武田病院グループ:保険・医療・福祉のトータルケアを提供する京都の病院

  1. トップ
  2.   >  広報・読み物
  3.   >  健康のために
  4.   >  アスニー講座 からだを知ろう
  5.   >  骨粗鬆症による骨折の防止 〜STOP AT ONE〜

アスニー講座 からだを知ろう

アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2014.01.29 骨粗鬆症による骨折の防止 〜STOP AT ONE〜

moritadr_140901.jpg骨粗鬆症による骨折の防止 〜STOP AT ONE〜

医仁会武田総合病院 院長 森田 陸司 氏


■ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)は、運動器官、つまり体をつくってそれを支持している骨格、骨の動く部分である関節や背骨の椎間板、そして骨を動かす筋肉、神経などの運動器官の障害によって、自分で立ったり座ったり、歩くことができなくなって、日常生活の自立が保てなくなり、要介護になる状態、または要介護になるリスクが高い状態をいいます。主な疾患は、骨粗鬆症や変形性膝関節症、変形性脊椎症、筋肉減少などがあります。加齢とともに筋力が減少することで、膝がやられて変形性膝関節症になり、膝がやられると運動がだんだんしにくくなって、全身の運動量が低下します。そうすると、筋肉はますます減っていき、骨量も減少して骨粗鬆症で骨折を起こしやすくなります。骨折を起こすと運動量が更に減り、筋肉量の低下が起こります。このように悪循環を繰り返して骨折を繰り返すことを「骨折の連鎖」と呼んでいます。ロコモの疾患はお互いが原因となり、結果となって進行します。

■加齢に伴う骨量減少
若い人の椎体骨は、スポンジのようにぎっしりと詰まっておりますが、年を取るにつれて、中身がスカスカになっていき、自分の体を支えきれず重みで潰れたりします。そのために背がだんだん低くなって背中が曲がってきます。骨は、成長期に骨量が急速に増え、ピークに達します。このピークはその人の人生で一番骨量が多いということで最大骨量といいます。最大骨量をずっと保ったまま、女性では50歳代ぐらいから急激に減り出します。そして大体80歳ぐらいになると、最大骨量の半分ぐらいに減ります。背骨の圧迫骨折が一番多く、ほかには腕の骨折、大腿骨頚部(太ももの付け根)骨折などがあります。

■骨の代謝
哺乳類は、成長期の骨は、モデリングという機構でだんだん大きくなります。成長期に達して成熟した骨格の維持には、古くなった骨や傷ついた骨は取り除いていって、新しいものに置き換えています。これをリモデリング(骨の再構築)と呼んでいます。骨の再構築によって我々の骨はいつも新鮮で硬く、柔軟性を持っており、正常に保たれています。このリモデリングで、古い骨を壊すことを骨吸収と呼び、これを担当している細胞は破骨細胞で、骨形成を担当している細胞を骨芽細胞と呼びます。骨吸収と骨形成が等しいこと、つまりカップリングが骨量を維持する重要な機構です。骨吸収が骨形成より大きくなってしまったカップリングの異常が骨粗鬆症なのです。

■骨粗鬆症
■加齢によって起こる骨粗鬆症
原発性骨粗鬆症は、(1)閉経後骨粗鬆症は、閉経によるエストロゲンの欠乏が原因です。エストロゲンには骨を保護する作用があり、エストロゲンが減少すると、骨はだんだん弱くなっていきます。(2)男性骨粗鬆症の病因は、よく判っていませんが、加齢に伴う骨形成能の低下によるものと考えられています。

■骨強度は骨密度と骨質で決まる
骨の強さは骨密度と骨質で決まります。比率は骨密度70%、骨質30%と考えられています。したがって、骨の密度を知ることは、骨折の危険度を知る重要な手がかりとなります。骨密度を知る方法は、DXA法、MD法、超音波を使う方法の3つがあります。骨量がある程度減ってしまうと、元の健康な骨に戻すことが極めて困難になります。ですから、骨減少を早期に発見して対策を立てることが必要です。

■骨粗鬆症の予防と対策
まず栄養と食事が基本で、各栄養素を偏食せずバランスよくとることが大事です。そして、カルシウム、ビタミンD、Kを積極的に摂取するように心がけましょう。骨粗鬆症の予防のために必要なカルシウム摂取量は800〜1000mgといわれています。カルシウムを多く含む食品は、牛乳やスキムミルク、プロセスチーズ、ヨーグルトなどがあります。乳製品にはカルシウムはかなりたくさん含まれていますし、腸管から吸収しやすいので勧められます。ほかにもししゃもなどの骨ごと食べられる魚類、大豆製品、小松菜などがあります。骨折が起こりやすい要因として、ステロイド薬は骨強度を下げて、骨折のリスクを2〜4倍に高めてしまうため、ステロイドを使い出したら同時に薬物療法を始めた方がいいと思います。ほかにも痩せている方は骨折しやすいです。また、糖尿病、関節リウマチ、慢性呼吸器疾患の喘息、肺気腫など、特に糖尿病あるいは慢性呼吸器疾患、関節リウマチを持っている方は、骨折のリスクが高い(続発性骨粗鬆症)といわれています。薬物では、ステロイド、性ホルモン抑制剤といって女性では乳がん、男性では前立腺がんなどで、ホルモン抑制剤を使った場合、使い始めたと同時に骨粗鬆症の治療を開始するように勧められています。

■骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症の治療の目的は、骨折の防止と骨折の連鎖を絶つことです。大腿骨頚部骨折の原因は、敷居で躓いたり、絨毯の端で躓く、コードを踏みつけて躓く、廊下で滑るなどの転倒が骨折の原因となります。しかも日中、歩行障害や視力障害があったり、長時間持続の睡眠薬を飲んでいたりすると転倒を起こしやすくなります。屋内で転倒しないことが大事です。
薬物療法は、骨粗鬆症による骨折を起こしてしまった人、骨折がなくても若い人の骨の平均値の70%以下、家族に大腿骨近位部骨折のある方は骨がそんなに減ってなくても治療を始めてください。現在は、保険を通っている薬がたくさんあり、カルシウムや女性ホルモン様製剤、ビタミンD、K、甲状腺ホルモン製剤、抗ランクル抗体などがあります。中でもビスフォスホネート製剤は一番よく使われている薬です。今のうちから骨を守る生活習慣を見つけ、ビタミンDを作る日光浴や、自分にあった運動をする、カルシウム摂取などを行いましょう。すでに骨が減ってしまった方は躊躇無く薬物療法を行ってください。

前の記事 一覧を見る 次の記事

Copyright © 2015 Takeda Hospital Group. All rights reserved.