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糖尿病について
東山武田病院 院長 葛谷 英嗣
最近我が国でも糖尿病が著しく増加していると言われていますよね。
厚生労働省では、1997年以来、全国的な糖尿病の実態調査を行っています。2006年に行われた最新の調査結果が最近発表されましたが、それによりますと、全国で「糖尿病が強く疑われる人」は約820万人、「糖尿病の可能性を否定できない人」は約1050万人、両者を合わせると1870万人になると推定されています。1997年に行われた初回調査と比較すると、「糖尿病が強く疑われる人」および「糖尿病の可能性を否定できない人」の合計は9年間で約500万人増加したことになります。「糖尿病が強く疑われる人」というのは、糖尿病の人とおきかえることができると思いますが、その割合は年齢とともに増加しています。70歳以上の高齢者になると、男性の実に21.2%、女性の15.3%が糖尿病であることがわかりました。また、我が国では、女性よりも男性の方に糖尿病患者が多いということも、この調査でわかりました。
なぜこんなに増えているのですか。
糖尿病にはいくつかのタイプがあります。代表的なものに、1型糖尿病、2型糖尿病と呼ばれるものがありますが、糖尿病の90%以上は2型糖尿病で、その発症には、生活習慣が密接に関連しています。近年、生活習慣が変わったこと、そして人口の高齢化、この二つが2型糖尿病の増加につながっていると言えます。もともと、日本人は糖尿病になりやすい遺伝子を持っていると言われています。糖尿病人口の増加は、我が国に限ったことではなくて、世界的な現象です。特にアジアでは著しく増加しています。
生活習慣が変わったことが大きいということなんでしょうけれども、具体的にどんな生活習慣が問題になるんでしょうか。
伝統的な生活習慣から、近代的で欧米風と言われる生活習慣に変わったところに糖尿病が増えています。我々の食習慣は随分変わりましたよね。主食である米を食べなくなりましたし、代わって動物性食品、加工食品が多くなって、脂肪の摂取割合が多くなってきています。また食事の仕方も変わりました。家族の団らんの場としての食事ではなくて、一人で忙しく食べることが多くなったのではないかと思います。また、夜遅く仕事から帰って、空腹感のあまり満腹するまで食べ、翌日の朝食は抜きといった、健康的でない食事の仕方が増加しています。一方、健康のために身体を動かすことの重要性を意識する人の割合が、特に若い世代で減少しています。車で通勤し、仕事も机に向かって事務仕事となると、ほとんど身体を使うことがありません。我が国で糖尿病が特に男性に多いというのは、働き盛りの年齢ではまだまだ健康より仕事中心の男性が多いということかもしれないですね。このような生活習慣を反映して、肥満が男性で増えてきています。30歳代の男性の34%は肥満と言われています。ご存知の通り、肥満というのは2型糖尿病の最大の危険因子なのです。
2型糖尿病というのは、あまり症状が出ないらしいですね。
糖尿病でも、代謝異常が強くて血糖値が高くなると、のどの渇きとか、尿量が多くなるといった症状が出てきます。代謝異常が特にひどいような時は意識がなくなって、昏睡に陥ることもあります。しかし2型糖尿病の多くは、早期の段階でほとんど症状がありません。症状があまりないため、発見が遅れたり、またせっかく見つかっても治療されずに放置されたりすることが多いのが2型糖尿病です。やはり厚生労働省の調査によりますと、糖尿病で現在治療を受けている人は、全国で約247万人と推定されています。先の調査結果では、糖尿病が強く疑われる人は、全国で約820万に人いるということですから、糖尿病患者で実際に治療を受けている人の割合がいかに少ないかがおわかりいただけるかと思います。言い換えれば、自分が糖尿病であることを知らない人とか、糖尿病があることを知っていても、治療せずに放置している人がいかに多いかを示しています。我が国の糖尿病対策を考えていく上で、一つのポイントになるのではないかと思います。
定期検診などで糖尿病の発見に大きな意味があるんですよね。
検診が糖尿病の発見のきっかけになることが多いです。しかし残念なことに、検診で血糖値が高めであることがわかって、精密検査を勧められても、そのまま放置されてしまうことも多いようです。自覚症状もないですから、もう少し様子を見ようかと放っておくと、早期発見というせっかくのチャンスをみすみす逃してしまうことになります。というのは、糖尿病は早期であればあるほど、治療も簡単で、そして得られる成果も大きいということなんです。
今糖尿病で治療を受けている人、またこれから治療を始めようとしている人に先生からアドバイスがあれば是非お願いします。
糖尿病では代謝障害が長期にわたって続くと、種々の合併症が起こってきます。視力障害、慢性腎不全による透析導入、足のしびれ、疼痛などです。また、血管の動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳卒中を起こしてきます。これらの合併症は糖尿病の患者さんの日常生活の質を著しく損なうことになります。糖尿病の治療目標というのは、これらの合併症の発症を防いで、健康の人と代わらない生活の質を維持すること、そしてもう一つは、健康な人と変わらない寿命を確保することです。そのためには、食事運動療法、さらには薬物療法により、血糖、血圧、血清脂質、体重をコントロールしていくことが必要です。糖尿病のみなさんは、糖尿病というのは自己管理する病気であるということをお聞きになったことがありますか。これは患者さんが、ご自身の糖尿病を自分で管理して行くことです。このことが非常に大切なのです。こうして初めて良好なコントロール状態を維持することができて、糖尿病の治療目標を達成することができるのです。そして、糖尿病の医療スタッフの役割は、患者さんの自己管理を手伝う(支援)こと、これが医療スタッフの役割です。まず糖尿病についてよく知りましょう、よく勉強しましょう、そして病院の糖尿病医療スタッフを十分に活用しましょう。これが糖尿病をうまく自己管理するカギとなると思います。







