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脳卒中の予防と高血圧症
十条リハビリテーション病院 神経内科 部長 高橋 満
脳血管障害の予防では、血圧をコントロールすることが大切と言われていますが、正常血圧の数値は昔とは変わっているのでしょうか。
そうですね、昔は高いところに高血圧の基準を置いていましたが、最近では低いところに基準が定められています。日本高血圧学会では、上が135以下、下が 85以下を正常血圧としており、それ以上を高血圧症と言っています。血圧は年齢とともに上がり、60歳代では上が140、70歳代では150、80歳代では160というのが普通です。60歳以上の方ではまず上が140、下が90以下を目標にします。実際に血圧をコントロールすることによって、心臓血管の病気の予防、生命の予後、脳や腎臓などの臓器を保護することができるという、大規模な臨床試験の結果が続々と報告されています。
高血圧を予防することで脳血管障害をどれくらい防げるのですか。
最近の統計では高血圧と糖尿病を予防すると、脳血管障害のリスクが4分の1に減少すると言われています。高血圧と糖尿病を両方持った方は、両方がない方に比べて4倍リスクが高いという統計が出ているためです。糖尿病は太い血管よりも細い毛細血管の動脈の閉塞を起こしやすく、高齢とともに動脈が硬くなっていく高血圧を起こしやすいです。高血圧症だけをみると、高血圧症のない方に比べて約2.5倍も脳血管障害にかかりやすいという統計もあります。
高血圧症はどういったメカニズムになっているのでしょうか。
年齢とともに動脈が硬くなってくるので、上の血圧が上がってくることも原因のひとつですが、二番目の理由として、腎臓に入る動脈と出ていく動脈の血流の状態によってホルモンでコントロールされています。そのホルモンが昇圧物質という血圧を上げるもので、レニンやアンギオテンシン、アルドステロンといったものが関係しており、この調節がうまくいかなくなってくると高血圧になります。このため、腎臓が悪い方は血圧が上がることが多いです。三番目の理由としては内分泌性高血圧症という、副腎の病気などの内分泌の病気で血圧が上がるものがあり、これは突然血圧が上がったりしますので、高血圧の専門医に調べてもらう必要があると思います。しかし内分泌性高血圧症は高血圧全体の2~3%ですので、あまり心配はいりません。
高血圧症の治療方法は。
塩辛いものを取りすぎないように塩分制限をし、標準体重を目標にコントロールしていくことが最初に行うことです。これでほとんどの方は血圧が下がりますが、これに加えて内服薬を処方しています。このときにはご自分の血圧を自宅血圧計で、早朝と夕方の一日2回、安静時に測定していただき、これを元にお薬を処方しています。早朝血圧は高く、夕方は低い傾向にあります。これは自律神経による血圧の日内変動といい、これを目標にカルシウム拮抗剤という血管拡張剤や、腎臓に作用するアンギオテンシン変換酵素阻害剤というようなよいお薬がありますので、これを朝一回、または朝夕の2回服用すべきかどうかを医師が判断していきます。時には降圧利尿剤という体液を調節し血圧を下げる方法や、βブロッカーという心臓を休ませる薬でコントロールしていくと血圧が下がることが多いです。
すでに脳血管障害を起こされた方はどうなりますか。
脳血管障害の方は長い間、高血圧症にかかられていた方が多いです。比較的高い血圧のほうが脳の血流を一定に保つことに慣らされています。通常、脳の血流量は脳1gあたり50 cc/分なのですが、高血圧症の方は、比較的高い血圧のほうが脳循環を一定に保ち易くなっているのが特徴です。脳梗塞になった場合、初期は高い血圧を徐々に下げていきます。脳出血の方は正常血圧を目標としてすぐに下げますが、脳梗塞の方は徐々に下げるといった違いがあります。これは発症してから1~2週間の経過で、その後は積極的に血圧を下げるようにします。
また、2001年にプログレスという大規模臨床試験が大々的に行われ、6105名という膨大な脳血管障害の方の慢性期の血圧を、アンギオテンシン変換酵素阻害剤と降圧利尿剤を併用し、プラセーボという偽薬と比べてどちらがどれだけ効果があったかという調査がされました。慢性の脳血管障害を有する方が、脳梗塞や脳出血の再発する率は28%も優位に脳卒中の再発を予防できたという結果が報告され、慢性期の方も血圧を積極的に下げることが必要だと思います。
予防についてはいかがでしょうか。
先ほどの高血圧症はもちろん、糖尿病や高脂血症、お酒の飲み過ぎ、たばこの吸い過ぎが脳血管障害の危険因子となっていますので、食生活の中で生活習慣病に注意されて、健康的な日常生活を送っていただくことが大切だと思います。







