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誤嚥(ごえん)性肺炎について
十条リハビリテーション病院 呼吸器内科 医長 小川 栄治
誤嚥性肺炎の「誤嚥」というのはなんですか。
我々が日々食べている食べ物には、非常にたくさんの雑菌(ばい菌)が含まれています。食べ物が通常通り食べ物の通り道(消化管)に取り込まれれば栄養成分は腸で吸収されて、いらないものは便として外に出されるという仕組みがあります。ただ、食べ物の中に大量に雑菌が混ざっていた場合は、嘔吐や下痢などでその食べ物を外に出そうとする排除システムが体内にあるのですが、これをいわゆる食中毒といいます。それに対して、食べ物が誤って空気の通り道(気管)に入ってしまって、そのまま肺の中に入ってしまうことを誤嚥といいます。肺には消化管のように体外に排出する出口がありませんので、そのまま雑菌が肺の中にずっと残ってしまい、その雑菌が繁殖して肺炎になってしまうことを誤嚥性肺炎といいます。
どういう方が誤嚥性肺炎を起こしやすいんですか。
例えば慌てて水を飲んだとき、むせて咳が出るという経験は一度ぐらいあると思いますが、これを嚥下(えんげ)反射といいます。つまり、万が一食べ物が気管に入りそうになると、嚥下反射が起こって決して気管の中には入れないという仕組みで、むせて咳を出すことによって肺の中に食べ物や飲み物が入らない仕組みがあるんですが、ご高齢の方や脳梗塞などの病気をお持ちの方は、この嚥下反射が非常に弱くなってしまって、肺の中に入ってしまって肺炎を引き起こすということがありますね。
誤嚥性肺炎というのは診断で分かるものなのですか。
診断は、専門的にはCTの所見や嚥下試験などいろいろな判定方法がありますが、疑わないとまず診断はできません。ですから、先ほど述べました誤嚥性肺炎を引き起こしやすい状態の人で、発熱を繰り返す場合は、早い段階で専門医の診断を受ける必要があると思います。誤嚥性肺炎を引き起こしやすい状態の人というのは、脳梗塞やパーキンソン病、認知症などの神経疾患をお持ちの方や、寝たきりの方、口腔内が乾燥している、歯のかみ合わせ障害などの口の中に異常がある方、胃や食道に病気をお持ちの方、鎮静薬や睡眠薬などを大量に飲んでいる方などを言います。
症状は肺炎と同じようなものですか。
そうですね。症状としては肺炎との区別は非常につきにくいです。発熱、咳が出る、食欲が落ちるなど、いわゆる一般的な肺炎の症状と一緒なんですが、原因となる菌が違う場合が多いんですね。一般的な肺炎の原因となる菌と違って、誤嚥性肺炎では嫌気性菌という菌が多いと言われていて、一般的な肺炎と症状などは似通ったものですが、治療法が異なる場合が多いですね。ですから、誤嚥性肺炎かどうかということに関しては、状況を正確にご報告いただいた上で、医師が的確な治療をする必要があると考えられています。
治療は普通の肺炎よりも難しいのですか。
誤嚥を起こす方というのは、一度誤嚥を起こして肺炎になって、その肺炎が治ったら次その誤嚥を起こさないかといいますとそうではなく、誤嚥を起こしやすい方というのはまた次の誤嚥もまた起こしやすいということで、肺炎を繰り返すことがあるんですね。肺炎を繰り返しますと、だんだん耐性菌というものができてきて、一度効いた抗生物質(治療)が効きにくくなってきて治療に時間がかかり、肺炎に効く抗生物質がだんだんなくなっていくという傾向があります。そういう意味では、治療に難渋する場合が多いといわれています。
耐性がついてくるものなんですか。
はい。耐性というのは、一度使った抗生物質が次の肺炎になったときには効かなくなって、効かなくなった菌だけが生き残ってまたそれが暴れだすということをして、だんだん効く薬がなくなっていくことを薬物耐性といいます。
高齢者に多くなりそうな気がするんですけれども、日常生活で気をつけることっていうのはあるんですか。
高齢者の大体41.2%が誤嚥性肺炎だと言われているデータがあります。つまり高齢者の方というのは嚥下反射の弱い方、あるいは口腔内の清潔を保ちにくい方だということもいえるんですけど、そういう方は口腔内の清潔を保つ、次に食事をゆっくりよく噛んで飲み込む、あるいは最近は薬局でも売っていますが、食事にとろみをつけるなどが予防方法として挙げられています。
口の中を清潔に保つというお話ですが、具体的にはどうすればいいんですか。
いわゆる一般的な歯磨きたや歯肉マッサージを行う、あるいはご高齢の方は義歯(入れ歯)の方が多いと思いますが、義歯の方は義歯を外してきっちりと磨いていただいて夜間は洗浄液につけるとか、うがいを一日に6~8回行うことが非常に有効だという報告があります。
改めまして誤嚥性肺炎のお話も含めてリスナーのみなさんに一言お願いします。
誤嚥性肺炎は、ご高齢の方や神経疾患をお持ちの方は、頻発といってもいいほどの病気です。もし近くにおられる方で日ごろ食事のときにむせがよく見られたり、発熱を繰り返しておられる方がいらっしゃった場合は、専門医に早い段階で診察をしていただくことをお勧めします。







