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アスニー講座 からだを知ろう

アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2012.10.24 脳卒中の診断、治療、予防

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脳卒中の診断、治療、予防


医仁会武田総合病院 脳神経外科 医長 田中 秀一


■脳卒中とは
脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血の総称を脳卒中と呼びます。

●脳梗塞...血管が詰まる
脳の細動脈に血栓や石灰片などが詰まって血流を止め、脳細胞が壊死してしまう病気です。脳は、一度神経がやられてしまうと現在の医療レベルでは治すことはできません。高血圧や糖尿病などの生活習慣病によって引き起こされる動脈硬化が危険因子とされています。ほかにもアルコールの大量摂取、喫煙なども原因の一つです。

●脳内出血...脳内の血管が切れる
脳内の血管が破れることでさまざまな症状を引き起こす病気です。高血圧や動脈硬化が原因で、ほとんど前触れもなく突然起こります。脳内出血の治療は時間との勝負でもあります。出血の範囲が広いと手術をすぐにしないと2、3日持たないといわれています。また、小脳に起こった場合、すぐに手術をしないと危険です。

●くも膜下出血...脳表の血管が切れる
脳動脈瘤の破裂が主な原因ですが、外傷性で起こることもあります。隙間に血が一気に広がるために脳が大きな衝撃を受けていろんな症状が出てきます。中年以上の女性に多く、痩せ型で喫煙者、お酒を飲む人が危険だといわれています。くも膜下出血は、遅くても2、3日以内、早ければその日に手術をして止血しないと、ほとんどの場合もう一度血のりが剥がれて大出血を起こしてしまいます。治療は開頭手術が主で、血管が膨れているところをクリップで挟みます。最近は血管の中から治療するカテーテル治療も行っていますが、動脈瘤の位置や患者さんの年齢など考慮する必要があります。

■脳卒中の症状
1)半身の麻痺や痺れ
ある日突然何かの拍子に半身が動かない、痺れる、感覚がないなど、半身の感覚障害が最も多いです。感覚障害が出る場所はさまざまで、手、足、顔のほか、目や舌など難しい症状が出ることもあります。

2)呂律難、言葉が出ない、わからない
理解できるが話すことができない、喉の動きが悪くてうまく言葉にならない、といった症状(構音障害)や、なめらかに話しているのに言葉が出てこない、人が言っていることがよくわからない(失語)などの症状が出ます。

3)眩暈、ふらつき
小脳に障害が生じた場合、めまい、握力や筋力はしっかりあるのに体に力が入らないなどの症状が出ます。

4)視力や視野の障害
突然何の前触れも無く片目だけ真っ暗になる(眼前暗黒感)ことが多いです。ただ、視野が欠ける場合は、脳梗塞ではなく脳腫瘍が隠れていることもあるため注意が必要です。

5)強い頭痛、頸部痛
脳梗塞の場合、頭痛が起こることはほとんどありません。強い頭痛が起こった場合、くも膜下出血もしくは脳内出血が考えられます。脳内出血の場合、頭痛とともに体が動かなくなったり、言葉が出なくなったりすることが多いですが、くも膜下出血は強い頭痛が起こっても手足は普通に動いて、言葉もしっかり話すことができます。

■脳梗塞
1)アテローム血栓性脳梗塞
脳の太い動脈に動脈硬化が起こり、コレステロールのカスや脂などによって出来たアテロームが血管内壁にくっつき、血管を狭くして詰まることで起こります。高血圧や糖尿病、中性脂肪やコレステロール、喫煙などで動脈硬化を起こすことが原因です。

2)ラクナ梗塞
脳の太い血管から伸びている毛髪ほどの細い血管が詰まって起こるのがラクナ梗塞で、60、70歳に多く発症します。一本が詰まるだけで手足が完全に動かなくなるなど非常に重い症状が出たりします。これも動脈硬化が原因で血管が詰まりますので、高血圧や糖尿病、喫煙といった生活習慣病に注意が必要です。

3)心原性脳塞栓症
心臓でできた血栓(血の塊)が、頸動脈を通って脳の太い血管に詰まることで起こります。特に注意が必要なのは心房細動で、これによって不整脈が起こり、血流が悪くなって血栓ができやすくなります。突然発作が起こるため、症状が強く現れることもあり、命に関わることもあります。

■一過性脳虚血発作
脳卒中は突然発症しますが例外もあります。ある日突然、脳梗塞を疑う症状が出たのに数分(2~5分ほど)で症状が治まり、長くても1日ほどで消えてしまいます。症状が治まったからといって放っておくと、2、3日以内に脳梗塞を起こしてしまう可能性もあるので、自己判断せず、救急車ですぐに病院へ行くことが大切です。

■無症候性脳梗塞
隠れ脳梗塞とも呼ばれますが、頭痛や手のしびれなどの症状が何にもないのに、偶然受けた脳ドックで脳梗塞と診断される方が実際におられます。これは直接症状を出さないような場所に脳梗塞が起こっているからです。症状が出ていなくても、脳全体としての働きが落ちてきたり、さまざまな箇所との連絡がうまくいかず認知症になる場合もありますので注意が必要です。

■脳梗塞の治療
大きく分けると内科的治療と外科的治療に分けられます。内科的治療は主に2つあり、1つ目は、血をさらさらにして流れやすくする抗血小板療法で、アテローム性の脳梗塞やラクナ梗塞の治療で行われます。2つ目は、血が固まりにくくする抗凝固療法で、心原性脳塞栓症の治療で行います。不整脈などの病気を合併している人は出血する病気になりやすいので、先生によく相談しないといけません。外科的手術は、開頭手術が主で、血管壁についたごみを剥離する手術や、血管内にステントを留置する方法、出血部分にクリップをして止血する方法などがあります。最近では、カテーテル治療も行われるようになってきてより安心して治療を受けてもらうことができます。最近は、血が固まって詰まったところを溶かすといった点滴治療もありますが、この治療に関しては発症してから3時間以内にこの治療を完了させないといけないという決まりがあるため、治療を受けられる患者さんが限られてきます。

■脳卒中の後遺症
後遺症は、顔を含む左右どちらかの手足がまひしているなどの運動障害や、しびれなどの感覚障害、言葉をうまく話すことができないなどの言語障害などがあります。また、ある日突然手が動かなくなってしまうため、うつ病になる患者さんも少なくありません。また、パーキンソン病を発症したり、てんかん発作を起こすようになったり、認知症を発症することもありますので専門医に相談して対応することが大切です。

■まとめ
脳卒中の症状があったら救急車で病院へ来て治療を受けてください。高血圧や糖尿病などの生活習慣に気をつけるのと、70歳を超えた方は心房細動がある場合、心房細動が原因で脳塞栓症になっている人が一番多いので、専門医に相談してみてください。

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