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すこやか健康相談 京都認知症総合センタークリニック 所長 川崎 照晃 「高齢化と認知症についてアルツハイマー型認知症以外の認知症に似た症状を呈する状態について」

2018/09/12 インフォメーション 武田病院グループ

※医師やスタッフの肩書き/氏名は放送時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。


高齢化と認知症についてアルツハイマー型認知症以外の認知症に似た症状を呈する状態について

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京都認知症総合センタークリニック 所長 川崎 照晃




最近、日本では、団塊の世代の方の高齢化が進み2025年問題として、話題になっています。2025年問題の何が問題なのでしょうか?

第二次世界大戦後、主に1947〜1949年(広くは1951年まで)生まれた方が、いわゆる団塊の世代と呼ばれます。約700万人もの方がこの世代に相当します。
2025年になると、この団塊の世代が75歳以上となるため、2025年には、75歳以上の方の全人口にしめる割合が、約18%になると考えられています。高齢化が進むと疾病リスクもどうしても高くなり、医療にかかる費用や要介護状態の方も増えてくることも想像に難くないかと思われます。

認知症に目を向けるとどうなんでしょうか?

内閣府の平成29年版高齢社会白書によると、65歳以上の認知症高齢者数は、2012年には462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったのに対して、団塊の世代の方々が75歳以上になる2025年には、約700万人、5人に1人(有病率20.0%)、国民の実に17人に1人が認知症になると推計されています。また、日常生活は問題なく遅れているものの普通以上に忘れやすくなっていると思えるなど、認知症とまでは言えないが、全く正常とも言い切れない状態の軽度認知機能障害(MCI)と呼ばれる方が約400万人いると推計されており、こうした方を含めると、高齢者の約4人に1人が認知症あるいはその予備群ということになります。

こうした問題に対する取り組みは、なされているのでしょうか?

厚生労働省では、「認知症の人の意思が尊重され、出来る限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らしを続けることが出来る社会を実現すること」を目標に、新オレンジプランというものが策定され、様々な体制づくりへの取り組みがなされています。本人主体の医療・介護等を基本に据えて医療・介護等が有機的に連携し、認知症の容態の変化に応じて適時・適切に切れ目なく提供されることで、認知症の人が住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができるようにしようというものです。京都認知症総合センターでも、地域の人々、自治体と連携し、私どもの医療のクリニックから、常設型認知症カフェ、グループホームや特別養護老人ホームとの連携を行っています。

では、そもそも認知症とは、具体的にはどういった状態を指すのでしょうか?

脳は、私たちのほとんどあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。認知機能とは、脳に入ってくる様々な情報を分析・判断し、それに対応する行動を生み出す能力のことです。それがうまく働かないと、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。認知症とは、脳自体や何らかの身体の病気が原因で、脳の働きが悪くなったために、一旦獲得した知識・知能や周囲への適応性などといった機能が損なわれ、日常生活に支障をきたした状態と定義されています。認知症という言葉自体は、こうした状態を指しますので、原因は、多種多様に及びます。

認知症を疑わせる状態には、どのようなものがありますか?

「ほらほら、あの人誰やったけと、人の名前が思い出せない」「2階にものを取りに行って、あれ、何取りに来たんやったかな」など、「自分が忘れている」こと自体には気づいている普通の加齢による物忘れに対して、認知症による物忘れでは、自分の体験したこと全てを忘れてしまいます。つまり、「食事をした」「約束をした」という経験そのものを忘れてしまったり、場所や日時の見当がつかなくなったり、記憶を中心として、生活するうえで支障が出て来ます。人によっては、「些細なことでも混乱してしまったり」、「段取りや計画がうまく立てられなくなったり」、不安感から「イライラしたり、怒りやすくなったり」もします。また、「一日中ぼーっとしていて、反応が鈍い」など、アパシーと呼ばれる意欲、自発性の低下を示す方もおられます。

なんか「ぼーっとしていることが多い」ときも、気をつけないといけないんですね?

認知症の原因として最も多いものは、ベータアミロイドやタウタンパク質と呼ばれる物質が脳内に蓄積しておこるアルツハイマー型認知症が一番多く、有名ですが、最近、高齢者になってから起こる高齢者てんかんでも、似たような症状が起こると言われています。60歳を超えると発症率が上昇することか報告されていて、欧米では、60歳以降のてんかん有病率は1.5%とされています。原因としては脳血管障害が一番多いのですが、次に多いのかアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患と考えられています。こればかりではないのですが、高齢者てんかんに多く見られる症状の特徴は、意識の減損を伴う部分発作(複雑部分発作)と言われるもので、突然に動作をやめて、呼びかけに無反応になって、一点を見つめてじっとしている、口をペチャペチャさせたり、手をモゾモゾさせる自動症と言われる状態がみられます。発作自身の症候が軽くて短いことも多く、意識減損に本人、家人とも気づかず、健忘のみを主訴に物忘れ外来を受診することも多いので注意が必要と言われています。

認知症かな?と思ったらどうしたらいいですか?

ほかにも、ある病気の一時的な症状としてあらわれる場合があったり、適切な処置によって治ったり、改善することもありますので、早めに医療機関を受診されることが有用です。初期にはなかなか鑑別が困難な場合もありますが、認知症であっても、早期からの内服で進行を遅らせたり、症状を緩和することができることがあります。また、早期から医療や介護の支援を受けることで、生活上のトラブルを軽減でき、その後の対応に余裕を持ってあたれるというメリットもあります。ですので、地域のかかりつけ医の先生や認知症サポート医といった先生に相談され、一度専門の医療機関の物忘れ外来などを受診されることをおすすめします。

最後に一言

認知症は、生活習慣や穏やかな環境を整え、脳の活性化をはかることが、認知症の進行や発症を遅らせ、予防にも効果があると考えられます。地域の皆さんとも協力し行いやすいところから、少しずつ始められてはいかがでしょうか。