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バセドー病についてのご質問にお答えします
東山武田病院 院長 森 徹
「バセドー病で治療を受けていますが、妊娠・出産には問題ないのでしょうか」というご質問をいただきました。
きちんと治療を受けていれば、妊娠・出産に特に問題はありません。バセドー病の治療には抗甲状腺薬というお薬が多く使われますが、このお薬は比較的副作用が強いもので、たくさんお薬を飲んでいるときの妊娠は避けた方が好ましいです。このお薬にはメルカゾールとPTUの二種類があります。PTUの方が少し副作用が強く、効果が少し弱いので、私はメルカゾールの方がよいと考えます。一日に二錠くらいでよくなれば、妊娠に支障はありません。妊娠中、お薬を飲むのを嫌がる方もいますが、甲状腺機能を正常に保つことが胎児の発育に重要ですので、きちんとお薬を飲むことが重要です。
次に、お産をしてから授乳できるかという問題ですが、メルカゾールは母乳へ移る率が高いので、お産の時にPTUに切り替えて母乳を与えていただくのがよいと思います。
甲状腺が悪いときは、ホルモンの材料となる昆布やワカメといった海草類をたくさん取るとよいと聞きますが。
甲状腺は体に入ってくるヨードを集めて、ホルモンを作って出す働きをしています。例えば橋本病などでは、たくさんヨードが入ってくると処理しきれなくなり、却って機能が低下してしまうことがあります。この場合はヨードを制限するだけで良くなります。
ヨードは昆布やワカメなどの海草類によく含まれ、関西ではだし汁に昆布が多く使われます。また、お薬にもヨードを多く含んでいるものがありますので、こういった点もご注意いただきたいと思います。医師からヨードを制限しなさいと言われた場合は、摂取量を人並み以下にしてください。
「橋本病」という名称が出てきましたが、どういった病気ですか。
例えば、はしかは一度かかれば一生かかりません。これははしかのウイルスに対する免疫ができるためで、外からのものに対して免疫ができることに問題はありませんが、時に自分の体の成分に対する免疫が起こって都合が悪くなる、自己免疫病というのがあります。リウマチや膠原病なども自己免疫病ですが、中でも橋本病はもっとも頻度が高いものです。橋本病では甲状腺の成分に対する免疫が起こっており、甲状腺に対する抗体を検査すると診断ができ、かなり多くの人に異常が出ます。歳とともに増える病気で、60歳以上では10人に一人くらいに抗体が検出されますが、多くは機能も正常で治療の必要はありません。甲状腺の機能が低下すれば治療の必要性がありますが、しばしば一過性の機能低下というのが起こり、数カ月で治ることがあります。出産の後や肝炎でインターフェロン治療などを受けた後に、特に多く見られます。低下症が一時的なものか、半永久的なものか見極めて治療をしないと無駄な治療が続くことになります。
一般に売られているかぜ薬などに「甲状腺の悪い方は医師の指示を受けてください」という注意書きがありますが、どうすればよいでしょうか。
多くのお薬にはそのような指示が入っています。これは、甲状腺のホルモンに体内の新陳代謝を良くする作用があるので、甲状腺の機能が高いときにはお薬の効きが早く効果が持続しません。バセドー病などではお薬の飲む回数を普通より多くする必要がありますので、主治医にご相談いただきたいと思います。
反対に甲状腺機能が低下している時は、お薬の吸収が悪く、薬の効果が長く続くことがあります。ですので、効かないからといってお薬の回数や量を増やすのはかなり危険です。甲状腺機能が高い時、低い時は医師にご相談いただきたいと思います。甲状腺のその他の病気には甲状腺機能に影響はありませんので、ご心配いただかなくてよいと思います。
バセドー病は治らない病気ですか。
バセドー病は、先ほどの橋本病と同じような自己免疫病です。TSH受容体というところに抗体ができ、これが甲状腺をずっと刺激するために起こる体質的なものです。この抗体はうまく経過すると2年ほどで消えてしまいますので、お薬が不要になることが十分期待できます。
バセドー病の治療には抗甲状腺剤というお薬を使います。しかし、このお薬は機能亢進(ホルモンが多すぎる状態)をよくすることには効果がありますが、自己免疫を抑える効果があるというわけではないので、お薬で楽になったからといってお薬を止めてしまうと悪化してしまいます。ですから、医師の指示に従って正確にお薬を飲み、早く治っていただきたいですね。
その他の治療としては、手術やアイソトープ治療などがあり、それぞれ一長一短がありますので、よく医師とご相談になり、最適な治療法をお選びになるのが良いでしょう。







