武田病院グループ:保険・医療・福祉のトータルケアを提供する京都の病院

  1. トップ
  2.   >  広報・読み物
  3.   >  たけだ通信

たけだ通信 No.106(1月発行)

武田病院グループ理事長 武田隆久

【年頭所感】

photo_rijicho.jpg【VOICE】
武田病院グループ 理事長
 武田 隆久

年頭所感

「アベノミクス解散・総選挙」を経ての新たな組閣と、大変慌ただしい年末年始です。同政権で成長戦略の一つとして大きく取り扱われた〝医療〞ですが、実は我々医療者の目は非常に冷めていたと言えます。医療は、これまでずっと〝政治〞、或いは〝官僚政治〞に振り回され続けてきたからです。

最近の事例を振り返ってみれば、2005年に突然、「療養病床再編」が出され、「医療療養病床の削減」と「介護療養病床を全廃」して、入院稼働している23万ものベッドを無くそうという乱暴な議論が行われました。過度に「社会的入院」ばかりが世間でクローズアップされ、本来、果たしている病院の役割や、必ような医療を受けるために入院している患者さんの存在がかすんでしまうようでした。今は方針転換し、介護療養病床の存続が議論されていますが、当時の空恐ろしい雰囲気は忘れられません。

また、翌年には小泉政権(当時)が社会保障費2200億円の削減を閣議決定。「三方一両損」のキャッチコピーのもと、患者さんの支払負担が増大、医療機関は診療報酬の大幅カット、さらには制度改革で地方の医療が崩壊に瀕するという「痛み」がもたらされることになりました。〝裁く側〞は不思議と「損」や「痛み」に加わることなく、これ以降も「適正化」の名のもとに、医療費はありとあらゆる面から削減が進められています。

さて、このように財政悪化の原因として、まるで「悪者」のような扱いを受けていた医療ですが、驚くことに今度は「大義」として持ち上げられるようになりました。医療保険など「社会 保障制度を持続するために消費税を8%に引き上げることが必要」という訳です。無駄を廃し、保険制度の維持を図ること自体に異論はないのですが、なんとも行き当たりばったりな政策が続いていることでしょうか。

ところで昨今、オバマ大統領が 進める医療制度改革(オバマケア) が話題となり、アメリカの医療費の高さが取り上げられる機会が増えました。盲腸手術で300万円の支払いを求められるなど、アメリカの医療費は高額化に拍車がかかっています。驚くことに、自己破産理由の6割が「医療費の支払い」であるなど、日本では考えられない状況になっています。

貧富に関係なく平等に医療を享受できる環境は、人の尊厳にも関わる大変重要なものであります。これをめざした我が国の「国民皆保険制度」ですが、残念ながら実際には、どこでも平等というわけではありません。


京都市内

先ほど、地方の医療について言及しましたが、医師・看護師な ど医療提供に必要な人材は極めて偏在しています。求められる医療を提供できるとは限りません。これに加え、人口減少が進む地方では、高齢化で医療ニー ズが高まっても事業としては不採算となり、存続が危ぶまれるケースも少なくないのです。ここ京都におきましても偏在は同様で、医師・看護師の70%前後が京都市・乙訓地域に集中し、丹後や山城南はわずか数%でしかありません。当グループでは、この南北両方で病院事業を受け継ぎ、医療サービスを提供しています。病院事業などのセーフティーネットは、一度、壊れてしまったら、取り戻すことは容易ではありません。決して途切れることのないよう、手を尽くすことが肝要です。何より、都心部・地方に関わらず、できるだけ最新の医療を受けられるよう、私達にできる環境づくりをめざしていきます。


京都府宮津市 天橋立

私達の願いは、これまでのような「当たり前の医療を誰もが当たり前に受けられる」ことにつきます。財政・行政・制度・人口構造・人材確保・地方での生活など、医療を取り巻く環境は絶えず変化し、様々な事象への対応が求められますが、グループの力を最大限に発揮し臨んでいく考えです。

今後とも皆様のご指導を賜れますよう宜しくお願い致します。

前の記事 一覧を見る 次の記事

Copyright © 2014 Takeda Hospital Group. All rights reserved.