診療指針
脳神経外科では、生命の根源である中枢神経系と脊髄、末梢神経に対する外科的治療を 扱っている。そのため治療法の選択には神経機能の予後を重視し、生態への侵襲を最小限に抑え、かつ最大の効果が得られるようにしている。
(1)診断面では、コンピュータ機器の普及により、CTscan、MRI、MRA、SPECT(DSA)経頭蓋骨ドップラー(TCD)血管エコー検査などによる非侵襲的術前後、また術中評価が可能となってきた。これらの機器を放射線科とも協力し、豊富な情報を総合的に評価して診断と治療に当たっている。
(2)S治療法に関しては、脳神経外科領域における手術支援機器の普及により最新の手術用顕微鏡の導入をはじめとして、手術が安全かつ正確に行われるようになった。さらに神経内視鏡、超音波吸引手術装置(SONOPET)術中超音波システムの導入、また脳波、聴性脳幹反応(ABR)などの電気生理学的モニターの導入により神経機能面からもより一層、安全性が高まった。また、最近の進歩の著しい血管内治療も積極的に取り入れ、安全性の高い低侵襲治療手技が可能となってきている。
(3)疾患の治療に際しては、患者さん及びその家族に充分理解していただけるよう、疾患の原因、手術と手術以外の治療法、起こりうる合併症、一般的治療前後の経過などを説明し、インフォームドコンセントを重視している。疾患の種類によっては、いろいろな治療手段があり、患者よりsecond opinionを求められる場合は、最もふさわしいと思われるそれぞれの専門医に情報提供を行い、直接意見を伺ったりできるように紹介している。逆にsecond opinionを依頼された場合はこれまでの知識と経験により適切なアドバイスを行っている。
(4)また、地域医療の中核病院としての機能を果たすべく救急医療にも積極的に取り組んで当直医よりオンコール体制で対応している。すなわち画像転送システムを利用して専門的指示で初期治療を行い、場合によっては、緊急に検査、開頭手術を含む治療が可能である。特に頭部外傷、脳卒中急性期では到着1時間以内に開頭術を含めた治療が出来る様に検査から治療まで迅速化している。
(5)重症患者や術後の管理には最新のモニターを有するICU、CCUにて頭蓋内圧モニター、頚静脈酸素飽和度モニター下にて、低体温治療、昏睡療法などを積極的に行っている。
診療体制
診療実績
2007年11月開設以来、手術件数は徐々に増加
2008年前期 70件
| 脳・脊髄腫瘍 | 8件 | 血管吻合術 | 11件 |
|---|---|---|---|
| 脳動脈瘤 | 7件 | 頚動脈内頚剥離 | 6件 |
| 開頭血腫除去 | 8件 | 水頭症に対するシャント術 | 6件 |
| 三叉神経痛 顔面麻痺 | 5件 | 穿頭術 | 5件 |
| 脊髄手術 頚椎 | 8件 | 硬膜外電極 | 1件 |
| 腰椎 | 5件 | 視神経開放術 | 1件 |
対象疾患
1.脳血管障害(脳卒中)
急性期診断にはCTscan、MRI、MRA、DSAなどの検査を緊急に行い、24時間体制で緊急手術を含めた治療が可能である。特に迅速な治療を要するクモ膜下出血や脳内出血の重症例では積極的に、迅速な救命処置あるいは手術を行い、根治的治療を行っている。外科的処置のみで救命処置が不充分な場合には、脳循環動態と脳圧モニター下に低体温療法や昏睡療法を行っている。
脳梗塞急性期では、適応を検討した上で静注用+PAを用いた急性期血栓溶解療法を行うだけでなく緊急にカテーテル検査を行い、適応を選んで閉塞部位の血栓を溶解して再潅流治療を行い脳梗塞を最小限に留めている。脳ドックで見つかった無症候性の血管病変や脳卒中の予防を目的とした外科的治療には、頚動脈エコー脳血流ドップラー検査。
