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アスニー講座 からだを知ろう

アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2012.04.25 運動は健康づくりの万能薬

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 運動は健康づくりの万能薬


医仁会武田総合病院 疾病予防センター係長 黒瀬 聖司


■死因1位はガン
日本人の死因の第一位はがんで、約34%の方ががんでお亡くなりになっています。二位は心筋梗塞や心不全などの心疾患で15.9%、三位は脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患で11.8%となります。実は二位と三位は血管の病気で、動脈硬化によって血管が障害されることで心疾患や脳血管障害が起きています。この二つを合わせると、がんよりも死因が多いことがわかります。

■メタボリックシンドローム
☆必須項目
 腹囲(ウエスト周囲)
  ・男性は85cm以上
  ・女性は90cm以上
☆選択項目(このうち2項目以上)
 中性脂肪→150mg/dl以上
 HDLコレステロール→40mg/dl
 収縮期血圧→130mmHg以上、拡張期血圧→85mmHg以上
 空腹時高血糖→110mg/dl以上

メタボリックシンドロームは生活習慣の乱れから始まり、長く放置すると虚血性心疾患や脳卒中など動脈硬化に関連するさまざまな病気を引き起こす原因となります。つまり、根本的な治療として、まずは生活習慣の改善が大切になります。

■運動すると血管が柔らかくなる
みなさんは、「運動をすれば血管が柔らかくなる」と聞いたことありますか。実は、肥満の人が30分から1時間の運動を週3回やると、血管機能が良くなることがわかっています。また、もともと血管内皮機能が障害されている人の方が運動による改善率が高いこともわかっています。
では、どんな運動をすればいいのでしょうか。血管を柔らかくするためには、歩行などの有酸素運動が効果的です。低強度から中等度の筋力運動は問題ありませんが、高強度の筋力運動は血管を硬くする可能性がありますので注意が必要です。そのため、筋力運動を行う場合は、筋力運動の後に有酸素運動を行うとよいでしょう。

■運動療法の急性効果と慢性効果
●急性効果:一回の運動ですぐに得られる効果
 血糖値の低下...特に糖尿病の人は歩くだけで血糖が下がる
 ストレスの解消
●慢性効果:運動を続けることで得られる効果
 肥満の解消
 血圧の降下
 コレステロールの正常化
運動はさまざまな効果がありますが、特に動脈硬化の予防に対する効果が期待できます。

■運動の種類や強度について
●運動の種類
大きな筋肉(特に下肢)を使い、長時間続けられる運動がおすすめです。散歩、サイクリング、ラジオ体操、社交ダンス、ゴルフなど有酸素運動であれば何でもいいと思います。自分の好みで選んでかまいません。

●運動の強度
会話をしながら、ニコニコしながらでもできるペースで行いましょう。息を切らして、がんばって行う運動は、かえって体に害を及ぼすこともあります。自覚的な強さで「楽である~ややきつい」がちょうどいいと思います。あとは主治医に相談したり、運動の専門家に相談してみてください。一日の歩数と体力は関連し、早歩きの歩数が多い人の方がより体力が高いことがわかっています。まずはゆっくり歩くことから始めて、楽になってきたら少し早く歩くことをしてみてください。

●運動時間
1回15分~30分、1日30~60分が目安です。脂肪を燃焼させるには10分以上運動しないといけないと言われていますが、そうとは限りません。人間は座ったり立ったりしている状態でも少なからず脂肪を燃焼しているのです。また1回30分歩くのと、30分を3回に分けて(1回10分ずつ)歩くのとどちらが効果的だと思いますか。正解はほとんど同じです。みなさんの体重を預金残高、食べたものは給料、預金を下ろすことは運動という風に考えて下さい。3万円(30分運動)を一度に下ろしても1万円を3回下ろしても残る残高は一緒ですよね。要はどれだけ食べてどれだけ使ったかということです。ただ、急激に体重を減らしてしまうと、体の防御反応が働いて、体内に脂肪を取り込もうとする作用が働いてしまいます。その時期は体重が増えなければOKだと思って過ごしてください。基本的に、使ったものと食べたもののバランスが大事なので、1回30分歩こうが10分を3回歩こうがほとんど効果は一緒です。意識的に歩くことは重要ですが、1日の生活の中で1万歩あれば十分でしょう。

