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アスニー講座 からだを知ろう

アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2014.03.26 エネルギー収支とタイミングで考える血糖値

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 エネルギー収支とタイミングで考える血糖値


医仁会武田総合病院 糖尿病センター 医長 髭 秀樹


■血糖コントロールの目印
(1)ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)
赤血球Hb全体の数はほぼ一定ですので、そのなかでカロリーとの結合体(HbA1c)が何%占めるのかをカウントすることで、過去1ヶ月にどのくらいのカロリー量が体内に流れ込んでいたのかを見ます。つまり一カ月の平均血糖を示す指標といえ、6.5%が糖尿病のボーダーライン、さらに7%以上になると血管合併症の発症リスクが急に上がります。7%未満ならリスクが下がりますので、HbA1c7%未満が一般的な治療目標、ということになります。

(2)血糖が大きく変動する
糖尿病は血糖の波が普通の人よりも大きく、食後血糖値が高くなりやすい体質といえます。正常血糖値は100前後なので食後血糖値でも倍の200を超えると心筋梗塞などの病気になるリスクが大きく上昇します。リスクというのはあくまでパーセンテージですので絶対になるという意味ではありませんが、逆に食後血糖を200未満に抑えるだけで心筋梗塞を起こすリスクが35%減ります。実は認知症も血糖の変動が大きいほど認知症の確率が上昇することがわかっています。つまり糖尿病の治療は、(1)平均血糖(HbA1c)を高くしないこと(2)血糖の変動(食後血糖値)を抑えること、の両方が大切です。

 

■血糖値が下がらない原因
(1)インスリン残量が減っている
もともと少ない人や、若いときにたくさん食べてたくさん使っているとインスリンが枯れます。そうなると、外から補充(注射)するしかありません。

(2)インスリンの効きが悪い
残量はたくさんあるけれども効きが悪い状態とは、肥満や高脂肪食の人です。このような人はインスリンが効きにくいので血糖値も下がりません。先ほど、HbA1cが7%未満だと細い血管の合併症のリスクが下がるといいましたが、太い血管のリスク(心筋梗塞など)は実はある条件下ではHbA1c7%未満でも上がります。その条件が、このインスリン抵抗状態です。太っている人は効きにくいからと沢山インスリンを出して正常血糖値に押さえ込み、エネルギーをいっぱい吸収しています。このような高インスリン状態では心筋梗塞に非常になりやすく、血糖やHbA1cが低いからといって安心できません。

■肥満糖尿病が増えた原因
(1)高齢化のせいか?(これはある程度の可能性があります△〜○)
日本は急速に高齢化が進んでいるそうで、2050年には、4割近くの人が65歳以上になるといわれています。元気なお年寄りが増えるのは良いことだと思いますが、年を取ると基礎代謝量が減っていきます。小学生は約1600キロカロリーぐらいあるのに対して、高齢者は約1300キロカロリーに減ります。これは、筋肉量が落ちてくるからです。つまり、年を取ると省エネ型になるため、若いヒトと同じだけ食べると血糖値は上がるのです。

(2)摂取カロリーが多いのでしょうか?(これは少し疑問が残ります△)
欧米人はよく食べている地域で3200キロカロリーぐらい、アフリカの最貧国といわれる地域は1600キロカロリーぐらいの少なさといわれています。1970年代は日本人は一番よく食べていたらしいのですが、今は終戦後と変わらない2100kcalに減っているといわれていますから、必ずしも食べすぎが日本人で糖尿病の増える原因とはいえないかもしれません。

(3)食べてはいけないものを食べているのでしょうか?(これも△〜○です)
まず食事内容ですが、三大栄養素の中の炭水化物は血糖値が最も早く上がる栄養素で、食後血糖が気になる人が炭水化物制限をすると血糖は確かに下がります。しかしこれには注意が必要で、ある条件の方は炭水化物制限をしてはいけません。最近、炭水化物ダイエットが流行っていますが、やってはいけない条件の人(腎機能の低い人、高齢者、筋肉量の少ない女性)がやると逆に動脈硬化が進んだというデータもありますし、極端にやりすぎて死亡したという例もあります。実際終戦直後の炭水化物摂取量は80%ぐらいだったのですが、今60%ぐらいに減っており、炭水化物だけが悪と断言はできません。ただ、いまだに炭水化物に偏って食べている方も確かにおられ、炭水化物を適量に抑えることはとても有効かと思います。他の要素として、インスリン抵抗性を増悪させるという意味では脂肪も過剰になるとよくないかもしれません。ただ必要な栄養素ではあり、近年は脂肪の内容にこだわる、ということが提唱されています。例えば魚の脂肪はいいといわれています。

(4)食べるタイミングが悪いのか(これはおおいにあります◎)
朝はエネルギーを使って一日頑張ろう、というカラダの働きが活発なのである程度しっかり食べてもいいのですが、逆に夜22時以降は全く消費しない時間帯なので、こういう時間帯はなるべく避けた方がいいと思います。また、果物やジュースの果糖は脂肪肝を悪化させるので、特に夜は厳禁です。食べるなら消費の活発な朝でしょう。(栄養やビタミンを溜め込む必要のある成長期の小児でなければ、果物を無理して摂取する必要はないのではないかと個人的には思っています。)また血糖の波を小さくするという意味では、食間をきちんと空ける、ということも重要と思います。たとえ少しのカロリーでも、少なくとも2時間は空けるべきです。

(5)動けば良いのか(これも◎かもしれません)
一日にどれぐらい摂取しているか、使っているか、収支を把握するのも重要です。消費が上回っていれば、痩せるからです。現代は自動車を一人一台持つ時代で、それに伴って太ってきたといわれています。運動強度(メッツ)×時間×体重=消費カロリーという計算方法があり、例えば脂肪を1キロ減らすには、7000kcal消費が必要ですが、走る運動強度4Mets×30時間×体重60kg=ようやく7000kcalなので、60kgの人が30時間走らってようやく脂肪1kg痩せます。1日1時間1カ月走ってやっと1kg減らせることになります。そのくらい運動でやせるのは難しく、根気が必要です。運動は単独では効果がゆっくりなので、食事療法を合わせるのがオススメです。ただ痩せないまでも、少し動くだけで心筋梗塞や糖尿病の危険率はかなり下がります。
ゴロ寝の運動強度は0で、座ると1Metsになります。60kgの人が1時間座っていると1Mets×1時間×60kg=60kcal使います。1日1万歩300kcalといいますが、5時間座ってテレビを見ていれば、1万歩歩いたのと同じ消費カロリーです。この計算方法では、立つと運動強度2Metsなので座るよりは消費カロリー2倍、歩くと3倍、走ると4倍になります。逆にいえば、30分走るのが大変なら、60分テレビでもみながら立っていれば同じカロリーを消費します。また、有酸素運動だけでなく筋トレをすることで有酸素運動での脂肪の燃焼の手助けになるともいわれています。

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