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東山武田病院 腎臓内科医長 吉岡徹朗

腎臓について

康生会 東山武田病院 腎臓内科医長 吉岡徹朗

腎臓病は怖いというイメージが漠然とあるのですが、実はあまり知りませんし、普段生活していて腎臓の存在を意識することもなく、実際、腎臓が悪くなるとどうなるのか、なんとなくピンと来ないのですが。

そうですね。「腎臓がどんな働きをしているのか」を理解すると、「腎臓が悪くなるとどうなるのか?」ということを理解しやすいと思いますので、まず腎臓の仕組みや働きについて少し詳しくお話しします。
腎臓は、腰のやや上の背中側に左右1対の計2個あります。ちょうどソラマメのような形をしていて、大きさは握り拳大です。腎臓には、毎分心臓から送り出される血液(約5L/分)の20%が流れ込んでいます。腎臓に流れ込む血管(腎動脈)は、腎臓の中でどんどん枝分かれしてたくさんの細い血管になり、最終的に「糸球体」という毛細血管が糸玉状になった構造になります。糸球体は「ボウマン嚢」という袋に包まれていて、このボウマン嚢から「尿細管」という尿が通る管が出ています。この「糸球体、ボウマン嚢、尿細管」の組み合わせが腎臓の働きの基本となっていて、「ネフロン」と呼ばれています。ネフロンはひとつの腎臓に約100万個あります。
  腎臓に送り込まれた血液は糸球体に流れ込んで、糸球体の血管の壁で濾過されて、余分な水分などが血管の外に出ます。余分な水分はボウマン嚢で受け止められ、尿細管に出て行きます。尿細管を通る間に必要な物質や水分を再び吸収したり、不要な物質を捨てたりしながら、体液の量、電解質、酸・アルカリのバランスを精密に調整し、最終的に不要となった老廃物や水分だけを「尿」として体の外に捨てます。この他に、赤血球を作るホルモンや、血圧を調節するホルモン、骨を丈夫にするビタミンDの活性化を行っています。つまり腎臓は、「血液を濾過して老廃物を排泄する」、「体液の量と組成を調節する」、「血圧を調節する」、「赤血球を作って貧血を防ぐ」、「骨を丈夫にする」という働きをしています。

腎臓は本当に大切な臓器なんですね。そんなにたくさんの働きをしている腎臓が悪くなると、大変なことになりますね。

そうですね。腎臓が悪くなって、「血液を濾過して老廃物を排泄する」働きが弱くなると、体内に老廃物が溜まったり、尿に蛋白が漏れたりします。「体液の量と組成を調節する」ことができなくなると、浮腫、心不全、電解質異常、血液の酸性化が起こります。血圧調節機能が悪くなると、高血圧になります。赤血球を作るホルモンが作れなくなると貧血になります。また骨が脆くなるなど、とてもたくさんの症状が出ます。これらの症状の治療には、たくさんの飲み薬や注射が必要になり、最終的には人工透析が必要になります。ただし、このような症状は腎臓の働きが相当悪くなるまでは出ません。腎臓という臓器は、あまり目立ちませんが、私たちの体内環境を一定に保つために、それだけ多くの仕事をしているということです。

自分の腎臓が健康なのか、悪いのか、はどうやって分かるのでしょうか?

「メタボリックシンドローム」という病気の概念はすっかり有名になりましたが、「慢性腎臓病(Chronic kidney disease : CKD)」のことはご存知ですか?

何回か聞いたことがあるのですが、詳しいことは知りません。

慢性腎臓病は、「糸球体濾過量(eGFR)という腎臓の働きを示す数値で表される腎機能の低下(60 mL/min/1.73m2未満)」があるか、もしくは「蛋白尿など腎臓の障害を示す所見」が3ヶ月以上続く状態をさす言葉です。つまり、慢性に経過する腎臓病のすべてが「慢性腎臓病」です。糸球体濾過量は、年齢、性別と血液検査の数値から計算式で推算します。eGFRは医療機関を受診した時に担当医に聞いて頂いてもいいですし、日本慢性腎臓病対策協議会とか腎臓ネットなどのホームページにアクセスすると、GFR計算ソフトがあります。この糸球体濾過量が60未満か、あるいは持続的な蛋白尿があれば、かかりつけ医かあるいは専門医を受診することをお奨めします。

健康診断などで蛋白尿と言われただけで、何も自覚症状がなくても受診した方がいいのですか?

