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武田病院グループからのお知らせ

2018.07.11 すこやか健康相談 京都認知症総合センタークリニック 言語聴覚士 柿本 明日香 「認知症について」

※医師やスタッフの肩書き/氏名は放送時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。



認知症について

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京都認知症総合センタークリニック 言語聴覚士 柿本 明日香




認知症とは?

「脳自体や何らかの身体の病気が原因で、脳の働きが悪くなったためにいったん獲得された知識・知能や周囲への適応性などといった機能が損なわれ、日常 生活に支障をきたした状態」だと定義されています。

認知症の具体的な症状はなんですか?

認知症の症状はさまざまですが大きく「中核症状」と「周辺症状」の二つに 分けられます。「中核症状」とは、脳が本来もっている機能が働かないために 現れる症状です。いわゆる`物忘れ'といわれる「記憶障害」、段取りや計画がうまく立てられなくなる「遂行機能障害」、思うようにことばが出てこない、 相手の言うことが理解できないなどの「失語」、運動障害がないのに目的に合った行動ができない「失行」などがあります。
「中核症状」は認知症のタイプによって異なりますが、アルツハイマー型認知症では記憶障害が中核症状となります。
・一方「周辺症状」は、中核症状に伴って生じる症状です。脳がうまく機能しないことによる日常生活の混乱から生じ、多彩な症状があらわれます。例えば徘徊や妄想、関心の低下などがあります。 ただし周辺症状は、すべての認知症の人に必ず起きるわけではなく、その程度も異なります。

認知症の症状のひとつに「妄想」があるということですが、ニュースなどでも一時話題になっていましたね?

はい。それでは、認知症のエピソードとして多くみられる「物盗られ妄想」を例に、中核症状と周辺症状の関係をみてみましょう。
妄想は中核症状である記憶障害をベースに生じます。たとえば大切な財布をなくさないようにとタンスの奥などにしまうものの、しまったこと自体を忘れてしまいます。ここまでが中核症状です。
ところが財布がみつからず、しかもその原因がわかりません。そうすると脳が混乱して「誰かが財布を盗った」という妄想が生じて、訴えたり騒いだりします。こうなるのが周辺症状といえます。ただ注意したいのは、妄想が生じるのに記憶障害は関係しますが、それだけでは妄想は起こりません。それまで家庭の中心的存在だった人が認知症を発症したことにより、世話をされる側に回ってしまったというような立場の逆転から不安が生まれ、それが妄想の誘因となることがあります。他にもその人が昔に経済的に苦労した経験が関係するとも考えられています。 認知症にはさまざまな症状がありますが、まずは「周辺症状」のもとになる「中核症状」を、正確に把握することが重要です。その「中核症状」を評価するのが神経心理学検査です。

神経心理学検査とは?

もの忘れ外来では診察や問診とともに、血液検査、MRIなどの画像検査、神経心理学検査などさまざまな検査を行います。
神経心理学検査は簡単にいうと脳のはたらきである認知機能を調べる検査です。認知機能検査といってもよいと思います。認知機能、つまり先に述べた認知症の「中核症状」である記憶や遂行機能、視空間認知、言語機能などについて詳しく調べていく検査といえます。

神経心理学検査とはどのように行われるのですか?

当クリニックでは診察にあわせて、神経心理検査を言語聴覚士が行っています。
1時間半ほど時間をかけ、記憶の検査を含めた複数の検査を行います。記憶検査 など、普段苦手だと感じていることを長時間行うので大変だと感じるかもしれません。言語聴覚士は、おひとりおひとりの様子を見ながら休憩をはさんだり、できる限り負担に感じないような雰囲気をつくるなどの配慮をしながら検査を進めています。 まず記憶の検査についてご説明します。検査では、記憶の機能をさまざまな面から調べていきます。物語を聞いてそれを覚えたり、絵を見てしばらく経ってから覚えた絵を描いてもらうなどします。
ひとくちに記憶といっても「言語性記憶」と「視覚性記憶」に大きく分かれています。「言語性記憶」とは耳で聞いた情報を記憶することです。対して「視覚性記憶」とは目で見た情報を記憶することです。わたしたちはこれら両方の記憶を利用していますが、人によってはどちらかが得意という傾向があります。
例えば、どこか目的地に行こうとする時に、言語性記憶が得意な人は、人から「まっすぐ進んで、最初の交差点を左に曲がる」と聞いたことを頭や口で繰り返しながらであれば、スムーズに進むことができるかもしれません。一方、視覚性記憶が得意な人は地図を見る方が頭にイメージを定着でき、スムーズに目的に着けるかもしれません。記憶の詳しい検査を行うことによって、どのような記憶が得意なのか、あるいは苦手なのかなどが詳しく分かります。
記憶以外の検査としては、積木を見本どおりに組み合わせる検査や、数字と文字 を交互につないでいく検査などがあります。前者は、図という視覚情報を脳に入力し、それを積木を組み合わせるという出力を適切に行えるかといった視空間構成について調べるものです。またどのように積木を動かせば同じ絵柄になるかといった推理力も関係しています。
後者の検査は、数字と文字を交互につなぐことで、その一つ前の数字や文字を覚えておけるか、2つのルールを適切に頭で切り替える作業がうまくできるかについて調べるものです。

神経心理学検査の目的はなんですか?

まず第一に、神経心理学検査の結果は、認知症の診断のための重要な情報になります。第二に、生活の質やケアの向上に役立つ情報になります。
本人や家族にとって、あれもこれもできなくなった、分からなくなったと漠然と不安に感じることから、何が具体的に苦手になっているのかと認識が変わることで行動や対応は大きく変わります。神経心理学検査は、できないことや苦手なことを見つけるための検査ではありません。「できること」が何なのか、「どうすれば」できるのかについても注目しています。「できること」を増やすことは、生活の質を維持するということにくわえ、自信や意欲を高めることに繋がると考えます。
たとえば記憶力の低下があると分かったとしても、ことばで言われるよりも絵の方が記憶しやすいといった視覚性記憶が得意だと分かれば、目につきやすい台所のカレンダーに目立つようにメモを書いたり、大切なものは目立つ箱に入れて、わかりやすい場所に決めて置くなど、忘れても困らないようにする工夫へと変えることができます。
他にも遂行機能が低下していれば、1度に複数のことをやってもらうのではなく、ひとつひとつを短く段階的に伝えていくなどの対応をするといった対応に変えることで、できることが増える可能性があります。
当クリニックでは、神経心理学検査で得られる情報を看護相談に生かし、来院されたご本人や家族に、その方にあう対応法をアドバイスとしてお伝えしています。

最後にリスナーに向けたメッセージをお願いします

物忘れがあるからといって、認知症というわけではありません。年齢相応の物忘れと、そうではない物忘れとがあります。それを判断するには、専門機関で詳しい検査をする必要があります。また物忘れだけではなく、判断力の低下や、ことばが出てこないなど、気になることがあれば受診をおすすめします。`もしかしたら認知症かも'と不安やストレスをもちつづけていらっしゃるのなら、予防や安心のために一度検査を受けることを検討されてもよいかもしれません。年をとると若いときよりも一部の能力が低下するのは自然なことです。逆に若いときにはできなかったことが、年を取り経験を活かすことによってできるようになることもあります。これは「結晶性知能」と呼ばれる能力です。
なにより今の自分の能力を正確に知り、適切に対応し生活習慣や環境を整えること、コミュニケーションを豊かにもち脳を活性化させること、それらが認知症発症の予防につながると考えます。

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