SPECTなどで脳循環動態を総合的に評価し、慎重に治療手段を選択している。その際にはインフォームドコンセントを重視し、国内外の臨床試験の成績を元にした説明を行い、最終的には患者さん自身で治療法を選択して頂いている。特に頚動脈病変では70%以上狭搾している程度の強いものには積極的に治療を勧め、手術療法を基本としている。病変の性質や患者さんの全身状態によっては血管内治療で同等の成績を治めている。術後や程度の軽い病変を持つ患者は定期的に頚動脈エコーや脳血流検査などの非侵襲的手法により検査を行い、外来診療において疾患の進行程度と予防的効果の成果を評価している。
頭蓋内血管の狭搾性病変で脳血流が減少している場合は、脳血流の評価をして脳血流の評価をしてEC-ICバイパスを行っている。
脳動脈瘤では未破裂例では動脈瘤自体の破裂の可能性と破裂した場合の神経障害、生命に及ぶ危険性や患者さん自身の年齢、全身状態さらに手術の危険性を考慮し、インフォームドコンセントを重視して治療を行っている。治療法も開頭術によるクリッピングだけでなく血管内治療も積極的に取り入れ、低侵襲治療も行っている。
2.脳腫瘍
CTscan、造影MRI、DSA、ラジオアイソトープを用いた検査で総合的に診断し、低侵襲手術を行うため神経内視鏡、超音波吸引手術装置(CUSA)術中超音波システムなどの先端手術機器を導入し、定位的脳手術、頭蓋底アプローチなどを広く活用している。
外科的切除術は治療の基本であり、手術用顕微鏡を用いて、より安全で正確な腫瘍摘出が可能となっている。また、ある種の脳腫瘍は切除だけでは不十分で、放射線療法、化学療法、免疫療法などで多角的な治療法の組み合わせを行っている。放射線療法は腫瘍に焦点を当てたradiosurgery、Tomotherapyは当院で治療可能で、症例により京都大学の原子炉施設を利用した中性子捕捉療法の適応や治療の相談および専門的知識を通した紹介及び治療の参加を行っている。
化学療法は抗癌剤の副作用を最小限に押さえるために、抗癌剤の腫瘍局所投与を行っている。確立された治療プロトコールを使って、より効果的な組み合わせで治療を行って長期間の寛解が得られている。
3.頭部外傷
脳神経外科専門医がオンコール体制で、1次救急から3次救急まで24時間体制で対応している。緊急検査はCTscan、MRIを迅速に施行し、重症度にあわせて緊急開頭術、穿頭術を行っている。また必要に応じて脳圧モニター、頚静脈酸素飽和度モニター、脳体温などをモニターして低体温療法、昏睡療法を行っている。
4.脊髄、末梢神経疾患
変形性脊髄症や椎間板ヘルニア、神経絞扼症候群などの脊髄神経や末梢神経の圧迫による手足のしびれ、痛み、麻酔などの症状も積極的に治療を行っている。
診断はMRI、MRミエログラフィーや筋電図、神経伝達速度測定など非侵襲的検査を行っており、脊髄造影、椎間板造影のような侵襲的検査は最小限にしている。
また、手術は手術用顕微鏡を用いてmicrosurgical techniqueにより行い、高回転、高トルクのpower drillを最大限に活用している。また固定法はプレートやゲージを用いたインストルメンテーションの応用も行っている。
手根管症候群や肘管症候群のような神経絞扼症候群の手術は、外来手術で行っており、症例を選んで侵襲の少ない内視鏡下の手術を行っている。非侵襲的手術の術後は装具の固定を要さないので手術翌日には軽作業も可能である。
5.機能的脳神経外科
三叉神経痛、顔面痙攣、舌咽神経痛に対する手術療法を積極的に取り入れている。手術は聴性脳幹反応などのモニターを行うことで、術後の合併症を防いで、聴力障害などの機能的障害を来さない方法をとっているので機能的にみた成績も良好である。
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