09.術後の尿もれ

Q.前立腺の手術の後は、尿もれが多いのでしょうか?

確かに尿もれを認めることがあります。

尿もれを防ぐ仕組みとしては、前立腺の近くに存在する尿道括約筋の働きが重要です。通常はこの尿道括約筋が尿道を締めることで、尿がもれることを防いでいます。前立腺がんに対する前立腺全摘術や、まれですが前立腺肥大症に対する経尿道的切除術時には、この尿道括約筋が一時的に障害を受けることがあります。すると、尿道を締める機能が低下するために、尿がもれて、パッドやおむつが必要になることがあります。

 

Q.尿もれを治すにはどのような方法がありますか?

最もよく用いられる方法は、骨盤底筋体操と呼ばれる骨盤周囲の筋肉を鍛える体操です。特に前立腺がんに対する前立腺全摘術では、術後に尿もれが起きやすいのですが、この体操を継続することで、術後一年程度でほぼ尿もれはなくなります。

しかし、一部の症例では、重度の尿もれが続くことがあり、生活に支障を来すことがあります。このような症例に対しては、外科的手術による修復として、人工尿道括約筋埋め込み術を行います。当院では2023年12月より新たに導入し、実際に生活の質が良くなったとの喜びの声を頂いております。

 

Q.人工尿道括約筋埋め込み術とはどのような治療でしょうか?

シリコン製のチューブを尿道括約筋の代用品として尿道周囲に巻きつける手術です。チューブ内の水の量を調整することで、尿道括約筋のしめる及びゆるめる作用を再現し、尿もれを止めます。

 

Q.人工尿道括約筋はどのような仕組みなのですか?

3つの部品で構成されています。

➀カフ:尿道周囲に巻かれたチューブです。

②バルーン:生理食塩水を満たした風船です。

③ポンプ:水の行き来をコントロールする器具です。

通常の尿をためる時には、カフに水が満たされ、尿道を軽く締めていることで、尿はもれません。尿意を感じた時に、ポンプを軽く押すと、カフの水が抜けてバルーンに流れることで、尿道がゆるんで、尿を出すことができるようになります。その後数分経つと、バルーンの圧力で自動的にカフに水が戻って満たされ、再び尿をためることができるようになります。

尿道周囲に取り付けたイメージ

人工尿道括約筋埋め込み術に使用するチューブ

メカニズム

 

Q.埋め込み術ではどこに装置を入れるのですか?

陰嚢と肛門の間の会陰部と呼ばれる部分と鼠径部を切開し、3つの部品を、尿道、骨盤部、陰嚢に埋め込みます。

 

Q.手術時間はどれくらいですか?

2時間程度です。

 

Q.術後はどのような経過になりますか?

入院で手術を行い、数日で退院となります。

人工尿道括約筋埋め込み直後は、装置自体は一旦作動休止し、2か月程度体になじむのを待ちます。従ってこの期間、尿もれは変わりありません。術後2か月で数日再入院頂きます。装置の作動を開始させ、ご自身で陰嚢のポンプを使用していただき、尿がもれないことを実感いただき、退院となります。

 

Q.尿がもれていれば、手術を受けるべきでしょうか?

尿もれの程度は人によって違います。あくまでがまんできないもれで、手術による改善の希望のある方が対象です。お悩みであれば、お気軽に当院を受診し、ご相談下さい。