07.前立腺がん

前立腺がんは年々増えているのですか?

その通りです。新規患者数は1990年から20年間で2.5倍に急増しており、2020年の男性の部位別がん罹患数をみると、前立腺がんが約9万(約16%)と最も多くなっています。今後さらに増加する可能性がありますので、前立腺腫瘍マーカーであるPSA検査を積極的に受けていただくことが重要です。

 

どのような症状がありますか?

早期の症例ではほとんど無症状です。症状で発見されるのではなく、多くはPSA検査で偶然指摘されます。進行した症例では、まれに排尿症状として頻尿や排尿困難を生じることがありますが、実際に多いのは骨転移による痛みを訴えるケースです。

 

前立腺肥大が前立腺がんになるのでしょうか?

なりません。全く異なる病気です。

前立腺の構造

前立腺は構造的に、内腺と外腺に分かれています。前立腺肥大は内腺の細胞が過剰に作られる病気ですが、外には広がりません。一方で、前立腺がんは、外腺の細胞が悪性化し、増殖から転移するようになる病気で、全く異なります。

ただ、両方が起きることはあり、前立腺肥大の方も前立腺がんの検診は受けるべきです。

 

どのような検査がありますか?

まず血液検査でPSAを測定します。PSAとは、前立腺でつくられるたんぱく質です。4以上で前立腺がんの可能性がありますが、前立腺肥大や前立腺炎でもPSAは上昇します。そこで、画像検査のMRIを行い、前立腺にがんを疑う場所があるか調べます。疑わしい場所があれば、針生検と呼ばれる直腸から前立腺を刺して組織を取る検査を行い、診断を確定します。

 

どのような治療がありますか?

転移のない前立腺にとどまっているがんでは、完全に治す治療を行います。具体的には、前立腺を取る全摘手術もしくは放射線療法を行います。当院は手術では積極的に切除と機能温存の両立を目指したロボット手術を行っております。放射線療法を希望される場合には、グループ内である宇治武田病院放射線科と連携して行っております。

転移を認める症例では、薬剤を用いた治療となります。男性ホルモンを抑えるホルモン療法が効果的であり、現在はそれに加えて新規ホルモン製剤や抗がん剤の有効性が確立しており、長期生存を目指すことが可能です。

 

ロボット手術とはどのような手術なのでしょうか?

体内を観察する内視鏡や鉗子と呼ばれる手術器具をロボットのアームに装着し、1~2㎝の穴から体内に入れ、その後アームを人間が操作して手術を行うシステムです。鉗子には人間の手と同様の関節が備わっていますが、可能域は人間の手より大きく、手振れ補正機能も備わっているため、従来より細かい手術操作が可能です。例えば、前立腺手術では、前立腺摘出後に尿道と膀胱を縫い合わせる「吻合」という操作がありますが、ロボット手術では細かい連続した縫合操作がストレスなく行えるため、吻合に関連する合併症が軽減しています。

 

ロボット手術の方が回復は早いのでしょうか?

お腹を切開する従来の手術と比較し、6つの小さな穴を空けるだけで手術を行うため、術後の痛みが軽いのが特徴です。また、細かい操作が可能になったことにより、合併症も少なくなっています。痛みなく、合併症も少ない状況では、術後翌日から歩くこともできるので、回復の早さにつながっています。