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武田病院グループ「がん治療」への取り組み

2012/06/27 トピックス 武田病院グループ

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トモセラピー、ハイパーサーミアなど最先端の治療法を導入し効果的ながん治療を展開します


近年、がんの発生死亡数は増加を続け、1981年には国民の死亡原因の第1位となりました。現在では年間約32万人、約3人に1人の方ががんで亡くなられています。こうした状況を鑑み武田病院グループでは、正しいがん知識の普及と食生活の改善を促進させるため、講演会を通じた「予防活動」、武田病院健診センター・画像診断センター、宇治武田病院健診センター、山科武田ラクトクリニックによる「がん検診」での早期発見、そして急性期病院を中心とした「最新のがん治療」といった多面的な取り組みを行っております。

特に、武田病院画像診断センターでは、最新のPET-CTにより、極めて早期でのがん発見に効果をあげております。2006年10月からは、十条武田リハビリテーション病院において京都府初となるがんの温熱療法「ハイパーサーミア」を導入〔現在はたけだ診療所(免疫・遺伝子クリニック)に移転〕。たけだ診療所(免疫・遺伝子クリニック)での免疫療法と併せることで、大きな効果を上げています。さらに、宇治武田病院においては、2007年4月から次世代のがん治療との呼び声の高い「トモセラピー」を導入。国内では6台目、近畿圏内では初の導入事例となり、大学との協力のもと、これまでにないがん治療を展開しております。


武田病院グループでは、今後も最新の治療法を積極的に取り入れ、質の高いがん治療を行ってまいります。



【免疫療法と併せハイパーサーミアを展開】


現代医学では、がん治療の標準的3大療法として、手術・抗がん剤・放射線療法が行われております。特に早期がんであれば、手術が有効な治療となりますが、進行がんになりますとこれらの3大治療を行いましても治療に限界があることが多く、強い副作用を伴うこともあり患者様にとって辛い治療となってしまっているのが現状です。


それに対して、免疫療法と温熱療法は身体への負担が少ない治療であり、単独で治療を行うこともありますが、上記の標準的3大治療と組み合わせることにより、集学的治療として更なる上乗せ効果をあげることが期待されております。


また、近年、がんの治療効果には心の持ち方も影響しているという精神腫瘍学(サイコオンコロジー)という分野が注目されております。副作用が強い治療を長期間受け、さらに効果が思わしくないとき、治療を受けたいのにもう他に治療がないと宣告されてしまったとき、人間はどうしても落ち込んでしまうものです。そういった患者様に少しでも希望を持っていただき、がんと向き合い戦っていくお手伝いができればと思っております。


当院では、保険適応で温熱療法を施行しておりますが、一方で自由診療となりますが従来から行っております活性化リンパ球(LAK)療法、自家がんワクチン療法に加え、最新の治療であるレトロネクチン誘導Tリンパ球(RIT)療法などの免疫療法を受けていただくことも可能です。


これらの免疫療法というのは、本来人間に備わっている免疫力の担い手であるリンパ球を利用した治療で、LAK療法はそのリンパ球を体外で薬剤を使用し培養・活性化して体に点滴投与する治療です。このLAK療法を改良した治療がRIT療法です。


RIT療法はナイーブT細胞というリンパ球を誘導して点滴投与するのですが、ナイーブT細胞の特徴としましては、体内移入後の寿命が長く、癌の近くのリンパ節でがんを効率よく攻撃するための教育を受け、がんに特異的な細胞障害性Tリンパ球へと成長していくため、高い抗腫瘍効果を発揮すると考えられております。このがんに特異的な細胞障害性T細胞は、簡単に申し上げますと、がん細胞の表面に出ているがん抗原という目印を認識しているため、がん細胞に効率よく攻撃をすることができるリンパ球で、免疫療法において大変重要な役割を担っていると言われております。


