※医師やスタッフの肩書き/氏名は放送時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。

認知症について
十条リハビリテーション病院 神経内科 部長 高橋 満
物忘れについて教えていただけますか。
最近、物忘れということと、認知症に関する関心が高まってきたせいか、当方の病院でも物忘れを訴えて来院される方が増えております。大抵、物忘れが始まってから2、3年経ってご家族が気づかれてからこられることが多いです。そういう場合は、月日やすぐ前のことを忘れるという軽症の認知症の方が多いと思います。また、一人で来られて、仕事をされている方でもそうですが、結構年配になられて、最近人の名前が思い出しにくいとか、何をしようとしていたか思い出せない方とかが多いです。
私もしょっちゅうあります。
そういう方はど忘れと言いまして、良性物忘れという場合が多いです。誰にでも忘れやすいところはあります。ですから、自分で物忘れの自覚がある方というのは認知症ではない場合が多いと思います。
早期認知症というとどういう感じになるんですか。
早期というのは、月日やすぐ前のことを忘れる見当識(けんとうしき)や記名力、記憶力の障害になります。外来に来られた時にまずお聞きすることは、普段の生活で朝起きてから夜寝るまでに、顔を洗ったり、食事をしたり、買い物に出かけたり、お掃除をしたり、主婦の方であれば洗濯をされたりなど、日常生活の過ごし方や、隣近所の付き合いで何か困っていることがないかどうかなどを聞きます。次に、認知症テストというのを実際にやってみます。月日や場所、時間などの見当識をお聞きしたりします。すぐ前のことを質問してもそれが思い出せないこともあります。テストは30問あり、20問以下の正解率なら認知症を疑います。
まずはチェックを行い、次はどうされるのでしょう。
実際には患者さんのすみずみまで診察しますが、基本的にはCTやMRIなどで脳の検査をします。側頭葉の内側にある、記憶の回路が通っている海馬という場所があるのですが、そこが萎縮していないかをまず見ます。海馬は記憶の回路が前とか後ろとか連絡する通路になっていまして、記憶の回路がたくさん通っている場所です。早いうちなら特徴的なのは左の脳と右の脳をつなぐ脳梁というのがあるのですが、その後ろの方の萎縮が認められたり、頭のてっぺんにあって、物事を総合的に理解したり、判断したりする場所の頭頂葉に萎縮が見られないかどうか、何%ぐらい萎縮が正常に対してあるかというのは見ます。それが大体の検査です。
認知症というとどういう種類があるのでしょうか。
まず、アルツハイマー病というのはみなさんよく聞かれると思います。脳血管性認知症というのもよくいわれると思います。アルツハイマー病と脳血管性認知症というのは半々ぐらいで、最近ではアルツハイマー病の方の診断率が高まっているせいか、増えています。アルツハイマー病の特徴は、最初、健忘や見当識の障害が見られますが、3~10年経ちますと、徘徊や外出しても戻ってこられなくなったり、幻覚妄想などの中期症状が見られたり、大体十数年の経過で動きにくくなったり、脳の変性を伴って徐々に進行するのが特徴です。初期には脳のコリンという神経伝達物質を分解させないようにする飲み薬が今出ていますので、それを朝だけ飲んでいただくだけでも進行を遅らせることができます。今は認知症に関心が高いですから、開発途上の薬がいろいろあります。基本的には脳に老人斑という変化と原繊維変化が起きます。その中心にあるアミロイドβ蛋白を作るのを抑制したり、分解を促進したりする薬なども開発されつつあります。
アルツハイマーとあとの半数ぐらいとおっしゃっていた脳血管性認知症とはなんですか。
脳血管障害の場合は、脳梗塞や脳出血の後で物覚えが悪くなったりしますので、これは進行しません。脳梗塞の再発のないように、あるいは脳梗塞を起こさないように予防するのがます大事です。急には悪くはならないので、階段状に再発の時にまたレベルが落ちてしまったりするということなので、アルツハイマーのように徐々に進むということはありません。もう一つ、パーキンソン病と同じような症状が一緒に出てくる物忘れですけど、びまん性レビー小体型認知症というのも最近約3割ぐらいありますので、これはアリセプトという今の薬が効果があるという報告があります。そういう診断が必要だと思います。
認知症の方に対して周りの人はどういう風に対応したらいいんでしょうか。
ご家族のみなさんそれぞれ工夫されています。基本的にはご家族を中心としたいろいろなふれあいが必要なんですけれど、お忙しい方もおられますし、古い記憶ばかりが残っていて、現状をうまく処理できなくなることが多いわけですから、古い記憶をできるだけ今の記憶につなげることと、古い記憶が残っていて、日常生活に現れたり消えたり、いろいろありますので、これをさりげなく現実の方へねじを巻き直して行くという風なことを繰り返していくことが大事です。決して否定的にならず、受容的に接することです。そうしていても昔の世界に逆戻りしていくことが多いのですが、許容範囲というものがありまして、そこでは制度とかグループホームとか介護保険の範囲で集団的な治療とか、いろいろと切り替えて併用していくことがいいと思います。ですから、老人も地域社会の中に暮らして、豊富な経験とか熟練した知恵が地域社会に還元されていくというのが一番昔からの社会でしたが、最近の核家族化などによって社会が変わりましたので、認知症のご老人の扱いが難しくなっています。しかし、基本的にはご家族がつかず離れず、ご老人の住む社会と向き合って付き合いながら住んで行くことが日常の基本と考えています。もちろん薬物療法もいっしょうけんめい開発していると思います。







