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たけだ通信 No.107(6月発行)

武田病院グループ会長 武田隆男

先端医療への貢献

武田 隆男
武田病院グループ 会長

 武田 隆男

■先端医療への貢献

 季節のうつろいは早く、珍しく雪景色が多かった厳しい寒さの冬が去ったと思ったら、春爛漫の桜は散り、もう一年半ばを迎えました。齢を重ねるごとに、年々の過ぎ去るのも早くなり、暦を走馬灯が勢いよく回るようにさえ感じます。

 さて、今年は4月に「第29回日本医学会総会 2015 関西」が開催され、武田病院グループも協力させていただきました。それに先立って、3月には、当グループの武田隆久理事長が大会長を務め、ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥京都大学教授らを招いて、先進医療推進機構(AMPO)と京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の共催シンポジウム『先端医療〜治らない病気への挑戦〜』を、同じ京都劇場で開催させていただきました。

 隆久理事長が理事をしております先進医療機構(AMPO)は、日本の最先端医療の現状を世界に広め、重い病気の方々に最新治療技術の恩恵を受けてもらうための活動を展開しております。当グループでもこれまでに、脊椎圧迫骨折の椎体形成術に取り組む川西昌浩・医仁会武田総合病院脳神経外科部長、不整脈心筋焼灼術の全栄和・康生会武田病院不整脈治療センター所長、脳梗塞などの血管内治療の滝和郎・康生会武田病院脳卒中センター長が取り上げられています。

 講演で山中先生は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見と細胞増殖開発の成功等で、本来なら独占的に研究をすることの方が、企業倫理からは一般的ですが、難病患者さんへの1日も早い福音のためには、世界の研究者に協働してもらうことこそ、医療者の務めであると冒頭に述べられました。実際にiPS細胞は京都大学(CiRA)が基本特許を取得し、公的機関の研究者は無償でiPS細胞を作ることが出来るシステムにしています。

 また山中先生は、お母さんが転倒による股関節骨折の治療中で、認知症や寝たきり防止のために時間を割いて面談の機会を持っていることや、整形外科医としての現役時代を「じゃまなか」と称されたエピソードやユーモアを交えながら、ご自分の研究よりもiPS細胞研究センターで活動を続ける、パーキンソン病治療に対するiPS細胞(ドーパミン)応用の臨床を目前にした高橋淳教授、輸血に頼らない血小板や赤血球を生み出す江藤浩之教授、不可能とされている軟骨細胞再生を実践中の妻木範行教授らの研究成果を主に紹介されました。

 山中先生ご自身の研究成果はそっちのけで、iPS細胞研究センターでの環境整備や周囲への気配りを何より大切にされている、先生のお人柄をみる思いで、医療従事者の一人として今後の病院運営の目指す道への参考にしたいと考えているところです。

 先ほども述べました様に、4月に井村先生を会頭とした、日本医学会総会が開催されました。武田病院グループは2日間に渡り、市民公開講座を開き、現代の医療について、当グループの専門家によるセミナーを行いました。
御存知の如く、現在は再生医療という分野が発展して、移植医療の悩みを解決し始めました。山中先生のiPS細胞の開発によって、患者さん自身の細胞で体を修復することが出来るようになりました。
感染症については、抗生物質の発達でもはや感染症は、恐るるに足らずと思われたのに細菌、ウイルス、真菌が変異をきたし、抗生物質に抵抗するようになり、結核や、根絶されたと思われた天然痘が広がり、他の動物でも増え始め、人類に再感染の恐れが出てきました。
がんについては、がん細胞の発生、生存、増加の構図が除々に解ってきて、対策が進んでいます。又、老化に関する研究も進んでいます。D.スティップという人によると、老化を遅らせるメカニズムが見つかって、そのメカニズムを模索すれば、老年期に増える病患の発症を遅らせるかもしれないといっています。

 この様に医学に関する研究は、私共の想像を超えて発展しています。これに伴って医療も変わります。そういう中で、今後10年で医療環境はますます厳しさを迎えることは違いありません。団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になる2025年には、高齢化率が30%を超える「2025年問題」がせまっています。それに伴い医療や介護の需要が大きく変化し、「高齢者を支える『ケア型』の医療」に大きく軸足を移して「治す医療」から「治し、支える医療」への転換が計られています。

 武田病院グループでも急性期医療分野への最先端医療と先進機器の導入は当然のことですが、リハビリテーション医療を含めたケアとキュア分野でのマンパワー充実など、待ち受けている多くの課題を一つずつクリアしていく決意です。

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