講座 からだを知ろう

アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2015.10.15 歯周病と全身疾患との関わりについて

医仁会武田総合病院
歯科・口腔外科 部長
後藤  和久  氏

■歯周病とは
歯周病は、歯の周りにある組織全てに起こる細菌感染による疾患のことをいいます。歯を支える歯茎が炎症を起こすと、赤く腫れたり出血しやすくなりますが、出血するからといって歯磨きをしなくなると、症状がどんどん進んでしまいます。やがて歯茎の下の骨がどんどん壊され、歯がぐらついて最終的には抜けてしまう可能性があります。これが歯周病の流れです。歯周病の原因であるプラーク(歯垢)という細菌などの集まりがやがて歯石となり、歯磨きでは取れない硬さになります。歯と歯茎の間の歯周ポケットに入り込んでいくと歯周病の進行の原因となります。歯石を取るときに歯科衛生士が使うスケーリングでは4〜5ミリが限界ですが、実際の歯根の長さは10〜20ミリくらいあり、歯周ポケットが深くなれば例え歯根が長くても歯を残すことが難しくなります。

■歯周病の原因
歯周病の原因はさまざまですが、歯の周囲にプラークが溜まってゆくことが原因となります。加えて歯並びが悪かったり、歯科での治療がうまく合っていなかったり、口で呼吸するなどの悪習癖があると、比較的歯周炎になるリスクが高いと言われています。生活習慣では、喫煙や生活リズムが不規則であったり、ストレスなども原因となります。食生活では、糖質や脂質に偏ったり、歯につきやすい歯周組織にとってあまり良くないものばかりを選んでしまうと、食べカスがついたりしてプラークが溜まり、歯周炎になりやすくなります。また、口の中には口腔常在菌層があり、必ず細菌がいます。その数は大体700種類といわれていて、唾液1ccに1億ぐらいの細菌の種類が入っているのです。その中には、比較的悪さをせずにそのままいついてくれるものや虫歯(う蝕)の原因となるミュータンス菌などがいます。主な歯周病菌は、Pg菌、Td菌、Tf菌で、歯周炎の原因とされています。

■歯周病と糖尿病
歯周病は、糖尿病の第6番目の合併症と言われています。糖尿病の人は、血糖値が上昇した状態が続き、インスリン抵抗性であるということはもうわかっています。糖尿病の人は、歯周炎になると、口腔内の免疫反応がうまく機能せず、口の中に細菌が入っても助けてくれる機能が低下して、歯茎を修復しなくなって、歯と骨をつなぐ歯垢膜も機能しなくなります。やがて歯を失うと、硬いもの、大きなものは食べにくくなり、柔らかくて口当たりがよく、甘くて喉越しのいいものを求めがちです。ところがこれらの多くは脂肪や糖でできていて健康からは遠ざかるものばかりです。よく噛めないとおいしいものも食べられません。噛むことはとても大切です。歯を磨いてよく噛んで唾液をだして、口の中の健康を保ちましょう。

■悪の連鎖を断ち切るために
酸素の無い条件下で生育する嫌気性菌が排出した毒素が歯肉出血などによって血中に入ると、免疫反応が起こります。体内に侵入した細菌などを消化して分解するマクロファージという細胞が活発化し、普段から炎症や免疫で働く細胞が増加すると、エンドトキシン(細菌から出る毒素)に対してサイトカイン(免疫力物質)を出します。その中のTNF-αという物質は、がんに対抗するほどの強力な物質で、糖尿病にインスリン機能を抑えるため悪く作用し、歯周炎が糖尿病に加担するような働きをしてしまうのです。歯周病と糖尿病は、無症状、生活習慣病が原因、自己管理で予防することができるという共通点があります。歯周病を治療すると、糖尿病が少し楽になるという研究結果も出ています。歯を磨いたり、歯石を取るなどの歯科治療で歯周病を予防するとともに、糖尿病予防をして悪の連鎖を断ち切りましょう。

■歯周病と全身疾患
●心疾患
歯周炎になって、ブラッシング時などに歯茎から出血すると、そこから細菌が入って心臓に血液が戻れば、体中に口腔内の細菌を撒いてしまうことになります。免疫力が悪さをすると、感染性心内膜炎を起こす可能性があります。ほかにも脳は、生きていくために栄養を必要としますが、その一つがグルコース(糖)が体内に入ることに対して血管内にバリアを張ろうとしないため、歯周病だけではなく糖尿病も進みやすいといわれています。

●低体重児出産
お母さんと赤ちゃんとつなぐへその緒は、血の巡りを通して影響があります。ですので、糖尿、歯周病の細菌やその中にある毒素、それに関係するサイトカインが赤ちゃんに入ってしまうと、常に炎症を起こして膿んだ状態に赤ちゃんをさらすことになり決してよくありません。

●誤嚥性肺炎
病院や施設、在宅介護などの介護を要する人たちは、座って食事を取る人もいますが、中には吸い口や横になったまま食事をとる人もいます。寝たきりの人が食事を取るとき、あまり噛まなくてもいいものをどうしても選びがちですが、噛まないと筋力が衰えてしまいます。飲み込むことすら難しくなったときに、液体が肺に入ってしまうことがあります。誤嚥性肺炎の原因はいろいろとありますが、歯周病が原因の一つとなっていることも確かです。

●骨粗しょう症
骨は、破骨細胞が古い骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨を作ります。骨粗しょう症の人に対して処方される、ビスフォスフォネートという薬は、破骨細胞をコントロールして、生きている骨を壊さないよう抑えようとする働きがあります。ところがこのお薬を飲んでいると、一部の人の中には口の中に影響を及ぼし、顎骨骨髄炎を起こす可能性があります。ビスフォスフォネートを飲んでいる人は、歯科にかかるとき注意が必要です。

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