腎臓の障害が始まっていても、蛋白尿が出るだけで、他には何も症状がなく、血液検査でも異常なしというのが普通なんです。自覚症状が出たり、血液検査値に異常が出るのは、腎臓の働きがかなり落ちてしまってからです。そして、そうなってから治療を始めても、末期腎不全への進行をくい止めるのは難しいですし、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管病の危険性も高くなります。

慢性腎臓病を放置すると、心血管病や末期腎不全になってしまう可能性が高いと言うことですね。

そうです。でも、慢性腎臓病を早期に発見して、進行や病状に応じた適切な治療をすれば、心血管病や人工透析が必要な末期腎不全へのリスクを下げることができます。慢性腎臓病の成人患者さんは、日本におよそ2000万人で、このうち心血管病の危険性が特に高くなる、腎臓の機能が50%未満の患者さんに限っても、およそ420万人で成人人口の4.1%と非常に多いことがわかっています。他人事ではなく、もしかしたら自分もそうかもしれないという目で、一度検診の結果や血圧を注意して見てみてください。また、すでに慢性腎臓病と診断されている方は特に、普段からしっかり自己管理をし、定期的な通院を欠かさないことが必要です。

慢性腎臓病はどんな治療をするのですか?

慢性腎臓病の原因となっている病気の治療、慢性腎臓病を進行させないための治療、慢性腎臓病に伴う合併症の治療です。具体的には、塩分制限(6g/日)、タンパク制限、カリウム制限など食事療法、肥満の解消(BMI<25)、禁煙、ストレスを避ける、節酒など生活習慣の改善、血圧管理(130/80未満に)、脂質異常症の治療(LDL-C 120未満に)、糖尿病患者さんの血糖管理(HbA1c 6.5%未満)などです。血圧はただ下げるのではなく、腎臓を保護する作用のある降圧薬を用います。

人工透析について教えてください。

透析療法には、血液透析と腹膜透析があり、現在日本の透析患者さんの96%以上は血液透析を受け、残りおよそ4%が腹膜透析です。
血液透析は、血液を体外に取り出し、人工の膜を通して血液中の老廃物や余分な水分を取り除いて体内に戻します。血管に針を刺して血液を連続的に取り出すために、手術で前腕の動脈と静脈をつなぎ合わせてシャントという血液の取り出し口を作っておくことが必要です。患者さんは週3回透析施設に通院し、1回あたり4~5時間かけて透析を受けます。
腹膜透析は、腹腔内に専用の透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して血中の老廃物や余分な水分を透析液に吸収させた後、その液を体外に出し、血液を浄化します。24時間連続してゆっくり透析を行うので、体の負担が軽い治療法と言えます。透析液の出し入れのために、カテーテルというチューブを手術で腹部に埋め込みます。通院は月1~2回で済みます。透析液の交換は、自宅や職場で患者さんが自分で行います。

東山武田病院ではどちらの透析治療が可能ですか?

現在は血液透析のみを行っています。当院では、内シャントを作る手術から透析導入、通院維持透析まですべて行っていますので、人工透析が必要になる可能性のある進行した慢性腎臓病、腎不全の患者さんも安心して通院して頂けるようになりました。血液透析センターは1年4ヶ月前に新設されたばかりです。血液透析は毎週3回、1回4-5時間かかり、それが一生続きます。透析が日常生活の一部になるので、患者さんのプライバシーや快適さを重視して全ベッドが個室という大変ユニークなレイアウトを採用しています。


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