●運動は食後の方がよい
食事のポイントは3つあります。
 和食を食べる
 よく噛む
 お茶もしくは水を飲む
以上のポイントを意識しましょう。個人差はありますが、基礎代謝として1000kcal~1500kcalは自然とエネルギーを使っています。それ以上にエネルギーを消費するには動かなければなりません。運動は食後に行う方が効果的です。特に血圧の薬など生活習慣病関係の薬を飲んでいる人は、必ず食後に行ってください。血糖値は食後2時間かけて高くなることから、食後に運動すると血糖値が下がります。また、慢性効果を得る頻度は、最低週2回です。いきなり無理な運動をせず、自分の体と相談しながらはじめるといいでしょう。

■日常生活での工夫
 家事の途中、テレビを見ながらなど「ながらストレッチ」を行う
 掃除のとき、腕を大きく動かす
 エレベーターを利用せず、階段を使う
 移動手段を徒歩や自転車にする
 万歩計をつける
ひざが痛い人は、痛くない足から階段を登りましょう。例えば、右が痛い人は左を先に上げて右を上げる、降りるときは逆で、痛いほうから降りるとよいでしょう。
これから運動しようかなと思う人は、まず10分だけ歩いてみてください。10分歩くと1000歩に相当しますからから、ひざや腰が痛くなければ10分ずつ増やしていってください。

■心臓病と運動
狭心症や心筋梗塞などで心臓の冠動脈の治療をした人は普段どおりの生活に戻して大丈夫なのか、運動しても大丈夫なのかと患者さんに聞かれることがあります。主治医の許可があれば、もちろん運動してください。また運動習慣がなかった人こそ運動習慣を身につけましょう。最近の狭心症や心筋梗塞の治療では、薬剤放出型ステントを使うことが増えています。このステントは血管が狭窄しにくい薬を塗ってあるステントで、半年以内の再狭窄率が低くなります。しかし長期的に見ると通常のステントと全く同じです。すなわち、動脈硬化の進展には生活習慣が大きく影響するのです。
冠動脈の動脈硬化の進展を予防するためには、1日230kcalの運動が必要です。今まで狭心症や心筋梗塞の経験がある人は、7000~10000歩ぐらいあれば全身の動脈硬化の予防になります。
歩くことや筋力運動に慣れてきた人は積極的にスポーツを取り入れてみるのもよいでしょう。卓球、ミニテニス、ゴルフなどのスポーツを用いた運動療法は体力のみならず、生活の質(QOL)の向上には有用です。

■目標設定が大切
どのようにすれば体重をうまく減らすことができるでしょうか。まず、目標とする体重は今の自分の体重の5%減少にしましょう。5%減るとさまざまな病気や合併症を発症する確率が低下します。また期間は3カ月が適当です。あまり長くしすぎても中弛みしますし、短すぎても大変です。達成しやすい目標設定を行い、達成で出来たら次の目標を再設定するようにしましょう。あまり無茶苦茶な目標を設定しても、達成できなければモチベーションが下がり、長続きしません。短期的な目標と、長期的な目標に分けることもよいと思います。

■運動を継続するポイント
運動は続けば多くの効果が期待できます。いわば、体の万能薬です。しかし、一番の課題が続かないことです。継続させるためのチェックポイントは、
(1)目的をはっきりさせること。自分にとっての運動の目的をはっきりさせることが大事です。
(2)効果を理解すること。水分補給のためにスポーツドリンクを飲んでいても糖尿病の人には悪化させるだけで逆効果だったということもあります。正しい知識と効果を理解することが大事です。
(3)効果の実感、検査値をみること。定期的に病院へ行っている方は検査データの変化を実感してみてください。百聞は一見にしかず。
(4)楽しむこと。日常生活の一部として取り入れてもらえればと思います。苦痛なことは長続きしません。
(5)定期的に専門の先生のアドバイスを受けること。自分のやり方が間違えていないか、定期的に修正してもらうことも必要です。

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