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メディカルアドバイス

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2011.06.01 破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血と未破裂脳動脈瘤/たけだ通信98号より

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康生会武田病院 脳神経外科 医長 荻野 英治


【はじめに】
突然死の約7%を占める「くも膜下出血」は、高齢者だけではなく働き盛りの壮年期の方にも起こりやすく、たとえ死を回避できたとしても後遺障害を残しやすい恐ろしい病気です。「くも膜下出血」の原因のほとんどは、脳の血管にできた「動脈瘤」の破裂によって起こります。この「脳動脈瘤」について最近の治療をご紹介したいと思います。

■ くも膜下出血とは

くも膜下出血とは、脳の表面を覆っている軟膜とくも膜のすき間に出血を起こした状態を言います。出血は脳動脈の一部が膨らんでできる「脳動脈瘤」や生まれつき脳に異常のある「血管奇形」などが原因となります。ちなみに、くも膜下出血の原因の8割は「脳動脈瘤」の破裂が原因と言われています。

一度脳動脈瘤が破裂しくも膜下出血を起こしてしまうと、3分の2の患者さんは死亡されるか重い後遺症が残ってしまい社会復帰のできない状態となってしまいます。

■ くも膜下出血の症状

くも膜下出血の症状は「いつ」始まったかわかる「突然起こる激しい頭痛」や「意識障害」などが特徴的ですが、まれに「物が二重に見えたり」「手足の動きにくさ」などで頭の中に脳動脈瘤が見つかる事もあります。また、普段あまり頭痛を感じることのない方で、頭痛を自覚された方も医療機関を一度受診された方がよいと思います。

kenko.medical.1106_2.jpg■ くも膜下出血の診断

診断は、症状の他にCTやMRIなどの断層写真で確定しますが(図1)、脳や脊髄周囲を循環する脳脊髄液を腰椎穿刺により採取し、血性髄液で診断する事もあります。


■ くも膜下出血の治療方法

くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂が原因であることが多いため、破裂した脳動脈瘤に対する治療方法を述べたいと思います。破裂した脳動脈瘤は、出血した後、一旦止血された状態で治療が開始されます。一度破裂した脳動脈瘤は再び破裂することが多く(再破裂)、再破裂が起こると9割の患者さんが死亡されてしまいます。このため、一度破裂した動脈瘤に対し、再破裂を起こさないようにするために以下のような手術が発症後、早期に必要となります。

kenko.medical.1106_3.jpg・開頭脳動脈瘤クリッピング術(図2)
全身麻酔下で外科的に開頭を行い、脳の溝を分け入って動脈瘤に到達します。そして、動脈瘤の根元を医療用のクリップをはさみこんで、動脈瘤内に血液が入らないようにします。

・血管内脳動脈瘤コイル塞栓術(図3)
 太ももの付け根の血管から治療用の細い管(カテーテル)を動脈瘤の中まで誘導し、カテーテルを通して瘤の中に柔らかく細いプラチナ製コイルを詰め込みます。この処置により動脈瘤を埋めてしまい、動脈瘤内に血液が入らないようにします。

以上のような手術を行い再出血を起こさないように治療を進めていきますが、たとえ手術が成功し再出血を防いでも、初回出血による脳へのダメージが強いことも多く、社会復帰される患者さんは3人に1人しかいません。

このため、破れていない脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)への治療も行っています。

■ 未破裂脳動脈瘤について

kenko.medical.1106_4.jpg画像検査機器の発達していなかった時代では、破れていない動脈瘤を発見することは困難でしたが、最近では脳ドックやたまたま受けた画像検査で脳動脈瘤が見つかる事も多くなってきました。このため、どれくらいの割り合いで動脈瘤が破裂するかを調べる研究が現在日本で行われています。その中間報告では年間0.5~1%程度で破裂の危険性があることがわかってきました。 また、脳動脈瘤が破裂しやすい要素も徐々に明らかになってきています。例えば、瘤のサイズが大きいものや形状のいびつなものは破裂しやすいと言われていますし、血縁にくも膜下出血を起こされた方や高血圧、喫煙、飲酒されている方も破裂しやすいと言われています。

■ 未破裂脳動脈瘤の治療方法と危険性について

では、未破裂脳動脈瘤が見つかったらどうすればよいでしょう?

現在、未破裂脳動脈瘤には、
A)慎重に経過観察
B)開頭によるクリッピング術
C)血管内(カテーテル)より行うコイル塞栓術
の治療方法があります。

Aの経過観察は、6ヶ月~1年に一度画像検査を行い、瘤の形や大きさの経過を追っていくことになります。そして、瘤の大きさや形状に変化があれば、破裂しやすい状態と考え手術治療を考えることになります。Bや、Cの治療方法は基本的にくも膜下出血の外科的治療方法と同じになります。

どの治療方法を選択しても長短所があります。Aの経過観察を選択した場合、手術による合併症の危険性はありませんが、経過観察中に破裂する危険性が全くない訳ではありませんし、「破裂するかもしれない」と言う心理的不安からうつ状態になってしまわれる患者さんもいます。また、BやCの外科的治療を選択した場合は、手術により根治が得られるという長所もありますが、手術による合併症の危険性が3~5%で存在するという短所もあります。

このため、康生会武田病院では、未破裂脳動脈瘤の患者さんの年齢や社会背景をふまえ、脳動脈瘤の状態から破裂する危険度がどれくらい高いか、また、外科的治療を行った場合、どの程度危険性があるのかを説明し、最適な手段を患者さんと一緒に考え治療方針を決めるよう心がけています。

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