自家がんワクチン療法は、手術で摘出したがんをワクチンにして体に投与して、がんに特異的なリンパ球を誘導するのが目的です。


温熱療法(ハイパーサーミア、hyperthermia)は、ヒトの細胞が43度以上に上がると死滅する原理を用い、癌細胞だけの温度を選択的に上昇させることにより抗腫瘍効果を発揮する治療です。正常の組織は熱が加わると、血管が拡張し血流増加により放熱(例えるなら車のエンジンのラジエーターと同様の仕組み)するため温度が上昇しませんが、腫瘍組織はそのような放熱が行われず温度が上昇しやすいため43度まで温度を上昇させることが可能となります。ただし、部位や血流の問題で治療ができなかったり効果が出にくい癌種も存在します。


以上が当院で受けていただけるがん治療です。全て通院で受けていただけますので、他院で標準治療を受けられている患者様でも治療可能ですので、お気軽に御相談ください。


●ハイパーサーミアtopic_120627_1.jpg
直接的に腫瘍の内部温度を上げ、癌を死滅させることを目的とした治療法。直接的に癌細胞を攻撃する効果と間接的にQOL(生活の質)を高めることを目指している。


【次世代のがん治療「トモセラピー」を開始します】


トモセラピー(Tomo Therapy)は、正常組織を避けて患部にのみ放射線を照射することができる、これまでにない画期的な治療機です。極めて正確に放射線を照射する範囲と量を調整できるうえ、複数箇所~全身をも一度に連続して治療することが可能です。こうした特長を持つため、早期発見時の根治治療からターミナルケアにおける痛みを制御する治療まで、幅広く効果的な放射線治療を行えます。


topic-120627_2.jpg根治治療におきましては、必要な範囲にのみ放射線を照射できるため、これまで以上の線量を照射することが可能です。単純に線量を増やせば治癒効果が高くなる訳ではありませんが、一定のケースにおいては向上する可能性を見込むことができます。また一度の放射線量を増やすことで、治療回数を減らすことも可能です。海外では、35回照射していた前立腺ガンの放射線治療を、7回減らし28回にしている報告があります。副作用も少なく、治療成績も同等な上、治療回数が減少するため、患者様の肉体的負担と費用負担を減らすことにつながっています。


一方で進行性のがん等につきましては、これまで隈なく全身に照射していた治療に対し、目の水晶体や肺など、放射線に弱い部分を避け、必要な部分にのみ一度に全身を照射することが可能です。例えば白血病の場合は、体全体の骨のみに集中して照射することが可能です。


特にトモセラピーが得意としますのは、耳鼻科領域の頭頚部の腫瘍(喉頭がん、咽頭がん、上顎がん等)、脳腫瘍、前立腺がん、骨転移などです。治療におきましては、患者様の周囲を放射線照射口が回転し、角度と量を緻密に調整しながら、コンピュータ制御で放射線を照射します。照射範囲にもよりますが、1回の照射時間は10~20分程度です。


放射線治療に対しては、「放射線が怖い」「副作用が強い」など、従来からマイナスイメージがあり、しばしば患者さんが敬遠する傾向があります。こうしたイメージに対し、実際の放射線治療は、日進月歩の技術革新とたゆまぬ研究により飛躍的に進化し、極めて副作用が少なく効果が高い「患者様に優しいがん治療」となっています。


欧米におきましては、がん患者の放射線治療が6割も行われていますが、日本では2割程度しか行われておりません。本来なら放射線治療が適合するケースがもっと多くあるのです。今後は、トモセラピーによるがん治療を通じ、放射線治療の正しい理解を広め、患者さんに負担をかけない優しい治療の普及に貢献したいと考えております。

●トモセラピーtopic_120627_3.jpg
51門の放射線照射口を持ち、回転しながら連続で放射線を当てる治療機械。専用のスーパーコンピューターを持ち、極めて高度で緻密な制御により照射する方向・量を調節することで、これまでの放射線治療ではできなかった、変形した照射範囲を設定することが出来る。ヘリカルCTの原理を応用して誕生した。


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