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慢性腎臓病について
東山武田病院 腎臓内科 医長 吉岡 徹朗
最近、テレビや新聞等で取り上げられる慢性腎臓病ですが、これはどういう病気なのでしょうか。
糖尿病とか高血圧、慢性腎炎など様々な原因によって慢性に経過する腎臓病の総称で、2002年にアメリカで提唱され、現在では世界的な用語になっています。
慢性腎臓病はどうして注目されているのでしょうか。
腎臓の働きが60%以下に低下しますと、心筋梗塞や脳梗塞などの心臓血管病で死亡する危険性が非常に高くなります。糖尿病や高血圧や肥満、高脂血症なども心臓血管病の原因になりますが、これらによって腎臓が傷害されて慢性腎臓病になると危険性が飛躍的に高まります。最近の調査で慢性腎臓病の患者さんが日本にはおよそ2000万人おられ、このうち心血管病の危険性が高くなる、腎臓の機能が50%未満の患者さんは420万人で、成人人口の4.1%もおられ、予測していたよりもずっと多いということがわかりました。
また、日本の透析患者さんは昨年末の時点で、全国でおよそ26万5000人おられ、毎年増加し続けています。透析には患者さん1人あたり、年間400~500万円かかりますので、現在、透析医療に国民全体の医療費の33兆円のうち、1兆円以上もかかっています。加えて、腎臓病に対する治療が最近進歩してきているため、慢性腎臓病について啓発することによって、早期診断・早期治療を受けられる患者さんが増えれば、心血管病や透析の患者さんの増加を抑制することができる、という背景から慢性腎臓病の対策が今非常に重要視されています。
どうして透析患者さんが増えて来ているのでしょうか。
今、糖尿病患者さんが増加しています。糖尿病性腎症は糖尿病の合併症のひとつですが、これによる末期腎不全が増加しているためだと思われます。現在、透析導入の原因になる病気では糖尿病性腎症が最も多く、昨年1年間の透析導入の43%を占めています。糖尿病の患者さんは日本で880万人、糖尿病の予備軍といわれる方が740万人おられます。糖尿病は放置すると約40%が糖尿病性腎症になるリスクがありますが、糖尿病患者さんのうち半分くらいはあまり定期的な受診をされずに、管理が不十分な状態と言われています。
慢性腎臓病に自覚症状はあるのでしょうか。
早期では検尿で異常がでるだけで症状はまったくありません。個人差はありますが、通常は腎臓の機能が正常の10%以下にならないとほとんど症状は現れません。しかし、10%以下ではすでに末期腎不全の状態です。こうなるとほとんどの場合は透析か移植以外に治療法がありません。日本は学校や職場や市民検診などで定期的に検尿を受けるシステムが確立されているので、慢性腎臓病の早期診断が可能です。再検査を指示されたら、かかりつけ医か専門医のいる病院で必ず検査を受けることが必要です。また、高血圧や糖尿病の患者さんは普段からしっかり自己管理をして、定期的な通院を欠かさないようにすることが非常に大切です。
慢性腎臓病と診断されたら、食べてはいけないものがあるのでしょうか。飲酒や喫煙はどうでしょうか。
まず食事療法では塩分を避けるようにしてください。腎臓の働きが60%未満なら、塩分は1日6gに制限しないといけません。一般的な日本人の塩分の摂取量は1日11~13gで、これは世界的にみても非常に多い方です。次に、タンパク制限が必要です。タンパク質は標準体重あたり、1日0.6~0.8gに減らさなくてはいけません。この他、生野菜、果物、海藻、豆や芋はカリウムが非常に多いので制限が必要です。カルシウムを取ろうとして牛乳や小魚をたくさん摂取されると、タンパク質やリンの摂取量も増え、かえって逆効果になってしまいますので注意が必要です。水分はむくみや心臓の障害がなければ普通に摂取して構いません。お酒も適正範囲であれば特に問題ありませんが、タバコは厳禁です。食事療法をいろいろ説明させていただきましたが、難しいですし、目に見える結果がすぐに出るわけではありませんが、根気よく続けることが大切です。東山武田病院の生活習慣病センターでは、腎臓病や生活習慣病、メタボリックシンドロームの患者さんに対する、栄養士による栄養や食事指導、運動指導、教育入院も積極的に行っておりますので、ぜひご相談ください。
