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たけだ通信 No.109(3月発行)

武田病院グループ専務理事 武田隆司

Inbound

photo_senmu.jpg【エッセー】
武田病院グループ 専務理事
医療法人財団 康生会 理事長
 武田 隆司

■Inbound

前回のコラムではマイナンバーについて書いてみた。
これは自分の理解を整理する意味もあったため、つい長文になってしまったのだが、結果として「文が長くて文字が小さくて読み難い」という貴重なご意見をいただくこととなった。

元来自ら情報を発信したり何処かにつぶやいたりするよりはフツフツと内に篭っていたい方なので、これを機に変なコラムを書き続けるのも終わりにしてそっとペンを置こうと思っていたのだが、締め切りが近づくといつものように催促が来てしまった。

ギリギリになると催促が来るということは紙面が余っているのだろうか?
或いは時事ネタを求められているのだろうか?前向きに後者と捉えよう。

時事ネタといえばSMAPなのだが残念ながら興味がない。
清原は重すぎるし、ゲスの極みはLINEを盗んで流した人間だと思うがそれだけだ。

などと考えていたら唐突な日銀のマイナス金利発動が決定したので軽く絡んでみる。

恐らく今回のマイナス金利付き量的緩和政策は、円安と株高の期待を込めてのものであろう。

フィッシャーの貨幣数量説に基づいたアベノミクスは、マネーサプライを増加させることによって結果的に国民所得増加に繋がるという理屈だが、肝心の景気が思うように上昇しないため(世界治安情勢や原油安など様々な要因)今後の見通しが非常に厳しくなっている。

この「勢いが落ちた火」のような現状の中に、今一度油を投下して炎を焚き付けようというもののようだ。

とは書いたものの今後に起こることを予測するのはほぼ不可能だ。
実際にエコノミストや経済学者が口々に予測を唱えているが、それぞれが持論を展開しているだけでほぼ一貫性がない。

日本に先駆けてマイナス金利政策を行ったデンマークやスイスでは通貨安の傾向が続いており、一定の効果はあったようにも見えるが果たして...

そもそも円安になると何が良いのか?
当然だが輸出業が活況になるが、最近身近に感じるのは何と言ってもインバウンドだろう。

最近友人達と北海道に行ってきた。
所謂◯◯リゾート的な安めの温泉宿に泊まったのだが、我々以外のほぼ全員が中国人旅行者であった。
翌日とあるスキー場に行ったところ、今度はほぼ8割が欧米人であり、スタッフも日本語を話せる人がおらず、スキーレンタルでも一苦労するという思いがけない異国情緒を味合わせてもらった。

これらはインバウンドによる地方再生の成功例なのだろう。
素直に関係者の努力には敬意を感じる。

一方でビジネスホテル宿泊価格の高騰や、数え切れないほど多くのマナー問題などの弊害も目に余る。
また旧正月に来日する中国人観光客に合わせて垂れ幕を作る観光地などもあるとのことだが、そもそもの風情が無くなってしまうことが懸念される。

成熟した観光客は訪問先の文化や景色を尊重して楽しむものだが、中国人観光客が成熟してくれるのはいつの日のことだろうか?
正直なところ出向いた先でそうした団体と出会ってしまうと少しテンションが下がる。

つまりこうしたインバウンドを必要以上に重視すると、本来居住している日本人に迷惑がかかることがあることを忘れてはいけない。

ところでここ京都でも「四条通歩道拡張問題」で市民は大変な不自由を感じている。
実は私の近所にある二条城では、観光バス駐車場を増設するために桜など130本もの樹木を伐採することがいつの間にか決まったそうだ。
そうした豊富な樹木も含めて世界遺産のはずだが、取り消しにはならないのだろうか?

こうした問題もインバウンドを重視する余りに市民の側に目が向いていない京都市の過ちのように思われる。

市長さんも3選目の長期政権に入った。そろそろ京都市民にも目を向けてや。
 

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