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糖尿病の民間療法
十条リハビリテーション病院 糖尿病センター部長 西野 和義
糖尿病の民間療法というのはどういうものですか。
医学的なデータの裏付けは特にないのですが、ある病気に対して効果がある、昔から民間に伝わっている療法のことを「民間療法」といいます。われわれ医療側から提供するものとは一線を画しているもので、糖尿病の分野では特に多いようです。
どういったものがあるのですか。
お聞きになったことがあると思いますが、例えばグァバ茶などの健康茶、タマネギやカイアポ、黒酢などの食品、ウコンやゴーヤなどの錠剤になったサプリメント。整体や鍼灸治療、電磁波などの物理療法的なものもあるようです。
どれも皆さん一度は耳にしたことがあったかと思いますが、やはり民間療法を行っている人は多いのでしょうか。
民間療法についてはいろいろな調査データがありますが、あるアンケートでは糖尿病患者さまのうち民間療法の経験者は4人に1人、そのうち現在も行っている人と以前行っていたがやめたという人が半々に分かれていました。
民間療法の効果はどうなんでしょうか。
私どももよくわからないのですが、これまで民間療法だけでよくなったという方にお目にかかったことはありません。患者さまは医療機関で治療を受けていらっしゃる方ばかりだと思いますので、糖尿病が改善した方はご自身の生活を変える努力と、医師が処方するお薬の効果だと思います。ただ、私の知らないところで民間療法を試しているということもあるかもしれませんが、その場合でもわれわれ医師が提供する医療を実践された上で民間療法を試されているわけですから、民間療法だけの効果というのはなかなか出ません。
医療機関にかかっているのにも関わらず、さらに民間療法を行うのはなぜなんでしょうか。
恐らく患者さま特有の心理が働いているのではないかと思います。糖尿病というのは治らないと言われますが、うまく管理をしていけば合併症を起こすことなく、健康な状態で天寿を全うできるという病気です。現在の糖尿病治療はそれを目的に行われていますので、このことがどうしても納得できないという方もおられ、「糖尿病は不治の病」という否定的な面にばかり目がいってしまい、藁をもすがるような思いで民間療法を行われているのではないかと思います。こういった方にとって民間療法のうたい文句は魔法の響きを持っているわけです。例えば「糖尿病が治った」「血糖値が下がりインスリン注射を打たなくてよくなった」といった言葉が並んでいますよね。
そういったフレーズは見かけることがありますね。実際私が患者だったら飛びついてしまいそうです。
そうですね、私も飛びついてしまうかもしれません。ここで冷静に考える必要があるのは、本当にそんな素晴らしい商品があるなら、より多くの患者さまを救うためにいろんな製薬メーカーが薬にしようとしているはずです。ですが残念ながら民間療法の中から採用されたものはほとんどありません。効能を保証するような医学的なデータがないと不十分だということになります。
私の知人にもいろんな民間療法を試している人がいますが、改善しているようには見えませんし、食生活は特に変わっていないように思えます。
それが民間療法の最大の問題点だと思います。それを信用することで安心してしまうため、医療機関での治療が疎かになってしまうのです。生活習慣病の治療には生活習慣の是正が第一で、これを無視していいはずはありません。「この食材がいい」といってそればかりを食べていると、当然栄養バランスやカロリーの取り過ぎ、反対にカロリー不足になってしまうこともあり、食事療法が乱れてしまいます。治療の土台を崩してしまっては病気のコントロールはできません。
「王道無くして治療なし」ということですね。糖尿病が治らないなら、問題のない民間療法があれば試してみたいと思うのは普通だと思うのですが。
確かに、医師から「糖尿病は治りません」と言われますと暗い気持ちになり、なんとか抜け出したいと思うのは当然かもしれません。この場合、まず糖尿病はなおらないけれど管理していって合併症を予防することは可能であり、それが治療の目的であることをよく思いなおしていただきたいと思います。それでも、糖尿病であることがどうしても不安で仕方がないという方は民間療法を試してみてもよいと私は思います。不安がやわらいで糖尿病にしっかりと向き合うきっかけになれば有意義だと思います。ただし、有害な民間療法は絶対にしてはいけません。
どんな民間療法が危険なのでしょうか。
さきほど紹介した糖尿病ネットワークの調査では、医療スタッフが患者さんから相談を受けた中で特に危険性や問題ありと考えられたものとしては、断食療法、血糖降下薬の入った漢方薬、はちみつやローヤルゼリー、サウナスーツを着ての運動、利尿や下痢をきたす民間療法、電気治療、1リットル千円の水などがありました。さらに、民間療法でもっとも危険なことは、民間療法にはまってしまい、医療機関でうけている治療をやめてしまうことです。以前に、インスリン療法をしていた患者さんが民間療法にはまり、インスリン注射をやめてしまった結果、ケトン性昏睡に陥って死亡するという痛ましい事故がありました。民間療法を始めたいと思われたら、まず今かかっている担当の先生に相談をしてください。そして、許可されたとしても、現在の治療内容は絶対にやめてはいけません。これをよく肝に銘じていただきたいと思います。