慢性腎臓病の治療にはほかにもあるのでしょうか。
慢性腎臓病の治療は、原因になっている病気の治療と、進行させないための治療、それに伴う合併症の治療になります。具体的には肥満のある方は肥満の解消、禁煙、ストレスを避けるなどの生活習慣の改善を、高血圧や高脂血症、糖尿病のある方はその治療をきちんと行い、コントロールしていきます。例えば高血圧の治療では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬や、アンジオテンシンll受容体拮抗薬という薬が、タンパク尿を減らし腎臓を保護するという作用があって、慢性腎臓病の血圧管理に非常に重要です。
腎臓が専門ではないかかりつけ医の先生の治療をうけている方がいらっしゃった場合、どういうタイミングで専門医を紹介してもらえばいいのでしょうか。
日本腎臓学会では慢性腎臓病のキャンペーンをしており、これを通じてかかりつけ医の先生方に、タンパク尿が多い場合や、糸球体濾過量という腎臓の働きを示す指標が60未満まで低下した場合、あるいはタンパク尿以外に血尿も合併するという場合は、ぜひ私たち腎臓専門医に紹介していただいて、連携して治療にあたらせていただきたいとお願いしています。紹介状なしで患者さんが直接専門医を受診していただいてもよいのですが、その場合は患者さんが現在内服されているお薬や、健康診断などの検査結果、あるいは自宅で測っている血圧の記録などを持参していただくようにお願いしています。
慢性腎臓病がどれくらいまで進行したら、人工透析が必要になってくるのですか。
透析の導入時期というのは、臨床症状や血液検査のクレアチニン濃度という項目や、日常生活がどの程度障害されているかを参考にして総合的に判断します。ただ、生命の危険を考えると、あまりぎりぎりまで透析導入を遅らせるよりも早めに導入した方がよいと考えられています。だいたいの目安ですが、血清クレアチニン濃度が8を超えたら透析が必要と考えてよいと思います。
人工透析について教えていただけますか。
透析療法には血液透析と腹膜透析があり、現在、日本の透析患者さんの96%以上が血液透析を受けられていて、残り約4%が腹膜透析です。血液透析は血液を体外に取り出して人工の膜を通して、血液中の老廃物や余分な水分を取り除いて体内に戻します。患者さんは週に3回透析施設に通院して、1回あたり4~5時間かけて透析を受けます。水分や塩分、カリウムの制限を厳しくする必要があります。腹膜透析は、腹腔内に専用の透析液を注入して一定時間貯留している間に、腹膜を介して血液中の老廃物や水分を透析液に吸収させ、その液を体外に出して血液を浄化します。これは24時間連続してゆっくり透析を行うので、体の負担が軽い治療法といえます。透析液の出し入れをするために、カテーテルというやわらかいチューブを簡単な手術で腹部に埋め込みます。通院は月1、2回で、透析液の交換は1回20分程度で終わるのですが、これを自宅や勤務先で患者さんご本人が行います。透析液の交換は1日3~4回、あるいは機械を使って寝ている間に自動的に行うなど色々なパターンがあり、交換する時間も生活やお仕事に合わせてアレンジできます。こちらの方は血液透析と比べると食事制限が緩く、比較的色々なものが食べられます。東山武田病院では透析センターの新規開設を2007年10月末に予定していますが、これによって末期腎不全患者さんの治療も自前で行えるようになります。互いに密接に関連している慢性腎臓病や糖尿病、心血管病、メタボリックシンドロームなどの病気を、生活習慣病とそれに関連する合併症という大きな枠組みで考え、初期段階から末期腎不全という最終段階までの各ステージの患者さんに対応した、総合的かつ専門的な診療を目指しています。







