新着情報

  1. トップ
  2. 広報・読み物
  3. 新着情報
  4. すこやか健康相談 十条武田リハビリテーション病院 総合内科・リウマチ科 医長 駒野 有希子 「関節リウマチについて」

すこやか健康相談 十条武田リハビリテーション病院 総合内科・リウマチ科 医長 駒野 有希子 「関節リウマチについて」

2018/02/14 インフォメーション 武田病院グループ

※医師やスタッフの肩書き/氏名は放送時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。


関節リウマチについて

306282駒野 有希子.jpg



十条武田リハビリテーション病院 総合内科・リウマチ科 医長 駒野 有希子



関節リウマチとはどういう病気ですか。

関節リウマチは、100人から200人に1人の方が発症する慢性疾患です。
30~50代の女性に多いのですが、高齢者や男性の患者さんもおられます。
手足の関節炎が主な症状ですが、微熱や体のだるさなど全身症状を伴うこともあります。また、涙や唾液を出すところに炎症が起きて目や口が乾いたり、皮膚や肺などにも炎症を生じることがあります。

関節リウマチの原因はなんですか。

免疫異常が関係しています。免疫というのは、ウイルスなどの異物が入ってきたときに、それを攻撃して体を守る働きなのですが、関節リウマチのような自己免疫疾患では、この免疫システムが変調を来たして自分自身の体を攻撃します。
リウマチの場合は、関節を包む滑膜という組織に異常に活性化したリンパ球が集まって、サイトカインという物質を出し、それによって、さらにリンパ球が活性化するという悪循環をを引き起こします。リウマチにおいて、関節が痛んでいくのは、この滑膜の炎症が軟骨や骨、腱などに波及するためです。

関節リウマチになりやすい体質や、きっかけがありますか。

リウマチの発症には、体質と環境要因の両方が関与しています。
過去にタバコを吸っていた、あるいは現在も吸っているという男性は、リウマチを発症する可能性が2~3倍に高くなるようです。喫煙していると、リウマチの病状が悪化したり、治療も効きにくくなったりするため、タバコをやめるようお勧めしています。また、近年になって、歯周病も免疫バランスの変調を介してリウマチ発症や増悪に影響することがわかってきました。

関節リウマチの症状を詳しく教えてください。

関節にこわばり、痛み、腫れを生じます。症状は徐々に始まり、初めのころは1、2箇所の関節だけだったのが、数か月かけて複数の関節、多い方では20カ所以上の関節に症状がでることもあります。関節は左右対称とは限りません。
また、手足の指など小さな関節以外にも、手首、肘、膝、肩などの大きな関節が障害されます。特にご高齢で発症した場合には、肩や膝といった大きい関節の痛みや動かしづらさが、目立つことがあります。こわばりというのは、朝起きてから手指などの関節が動かしにくく、肩が挙がらなかったり、歩きづらかったりすることで、午後から夕方にかけて和らぐことが多いです。
関節の腫れや熱感というのは、専門医が診て初めて分かる場合も多いと思います。腱に炎症が波及すると、腱鞘炎やばね指を起こすこともあります。

もしかして関節リウマチかもと思った場合、何科にかかるのがいいのですか。

関節リウマチの専門医は、現在整形外科と内科の両方にいます。
リウマチ科や膠原病内科と標榜されているところに受診なさってください。

診断してもらうのは難しいものなのですか。

症状が典型的な場合には、専門の医師による問診と診察、検査を総合的に判断することによって、診断は比較的容易だと思います。関節を触って腫れや熱感を確かめてもらうことが大切です。
血液検査では、CRPや赤沈などの炎症反応を認めることが多いです。
抗CCP抗体が診断の役に立つとされていますが、これが陰性の方も2-3割いらっしゃるため注意が必要です。
関節の腫れが軽い場合には、関節超音波検査を行って、炎症の程度を確認する場合もあります。
症状が軽い場合や非典型的な場合、また発症して数か月以内という場合には、関節リウマチとよく似た病気と区別する必要があります。例えば、関節リウマチと症状が似ている病気としては、変形性関節症やリウマチ性多発筋痛症、その他の膠原病などがあります。
何度か通院して初めて診断が確定するという場合は少なくありません。

どんな治療を行いますか。

関節リウマチでは、関節の破壊を長期にわたって抑えていくための治療が必要です。
治療薬は、大きく4つにわけられます。
重要なのは、抗リウマチ薬と生物学的製剤で、この二つは関節の炎症を抑えと骨の破壊を防ぐ目的で使われます。
一方、鎮痛剤は、痛みや腫れなどの症状を抑える目的で使われる対症療法です。もう一種類、副腎皮質ステロイドというお薬があります。ステロイド薬を長期に使うことはなるべく避けたいのですが、炎症を効果的に抑えてくれる薬ですから、抗リウマチ薬が効いてくるまでの期間にステロイド薬を橋渡しとして使うことがあります。

治療の目標は 何ですか。

第一の治療目標は、腫れている関節をなるべくゼロに近づけることです。
これを寛解状態と呼んでいます。治療を初めて半年くらいまでに寛解状態に入るのが理想的です。
その次の目標は、長期的に見て関節が破壊されない、変形しない状態にもっていくことです。
最近では、リウマチの病状を、疾患活動性が高い、中くらい、低い、寛解状態であるなどと表現し、寛解状態や疾患活動性が低い状態が続く方も多くなってきました。
診察の際には腫れている関節の数を評価したり、年1回程度はレントゲンで骨の状態をみたりと、定期的にリウマチの病勢をチェックすることが大切です。

生物学的製剤というのは何ですか。

生物学的製剤というのは、バイオテクノロジーを活用して合成された医薬品です。
炎症を悪化させているサイトカインや異常に活性化した免疫細胞の作用を、ピンポイントに押さえ込む画期的な治療薬で、点滴あるいは皮下注射で投与します。
生物学的製剤は、従来の抗リウマチ薬に比較して、滑膜の炎症や関節の破壊を抑える力が、非常に優れています。今 日本で使える生物学的製剤は、リウマチに対する作用の違いから大きく3つに分類されます。一つが十分効かなかった場合にも、あきらめずに別の種類を使ってみる価値があります。
生物学的製剤は、これまでの治療薬では不十分だった方にも効果が期待できるため、リウマチ患者さんにとっての大きな福音となっています。

痛みがある場合には動かさない方がいいのでしょうか。

関節が固くならないよう、体操を毎日行うことが大切です。
リウマチ体操といって、関節の動く範囲、可動域を保つための体操です。
膝や足の関節を痛めた方は、しばらく歩かないだけでも、足の筋肉が弱ってきます。特に太ももとふくらはぎの筋肉を維持 しておくことが大切です。
腫れや痛みがおさまってきたら、主治医と相談した上で、ゆっくりとスクワットやつま先立ちを行うと良いと思います。

治療を受ける上で 気を付けることはなんですか。

過労や、精神的なストレス、感染症などをなるべく避けて、バランスのとれた食事を取ってください。
特にカルシウムと良質のたんぱく質を含む牛乳などの乳製品をおとりになると良いと思います。
リウマチ以外にも持病がある方が、たくさんいらっしゃいますが、特に糖尿病や肺の病気をもっておられる方は、リウマチの 主治医と持病の主治医に連携してもらうことが大切です。
持病に関する検査結果やお薬手帳はいつも持参なさるとよいと思います。