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たけだ通信 No.109(3月発行)

武田病院グループ会長 武田隆男

高齢化による社会構造の変化 ~先の読めない福祉と医療~

武田 隆男
武田病院グループ 会長

 武田 隆男

■高齢化による社会構造の変化 ~先の読めない福祉と医療~

 気候が不順で、季語があてはまらない状況になっています。

 それは、地球の温室効果が原因で、気温の上昇が起こっているという考えが一般的です。しかし、地球のあるところでは、寒冷化の進むところがあるようです。理解できないところがあります。それについては、温暖化現象は太陽の黒点の増減によって、ほぼ定期的に起こっているという説を読み、納得をしたり、少し安心したりしています。


 さて、少子高齢化時代の到来は予想より早く到来して、大きな問題となっています。我が国では、世界で最も早く高齢化が始まり、少子化で人口減少を来たしている地域が増えています。これについては、さまざまな対策が政府や関係部所によって講じられていますが、実際に有効がどうかは未だ明らかではありません。

 一方、医療技術の進歩によって医療の機能が相当に変化して、医療機関や、介護業者が自分の事業の方針をしっかり決めて歩んでいかないと不都合が起こる時代になりつつあります。

 特に我々が気がかりなのは、団塊の世代についての2025年問題です。医療技術の進歩・変革はどんどんと進みますが、その時の経済状況・急速に増える高齢者の数によって、医療にどのような変化を来たすか、先が読めないところであります。

 経済状況については、高齢者に貧困な人が増加しているようであり、年金制度にも問題があるようです。

 また加齢とともに...つまり高齢者は、心理的に縮み指向があり、消費が縮小するといわれ、経済活動に大きな影響を与えることになります。

 年金を維持するのは、国民全体の責任であり、今の高齢者といわれる年齢になっても、さらに勤労意欲を満たすような施策が必要でありましょう。その上で、高齢者の強み、知識・経験等を引き出せるように労働市場のマイナス面をカバーするべきです。何より大切で必要なことは、不健康な長寿国世界一に甘んじることなく、我々が訴えている健康寿命をのばすことです。


 さて、いつも言われることですが、北欧の高齢者の対応が優れていると言われます。しかし一方で、入院治療をしている人々も少数はいるが、自宅で放置されている人々が多数を占めていると言われています。病院とは、「疾病のために社会生活からはずれた人を早く復帰させる場」という考えでありますが、北欧では社会がそれを放棄した感があるとも言われ、我が国ではそのようなことにならないことを望んでいます。

 国は医療・介護提供体制を変化させようとしています。高齢者が在宅で、地域で安心して暮らせるようにという配慮は、大いに進めなければなりません。 しかし、一方では在宅医療も、在宅介護も労働力不足があり、介護離職0(ゼロ)をとなえても実際はかなり無理のようですし、在宅介護の現場は大変深刻な状況です。慢性期病棟や介護施設が増加しても、介護職の不足が続き、外国人技能取得者の増加を期待するところですが、外国人を在宅に派遣するよりも施設の方が、合理的に経済的な介護ができると思います。


 これらのことは、我が国の経済状況によって変わるのでしょうが、医療費・介護費等は、人件費が大部分を占めていているのが現状です。厚労省の考えをみると、一般的には人件費を上げよという政府方針とは裏腹に、実際には政府方針の実現は困難なことであり、矛盾するところでしょう。また、我が国の医療に従事する人数が他国より少ないと言われますが、これを満たすためには、さらに医療費が相当上がるはずです。ここに大きな問題があります。

 そして、医療には消費税が大きな問題となっているのです。医療には社会政策的なものであり、医療は消費ではないという考え方から、消費税はそぐわないということで、社会医療保険診療については、非課税となりました。患者さんから、保険診療上は、消費税はいただけないのです。ところが、薬や物品管理、修理、ガーゼや注射器・医療器械にいたるまで、病院への仕入れには、病院は消費税を支払うのであり、これを病院から患者さんに請求することはできません。これが病院の負担となり、この消費税分を「損税」と言っています。消費増税実施当初から、この大きな負担について改善を求めているのですが、毎年訴えては無視され、これを負担しない仕組みを考えることで足踏みしているのです。

 病院の治療費等を課税にすれば、解決するのでしょうが、国民の負担は益々増加し、社会的配慮が無視されることになります。ヨーロッパの国では仕入れに要した消費税を還付する国が多いのです。もともと仕入れに要する消費税を止めればよいことではあるのですが...。問題は、青息吐息で払って来た税が8%になって、赤字の病院が増えています。これを10%にすると大変なことになります。しかし、消費税率が10%に引き上げられれば、課税の額は大きく膨らみ、現在の医療費でも採算がとれない施設が増加して医療体制が揺らぐことを心配しています。仕入れ消費税の還付を進めていただきたいと思っています。

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