※医師やスタッフの肩書き/氏名は放送時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。

ヒブワクチンについて
東山武田病院 小児科部長 秋山 文子
ヒブワクチンについてお話いただきたいのですが。
ヒブワクチンという子どもの予防接種が先月12月から日本でもやっと始まりました。ヒブワクチンは、乳幼児のヒブによる細菌性の髄膜炎を予防してくれるとても有効な予防接種なのです。
ヒブというのはなんですか。
ヒブは、ヘモフィルス-インフルエンザb型という細菌のことで、今流行りのインフルエンザとは別のものです。ヘモフィルス菌というのは、肺炎や中耳炎を起こすありふれた菌なのですが、その中のb型という菌が特別で、乳幼児に怖い髄膜炎を起こす菌なのです。
ヒブの髄膜炎とは、どういうものなんですか。
ヒブは、せきやくしゃみなどで人から人へうつります。これが全身の病気を引き起こした時に、脳や脊髄に菌が侵入するのが髄膜炎です。ヒブの髄膜炎というのは、子どもの細菌性髄膜炎の中でも半分以上を占めていまして、頻度が高くて重症になる怖い病気です。
何歳ぐらいの子がかかりやすいんでしょうか。
多くの場合、生後3カ月から5歳になるまでの子どもたちがかかります。特に、2歳未満、0歳児、1歳児のお子さんに最も多いので要注意です。
何人ぐらいのお子さんがなっているんですか。
毎年全国で5歳までのお子さん約600人の乳幼児がヒブの髄膜炎にかかっていることが分かっています。
かかってしまうとどんな症状が出てくるんですか。
ヒブの髄膜炎にかかりますと、熱や吐き気などはじめは風邪と似た症状が出ます。そして機嫌が悪くなり、けいれんが起きて治まりにくく、どんどん状態が悪化して、約5%の子どもは死んでしまいます。そして約25%の子どもも寝たきりになったり、けいれんが起こったり、難聴になったり、発達の遅れといった後遺症が残ります。実際、私の身近なところでも2カ月前にヒブの髄膜炎にかかった子がいます。朝日新聞の記事でお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんが、1歳7カ月の「ももえちゃん」という子なんですが、前の日まで元気でおしゃべりまでしていた子なのに、突然高熱が出ました。お母さんが小児科医で、心配したお母さんがももえちゃんに抗生物質の点滴までされたのに翌日にはけいれんが続いて止まらず、自発呼吸もなくなって、今は脳死状態になっておられます。それがヒブの髄膜炎だったということです。ですから、本当に怖い病気なんです。
治療法はないんでしょうか。
髄膜炎はかなり初期に見つかれば抗生物質を大量に使うなどして治療できる可能性もあります。しかし、ヒブの髄膜炎ははじめは風邪の症状と区別がつきにくくて、簡単な検査では診断が付かないんですね。しかも、先ほどのお子さんのように進行がとても早い場合が多くて、最近は耐性菌といって、抗生物質の効かないヒブの菌も出て来ているんです。そこで、今度出たワクチンによる予防が一番大事ということになります。
日本でもやっとヒブワクチンが接種できるようになったということですが、世界の他の国々でいうと、どうなんですか。
このヒブワクチンは約20年前に研究開発されまして、アメリカでこのワクチンが20年前に接種が開始されたんですが、アメリカでは数年のうちにヒブの髄膜炎が100分の1に減ったのです。世界保健機関(=WHO)が1998年、今から10年前に「ヒブワクチンを全ての乳幼児へ定期接種(ワクチン)にするべきだ」という風に推奨しまして、今ではアジア、アフリカを含む世界の120カ国以上で導入されているんです。欧米では、公費負担でほぼ全員の子どもが受けていまして、それらの国々ではヒブの髄膜炎というのはすでに過去の病気となっています。
日本で行われる場合は、どのように接種が行われるんですか。
うちの病院でもやっているんですが、かかりつけの小児科で接種を受けることができます。ただ、フランスから輸入しているワクチンですので、今のところ予約制になっております。望ましい接種のスケジュールは、2カ月から7カ月未満のお子さんから開始しまして、4週間から8週間空けて3回打ちます。それから一年経ってから追加接種をもう一回、合計4回打ちます。生後7カ月から12カ月未満のお子さんの場合は、始めに2回打ちまして、一年後に一回の合計3回です。それから、1歳から5歳未満のお子さんは、1回だけの接種となっています。三種混合ワクチンというのがありますが、同じ日に接種することができます。副反応としましては、接種したところが赤く腫れるぐらいで、三種混合と同じぐらいの副反応で、安全性の高いワクチンと言われています。
ただ、任意接種で費用がかかるんですよね。
そうなんです。予防接種には、全額お金を払っていただく全額自己負担の任意接種というのと、国や地方自治体が費用を出してくれます定期接種というのがあるんですが、残念ながらこのヒブワクチンは任意接種のため、全額自己負担になっております。病院によっても違うんですけど、平均一回に7000~8000円かかりますし、一部の自治体(宮崎市、鹿児島市など)では、費用の一部を自治体が助成しているという制度も始まっているそうですが、親御さんの経済的な負担は大きいと思います。私たちとしましては、全ての子どもたちがこのヒブワクチンを公費での定期接種で受けられるように望んでいますし、絶対必要だと思います。







